2021年1月号

中国はEUと電撃的に投資協定に合意した。これにより中国企業のEUへの進出が製造部門とエネルギー産業を中心に拡大された。中国は金融サービスや自動車セクターでの合弁事業の要件の即時もしくは段階的廃止や国有企業による欧州と中国企業の区別撤廃、パリ気候協定の実施、国際労働基準の批准促進を約した。また執行を監督する2国間投資委員会の設置が合意されたが、中国の過剰生産や補助金の問題は先送りされている。米新政権発足に先立って合意するというEUと中国の政治的思惑が優先された内容となっている。

台湾はコロナ対策で成功したためにコロナ・ヘイブン(回避地)となり、海外在住の台湾市民が多数帰国し、個人消費を増やすなど経済活性化に貢献している。政府もこうした台湾の公衆衛生上の優位性を今後の経済発展に生かす機会として活用しようとしている。ただし、台湾は香港、ニューヨーク、上海などと比較して生活の質で欠けるところがあるなどと批判も受けている。

昨年、韓国で死者数が出生数を上回って人口減少が始まり、高齢化によって60歳以上が全体の24%を占めるに至った。文在寅政権は出産奨励運動を始めたが、子供の教育費や住宅費などの増加を賄うには不十分と批判されている。加えて、子育てと義母の世話をするという社会規範に対する抵抗感が女性の間に高まっていることなどから、合計特殊出生率は、2019年に過去最低の0.92と日本を上回る水準に低下したと報じられている。当然、労働人口が減少し、経済成長が打撃を受け、潜在的生産力も低下すると指摘されている。

北朝鮮では朝鮮労働党の第8回党大会が開かれ、冒頭で金正恩委員長が低迷する経済の建て直しに失敗したことを認めた。金委員長は、国家経済発展5カ年計画の目標はほぼ全分野で大幅に未達となったと述べた。その一方で、米国を北朝鮮の最大の敵だと非難し、核とミサイルの強化を宣言した。国民に対して経済の困窮を謝罪する一方で、対外的な強硬策を鮮明にし、国民の関心を外に向けようとする常套手段を取ろうとしている。

東南アジア関係では、米財務省がトランプ政権下で最後となる為替報告書でベトナムを為替操作国に認定した。その根拠は、ベトナムが対米経常、貿易黒字額や為替介入額において米政府が認定の基準とする3つの要件をすべて充たしたと判断されたためである。米財務省はベトナム当局と交渉を開始しているが、まとまらなかった場合には、然るべき制裁措置を打ち出すとの強硬姿勢で臨んでおり、ベトナム側がなんらかの妥協策を提示すると見込まれる。

インドのモディ政権は農業のさらなる自由化を目指し、農業関連3法案を成立させた。これにより卸売市場以外での農産物の販売や企業との契約、オンライン販売などが認められたが、農家は最低買い入れ価格の撤廃に反発し、また農産品価格の下落を恐れ猛反対している。農業改革は以前から論議されてきた難しい政治的課題だが、経済的には不可欠だとメディアは指摘する。幾つかの改革法案を実施してきたモディ首相が初めて本格的な反対運動に直面している。