2023年10月23日号

中国関係では、野村香港の幹部が滞在中の中国本土からの出国を禁止された。事件は、中国当局が国家安全保障上のリスクや機密情報の国外流出に神経を尖らせ、在中外資系企業に対する監視の強化に動く中で起きた。メディアは、海外企業にとって中国での事業環境がいかに予測不可能になっているかを示していると警鐘を鳴らし、中国政府は重要な投資やノウハウをもたらしてきた外国企業を追い出すことに慎重であるべきだと主張する。その一方で、米欧政府に対して急激な自国政府の政策変化が企業に深刻なストレスを与えており、企業による長期計画立案のために対中政策の方向性をより明確にすべきだと提言する。今回の出国禁止は、背後に2023年7月に改正された反スパイ法によるスパイ行為の取締り強化やバブルを引き起こした不動産取引関連の腐敗行為の摘発といった政治的動機があり、その根は深いと言えよう。

台湾との2重課税回避のための法案成立に米議会が超党派で動いた。狙いは、台湾からの対米投資拡大と中国と対峙する台湾への支援にあるが、当面は半導体製造の世界的リーダーである台湾からの半導体産業の誘致にある。台湾積体電路製造が米国での製造施設建設を計画していることが背景にある。米議会が条約締結を経ずに税法を直接変更する法案に取り組んだこと、および中国はこの動きに早速反発したが、在米大使館による抗議に止めて両国間で進む対話の雰囲気を壊わさないように自制しているとみられることが注目される。

韓国は米国との合意で核兵器を開発しないと宣言したが、それは国内での核兵器議論に一時的な歯止めをかけただけかもしれないとメディアが伝える。実際、国内ナンバー2の権力者とされているソウル市の呉世勲市長や与党「国民の力」の金起炫党首ら多くの有力政治家が独自の核兵器開発に賛成していると報じる。その背景として、ロシア・中国・北朝鮮の核兵器が韓国の自衛能力への懸念を高めている状況下で、国民の大多数が核開発計画を支持していることを挙げる。また核兵器を開発する技術力はあるが、実際に核を保有した場合、米国は防衛装備品の売却や軍事支援を打ち切る可能性があるほか、厳しい経済制裁につながり、核戦争のリスクを高めると警告を発する。韓国の核武装は日本に対しても重大な影響をもたらす。注視していく必要がある。

北朝鮮が対ロ関係の強化に動いている。メディアは、ロシアのウクライナ侵攻が転機となったと述べ、ロシアが北朝鮮による軍事支援を必要としているのは、その地位低下と孤立化を示していると指摘する。金総書記には孤立緩和の機会となり、米国と西側同盟国、ウクライナ、そしてアジアの安定にとって不吉な展開だと警告する。この結果、韓国がウクライナに直接武器を提供するよう説得されるとアジアとヨーロッパの軍事的発火点の間につながりが生まれ、朝鮮半島の安定を危険にさらし、アジアでのブロック対立の勢いを定着させる可能性があると懸念を表明する。メディアはまた中国が今のところ兵器の対ロ売却に消極的とみられると指摘するが、これは台湾侵攻に備えた兵器温存の可能性があり、その場合、北朝鮮の背後に中国が存在することも考えられる。

東南アジア関係では、ベトナムと米国が急接近している。バイデン大統領がインドで開かれたG20サミットに出席した後、ベトナムを訪問し、グエン・フー・チョン共産党書記長と会談した。メディアは背景に中国の高まる野心があるとコメントする。ベトナムは「4つのノー」政策に基づき、反中陣営には加わらないとみられるが、人権活動家たちは、米国政府が公言している海外での民主主義と人権の促進は、この地域での米国の優位性を強化するために脇に追いやられたと批判する。これに対し米政府筋は、政府の種類や価値観が違ってもベトナムとの緊密な協力は米国にとって重要な意味を持つと反論する。ベトナムは中国と長い対立と反目の歴史を有し、現在も領有権を主張する南シナ海で鋭く対立している。米・ベトナム両国は現在、相互に補完する関係にあり、経済安保両面で関係強化を進めると予想される。

インドで政府によるインフラ投資が急増している。今期(24年3月期)の資本支出予算として前年度を37%上回り、19年の支出の2倍以上となる10兆ルピー(約17兆7,500億円)強を計上した。この間、国外からの投資も過去10年で2倍余りに増え、2022年には約500億ドル(約7兆3,500億円)に達した。政府が公表した2019~25年のインフラ計画によれば、インフラ投資の総額は2兆ドル弱に達する。対象業種は道路や鉄道、都市開発、住宅、エネルギー、かんがいなどである。ただしエコノミストは、高所得経済へと発展するのに必要なインフラ整備の達成には未だ長い道のりが待っていると指摘する。