2018年10月19日号

――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――

(毎週金曜日配信    計 4 回総集編)

執筆:前田高昭  (国際金融ジャーナリス)

中国政府が米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ継続、米中貿易戦争の影響などの要因から経済の安定と成長目標の達成のため人民元の下落を容認せざるを得なくなるとメディアが予想している。また、これがトランプ大統領には中国が為替相場を楯にして輸出業者を支援しているとみられることが懸念されている。同時にメディアは、金融政策も限界に達し、消費主導の経済成長に向けた構造改革が必要になると主張している。

台湾が米国からの大豆輸入を増やしている。目的はトランプ政権に対する中国の米農産物を対象とする報復関税によって打撃を受けている米農民を支援し、対米関係を強化することにあるとメディアは伝える。このため台湾政府は貿易使節団を米国に派遣し、対米大豆輸入を年内に3分の1ほど増やして今年の輸入額を16億ドルに引き上げると約束した。米国もこうした台湾の動きを歓迎し、トランプ政権は台湾向けの武器売却を承認している。

北朝鮮と米政府間の非核化交渉が停滞するなか、そうした状況についてメディアが多様な視点で分析、北朝鮮の真の狙いは非核化ではなく、平和条約の締結と在韓米軍の排除という伝統的な戦術の推進にあるとの見方を提示している。

東南アジア関係では、フィリピンでは民営化の失敗によって停電が慢性化し、高電力料金が定着している。要因として、陳腐化した非効率な送配電システム、電力源の高い輸入依存度と原油価格の上昇、通貨安が挙げられている。対策としてドゥテルテ政権は、これまでの再生エネルギー優先政策を廃棄して、エネルギー源を問わない電力プロジェクトの早期推進に踏み切ったが、送配電システムが改善されていないため、未だに所期の成果をあげていない。

インドのモディ政権は来年の国政選挙を控えて、都合の悪い雇用統計の発表を押さえ始めたとみられる。モディ首相は、前回の選挙運動中に数百万人の雇用機会の創出を約束して当選しており、次の選挙が近づくなか、エコノミストらはこの公約がどの程度守られているかを評価しようとしている。だが、最近の雇用データが公表されていないため支障を来しているという。データが未公表なのは、モディ首相の公約を実現していない不都合な内容のためではないかと疑っている。