――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――
(毎週金曜日配信 計 4 回総集編)
執筆:前田高昭 (国際金融ジャーナリス)
中国中国人民銀行は、先物取引を使って顧客にドルを売る銀行に対して20%の危険準備金を科す措置を再導入した。銀行はこの準備金コストを顧客に転嫁し、元安に賭けるコストを引き上げると見込まれている。この決定により、本土外で取引されているオフショア元が急騰した。中国は15年9月に資本流出が加速し元が急落した際、同様の措置を導入している。しかし、今回はその後のトルコリラ危機の発生を受けて再び元安にふれる動きがあり、市場は不安定な状況から脱していない。
台湾台湾の地理的名称の変更を中国政府が西側の多国籍企業に迫っている。特に航空各社に対して強烈な圧力をかけており、米有力航空各社がこれを受け入れたとメディアが報じる。14億人の潜在的旅客需要を無視できなかったというのである。台湾政府は報復措置を検討しているが、冷静な対応を促す声も上がっている。圧倒的な人口や経済力を背景として中国の台湾に対する攻勢が続いている。
韓国経済は輸出の後押しによって成長軌道に乗っているとみられているが、7月に製造業部門が5カ月連続で縮小し、GDPも内需の低迷で落ち込んだ。韓国銀行は今年通年の成長率見通しを3%から2.9%へ下方修正した。経済は個人消費の低迷と米中貿易紛争の激化というリスク要因を抱えて走っている。
北朝鮮の非核化問題について、ジョン・ボルトン米大統領補佐官が北朝鮮は米朝首脳会談で合意した取引を守っておらず、非核化の進展欠如は北朝鮮の責任だと非難した。これに対し北朝鮮は、核実験場の廃棄や朝鮮戦争で死亡した米兵の遺骨返還を挙げ、首脳会談で示した非核化実現に向けた意志は変わっていないと反論している。
東南アジア関係では、インドネシア経済が当面好調を維持している。第2四半期の経済成長率が年率5.27%と13年以来の高水準に達し、第1四半期の成長率5.06%を上回り、また四半期ベースでの成長率も4.21%と、伸び率として前四半期のマイナス0.42%から大きく改善した。ただし今後の課題として通貨安、経常収支赤字の継続、外貨準備の減少などへの対処が必要と指摘されている。
インド準備銀行(中央銀行)が政策金利を0.25%引き上げて6.5%とした。利上げは2回連続となる。背景には、インフレ・ファイターとして定評のある準備銀行の農民保護のための価格支援政策がもたらすインフレ圧力に対する懸念がある。最近のインフレ率動向もこうした懸念を裏付けている。FRBの利上げ政策への対抗策という側面も指摘されている。