2018年8月3日号

――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――

(毎週金曜日配信    計 4 回総集編)

執筆:前田高昭  (国際金融ジャーナリス)

中国政府が景気刺激に向けて動き出した。人民銀行(中央銀行)は中期融資ファシリティを使って5,020元(740億ドル)を銀行システムに注入し、商業銀行の元建て新規融資も増加し、国務院(内閣)は棚上げしていた地下鉄などのライトレール開発計画を再開する指針を公表した。金融緩和は低迷する経済をエスカレートする米国との貿易戦争の影響から守り、下落する通貨をてこ入れするためだとメディアは報じる。

台湾経済は米中貿易摩擦が深刻化するなか、今のところ力強い海外受注に後押しされ、着実な成長を続けている。台湾の多額の経常収支黒字と手厚い外貨準備のため投資家が台湾から資金を引き揚げていないことも一因と指摘されている。中央銀行は直近の金融政策決定会合で政策金利の据え置きを決定した。ただし貿易摩擦が全面的な貿易戦争に発展すれば、その影響は免れないとメディアは警告する。

韓国の保守陣営が北朝鮮との対話路線を掲げる革新勢力を前にして分裂し、深刻な危機に直面している。勢力回復には若者層の支持獲得が欠かせないが、保守勢力を代表する自由韓国党は国民と遊離し復活は難しく、生き残るには今のところ対北融和路線の崩壊という僥倖に頼るほかはないとメディアは指摘する。

北朝鮮の非核化は核軍縮として、かつてない難題だとメディアが指摘。北朝鮮との交渉を通じて核拡散防止条約(NPT)や国際原子力機関(IAEA)の存在価値が試めされると主張する。また、これまでの非核化交渉の中でリビヤを成功例として紹介し、同国の遠心分離機やミサイル部品、関連資料などを米テネシー州に搬送した例を挙げ、ボルトン米大統領補佐官が北朝鮮にリビヤ方式の採用を提案していると伝えるが、様々な前提条件が成立しなければ、実現不可能な試みだと切って捨てる。

東南アジアにおける最後のフロンティアといわれ、親日国としても知られるミャンマーが外資の誘致を本格化させようとしている。来月より外資の出資比率を35%まで引き上げる改正会社法が施行され、これに米欧企業・銀行も注目し、同国政府も主として米欧からの外資進出を期待しているとメディアは報じる。

インド政府による様々な農民支援策にもかかわらず、農民は悲惨な生活から抜け出せていないとメディアが報じる。支援策として、包括的な免税制度、肥料や種、エネルギーなどに関わる補助金、低利融資、債務免除、低料金の収穫保険、農産品向け価格支持制度などが挙げられているが、うまく機能していない。必要な対策として、インフラ整備、土地保有や登録制度の改革、行政上の諸手続の改善などが指摘されている。