2021年2月号

中国関係では、メディアはバイデン新政権の対中政策に関連して厳しい対中姿勢と西側同盟国との結束の必要性を訴える。バイデン新大統領は民主主義国サミットを掲げるが、中国の習近平国家主席も似たような考え方を持ち、世界のリーダーシップを握るため伝統的な米同盟諸国を中国経済圏に取り込もうとするなど米国より一歩先んじて動いていると懸念を表わす。また中国市場への魅力、米の国際連携への思い入れに対する不安感などのために、同盟諸国が対中共同戦線への参加を渋る可能性も指摘する。さらにバイデン政権の具体的課題として関税戦争終結の方策、習氏の長期戦略への対処を挙げる。いずれも長期戦を覚悟しなければならない課題となろう。

米国は台湾と断交後も経済、文化的な関係を維持し、かつ国内法によって台湾救援の権利を留保してきたが、メディアは、これらは非公式なもので中国を刺激しないようにいわばイチジクの葉で隠されてきたと述べる。しかし、トランプ政権時のポンペオ国務長官は、退陣間際に米台当局者間の接触に関するすべての制約を「無効」と宣言し、このイチジクの葉を引き裂いたと指摘。しかもこの宣言はバイデン新政権と台湾に対する罠ともなっているとの見方を紹介する。

韓国政府は、軍改革を静かに着実に進めている。背景として少子高齢化による徴兵制の行き詰まり、リベラル化する社会への対応という国内要因と韓国を取り巻く国際環境の変化という地政学的要因が挙げられている。さらに韓国軍が有事指揮権を米側から取り戻すために軍の能力向上が必要という要因も指摘されている。改革の内容は兵員や部隊数の削減、徴兵期間の短縮、軍事衛星の打ち上げなどで、伸び率がかなり急ピッチの国防費の増強が注目される。文大統領は北朝鮮問題の平和的解決や米国との強固な同盟関係を強調するが軍事力の維持強化にもまい進している実態が明らかになった。

北朝鮮の金正恩総書記は、米新大統領を挑発するのを好むのでバイデン政権はこれに備える必要があるとメディアが警告する。加えて北朝鮮はこれまでに空恐ろしいほどの核やミサイル兵器を製造し、その生産力を強化したと指摘。過去4代の米政権が経済圧力と交渉の組み合わせを通じて非核化を説得してきたが、この戦略はもはや現実的ではないとの専門家の意見を伝える。要因として、金総書記は交渉の代償として核保有国の指導者としての認知と米韓軍事同盟の弱体化を望んでいることを挙げる。

東南アジア関係では、ASEAN諸国がバイデン新政権による東南アジアの安定と繁栄に向けた米国のコミットメント復活に大きな期待を寄せているとメディアが伝える。しかし、同時にパンデミックや景気対策、民主制度の毀損などの問題に気を取られている米国が本当にアジア回帰を果たせるかという疑問から逃れられないと報じる。ただし、新政権は中国の拡大に対抗するため日米豪印の「クワッド(4カ国戦略対話)」だけでなく、トランプ氏が無視したASEAN諸国ともっと深く関わりたいと考えているとも伝えている。こうしたバイデン政権の今後の努力に期待したい。

インドの外国直接投資額が累積で5,000億ドルを突破した。ただメディアは、案件は小規模で守勢的なものが多く、さらにモディ政権が経済ナショナリスト政権でモディ首相も内向きの姿勢に向かっていると指摘する。また規制や政策変更が頻繁で外国企業にとって不確実性を生み出し、税法改正の遡及適用など外国企業に対する不平等な経営環境があると述べ、農業改革への反対運動が改革の後戻りを誘発し、外国企業の警戒感を呼び起こすことに懸念を示し、外国直接投資の先行きに疑問を呈している。