2019年7月19日号
――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――
(毎週金曜日配信 計 4 回総集編)
執筆:前田高昭 (国際金融ジャーナリス)
中国の習近平国家主席とトランプ米大統領は大阪で開催されたG20サミットの機会に会談し、相互にある程度の譲歩を行い途絶していた貿易協議の再開に合意した。この合意に関連し、メディアは貿易協議が再会しても双方の国内にいわば抵抗勢力が存在しなお紆余曲折が予想される、あるいは、G20での米中貿易戦争の休戦条件は不確かで両国の意見相違に橋がかけられたとは到底言えないと懸念を表明する。その一方、過去における米国の対中関与政策の意義を改めて指摘し、中国との貿易を含む多方面における共同活動を進めるよう提言する。
最近の台湾に対する米政策が貿易紛争で高まる米中関係の緊張を激化させている。米政府は、台湾に対して22億ドル相当額の武器売却を認め、また蔡英文総統がカリブ海諸国訪問の途次、米国に数日間滞在することを認めた。中国政府は強く反発し、特に武器取引の撤回を求め米関連企業に経済制裁を課すと宣言した。
韓国向け半導体関連品目の輸出について日本政府が規制強化に乗り出した。メディアは、元徴用工の補償問題に関する韓国政府の決定に対する日本政府の報復措置、あるいはハイテク業界のナショナリスト的シフトを示す最新の兆しなどの見方を示す。同時に韓国企業への深刻な脅威となり、テクノロジー・サプライチェーンに混乱を引き起こすと懸念を表明する。韓国政府は早速WTOへの提訴を含む外交戦略を総力を挙げて打ち出している。
北朝鮮の金正恩委員長はトランプ米大統領と板門店で電撃的に会談し、核協議の再開に合意した。メディアは、この協議はハノイ会談で北朝鮮が示した寧辺核施設の閉鎖に関する提案内容の拡大を目指すものになるとみられるが、トランプ政権内には外交で実績をあげている専門家チームが存在しており、今後北朝鮮当局者とのきめ細かい交渉に任せるべきだと提言する。
東南アジア関係では、ベトナム経済が米中貿易摩擦の恩恵を大きく享受している。今年第1四半期の成長率が年率6.82%増、第2四半期が同6.71%増と高い伸び率が続いている。ただし、その一方でコンピューターや電子機器、機械、機器を中心として数十億ドルに上る中国製品が迂回輸出によって米国に入ってきていると指摘されている。
インド経済が回復に転じ、成長率で再び中国を追い抜くと報じられた。財務省が議会に提出した経済調査報告書によると、今年度(来年3月に終わる財政年度)の経済成長率は5年ぶりの低成長から7%程度拡大するという。ただしメディアは、統計データの信ぴょう性に疑問が提起されたとも報じている。