2022年3月号

中国関係では、メディアがウライナに侵攻したロシアとの緊密な関係は中国にとって正よりも負の部分が大きい不安定な関係だと指摘する。経済的にはドルが支配する世界貿易システムへのアクセスを失うリスクや欧米の技術その他のリソースから切り離される危険を冒し、外交面では欧州から侵略の共犯者とみられて怒りを買い、英豪日などでは中国を警戒する動きが加速し、中・東欧と関係を強化する取り組みも支障をきたしていると論じる。ウクライナ侵攻前夜にロシアとの提携を強化した習近平は、外交政策上の大失策を犯したと主張する。習が2月1日の共同声明の署名前にロシアの侵攻計画を知らなかったとすれば、中国情報部の大失策で指揮官としての習は著しく評価を下げ、計画を知っていたならば、中国は欧州での血生臭い紛争に加担したと指弾されることになると述べる。しかも中国は最終的にロシア経済を救済できないと予言する。

台湾関係では、ロシアのウクライナ侵攻は台湾の武力統一をもくろむ中国にいくつかの教訓を与えているとメディアは伝え、教訓としてまず、侵攻の第1段階で圧倒的戦力を投入することの重要性を挙げる。台湾に侵攻した中国はロシアと同様、米と同盟国の国際協調による迅速な経済制裁、対戦車や対空兵器の台湾への供与などの事態に遭遇すると述べる。ただし、中国は武力侵攻をあきらめないだろうとの専門家の見解を紹介し、中国はロシアと比べてはるかに大規模で装備の整った軍隊を保持していると指摘する。ただし、中国も母国の一部だと主張する土地を破壊することなく、いかにして権力を掌握するかというロシア同様のジレンマに直面するだろうと述べ、最初の3~4日で降伏を強いることができなければ、過酷な長期戦になる公算が大きいと警告する。

韓国では、先の大統領選で韓国株式市場のMSCI先進国指数編入の実現が争点の一つとなっていた。韓国が未だに先進国指数に組み込まれていない主因として、オフショア・ウォン現物市場の不在と空売り規制の2つが挙げられているが、メディアは先進国入りによって弱体な企業統治や現状維持の保護主義的市場などの韓国企業や市場が抱える問題点が露呈しかねないリスクを孕んでいると警告する。

北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻の背景に米国と同盟諸国の「覇権主義的な政策」と「高圧的な態度」があると非難し、ロシアを擁護する。また韓国もアフガニスタンでの米国の失策とソ連崩壊後に安全保障と引き換えに自国内のソ連核兵器を手放したウクライナの今の惨状をみて、韓国民は核兵器保持の必要性を痛感し始め、他方、北朝鮮は益々核兵器確保の意志を強くしているとメディアは伝える。ロシアによるウクライナ侵攻は、外交安保面で朝鮮半島にも重大な影響を与えつつある。

東南アジア関係では、ウクライナに侵攻したロシアへの制裁で東南アジアの意見が分れていると指摘する。ロシア支持陣営としてミャンマーの軍事政権を挙げ、ロシア批判派としてミャンマーや香港市民、金融センターとしての評価が問われているシンガポールなどを挙げる。分断状況は、国連総会のロシア非難決議の結果によく表れており、東南アジア諸国はロシア、中国、西側の板挟みになっていると指摘。ウクライナ紛争の行く末が領土紛争を抱える中国の今後の動きにどう影響するかを懸念していると報じ、中国とのバランスをとるためにロシアの存在が必要かもしれないとの見方も紹介する。

インド政府のウクライナ危機への対応はどっちつかずで、あいまいだとメディアは報じる。その理由について第1に旧ソ連時代から続くロシアとの戦略的関係を挙げ、一例として現有兵器の7割がロシア製だと指摘する。第2に米国がアフガニスタンをパキスタンが支援するタリバンに簡単に明け渡したことへの憤慨や、インドが中国に対抗するクワッドの一員であることを挙げる。インド政府は早晩、中ロと西側の間で立場を明確することに迫られ、その場合、世界の民主主義大国としての誇りを持ち、中国と対立するインドが中ロに組するのはあり得ないとみられる。