中国指導部は先の全人代で低水準の成長率目標を打ち出した。これは巨大な債務に対する中国政府の恐怖感のためだとメディアは指摘する。既に中国の負債総額はパンデミック前のGDPの250%から270%に上昇しており、高い成長目標を掲げれば、中央政府も地方政府が再び支出を増やし、債務を積み上げるのを警戒しているためだと説明する。同時に問題を解決するには、増大する債務不履行への対処が必要だと指摘。コロナウイルスのために低成長に悩む世界経済には、世界第2位の中国経済が債務インフルエンザにかかる状況に耐える余裕はないとして、債務不履行問題への対応を早急に求めている。
台湾関係では、メディアが中国にとって台湾奪取は神聖な国家使命以上の意味を持つと述べ、その中国の行動を抑えてきたのは米国の軍事力だったが、今やそれが崩れつつあり、しかも同盟国を結集するのも難しい状況にあると報じる。さらに指導部は「平和的再統一」に対してしびれを切らしており、台湾回復のコストが耐えられるものになれば、中国は行動を起こすだろうと予言する。中国が香港を共産党体制に組み込んだ今、次の標的として台湾が急浮上していると考えられ、メディアの不気味な予言が現実味を帯びている。
韓国の文大統領は任期の終盤に入って多国間主義の回復を呼びかけ、カーボンニュートラルやTPP加盟問題などで大胆な公約を発表している。だが、それに見合う政策や対策を打ち出しておらず、世界の舞台でリーダーシップを発揮する機会を捉えようとしていないと批判されている。レームダック化した大統領が気軽かつ無責任に大胆な発言を繰り返しているとも思われ、後継者のために然るべき道筋を示しておくべきだろう。この他に韓国企業が大挙進出しているミャンマーで軍事クーデターが発生し、軍事政権の国で大きなプレゼンスを維持することへの倫理上の問題も提起されている。
北朝鮮のハッカーによる仮想通貨窃取の実態について、メディアが14年のソニー・ピクチャー侵入事件や16年のバングラデシュ中央銀行からの現金窃取などの悪名高い事件にまで遡って伝える。ハッカーの犯罪行為は、マリンチェーンと呼ばれる新規コイン公開(ICO)による詐欺行為や多数の悪質なアプリケーションの開発などの巧妙で独特のスキームによるもので、米政府は窃取された資金の回収に努力する一方で圧力をかけるために刑事告発に動いている。
東南アジア関係では、メディアがミャンマーの軍事クーデターの背景として、軍の実力者ミン・アウン・フライン将軍が昨年7月に65才の定年を迎えていたことを挙げる。同将軍はクーデターによって現職に止まり、強大な権力と経済的利権を失わずにすんだのである。しかし国民、特に香港やタイの不服従運動に触発された若者たちの抵抗は予想を超えたと述べ、こうした運動はロヒンギャ迫害などでも展開されて然るべきだったと批判する一方で、命がけで抵抗する勇敢な市民を心から支援すべきだと訴える。
インド経済はパンデミックによって甚大な被害を受け、深刻な不況に陥ったがその不況から抜け出そうとしている。ただし回復は大企業に偏り、公式に記録されない非公式経済や非組織経済を構成する中小企業は回復から取り残されている。また成長率も6%を記録していた過去と比較して低水準にとどまっている。メディアは今後の見通しについて、ワクチン接種の遅れや変異ウイルスの脅威などから慎重にみる必要があると指摘する。