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☆ 国民党、総統候補に高雄市長の韓氏を選出

7月15日、最大野党の国民党は次期総統候補を決める予備選を実施した。同党の総裁候補としては鴻海精密工業の郭台銘会長と親中派とされる高雄市長の韓国瑜氏など5氏が立候補していたが、韓氏が有力視されていた郭氏を破り、同党の次期総統候補となった。同氏は来年1月の総統選で民進党の蔡英文現総統と対決することになる。
15日付フィナンシャル・タイムズは、敗れた郭氏は無所属で総統選に出馬する可能性があり、そうなると国民党陣営が分断され、民進党の蔡総統に有利に働くと報じる。記事によれば、5氏による激しい選挙戦の中で親中派のメディアから圧倒的な支持を得た韓市長が政治的スターとして頭角を現し、平均支持率44.8%を得て選出された。郭会長は27.7%だった。
韓氏は弁護士出身で、僅か1年余りの政治歴で高雄市の市長選で勝利し、政治家として有名になった。高雄市は台湾第2の都市で民進党の牙城だった。その彗星のようなデビューを後押ししたのは、中国本土に多額を投資する台湾実業家が経営する中天電視の傘下にあるケーブル放送のニュースチャンネル、中天新聞台(CTi News)や、中国本土に多数のユーザーを抱えるソーシャル・メディアらのキャンペーンだった。

韓氏、郭氏とも蔡政権の経済運営を失敗だと批判し、中台関係の緊張も蔡総統の責任だと非難した。ただし韓氏の対中政策は郭氏と著しく異なり、台湾経済の潜在的な牽引車としての中国に焦点を当て、台湾を広域中華民族圏の一部との考えを強調する。これは中国政府が台湾の政治家に要求する考え方である。同氏はまた台湾農産物の市場を中国で開拓し、本土からの観光客を増やすと公約している。これに対し郭氏は、中国政府は中華民国の存在を認めなければならないと主張する。中華民国は1949年に中国共産党によって転覆されたが、その体制と憲法は台湾で存続していると同氏は指摘する。
以上のように報じた記事は最後に、政治アナリストは、台湾市民の多数は事実上の独立を享受している現状の維持を希望していると述べており、郭氏はその中華民族に対する力強い思いによって浮動票に訴える力があるとみられ、特に若者や知識層に対して韓氏よりも魅力ある存在とみられるとコメントする。

以上のように次期総統選で民進党に挑戦する最大野党の国民党は、総裁予備選で事前に有力視されていた鴻海精密工業の郭台銘会長ではなく、高雄市長の韓国瑜氏を正式総統候補に選出した。韓氏は記事が指摘するように、郭氏よりも中国寄りの姿勢を鮮明にしている。こうした姿勢が中台関係の緊張が高まるなか、民進党の蔡総統との選挙戦でどのような影響を与えるか。郭氏の無所属立候補も噂されており、引き続き事態の推移を注視したい。