イデオロギー偏重の政策を進める習体制の下で中国経済が大きなダメージを受けているとメディアが報じる。原因として、第1にゼロ・コロナ政策を挙げ、習主席と同一視されている政策で批判が許されていないと指摘する。第2に習主席の「新発展概念」と呼ぶ一連の経済構想を挙げ、目標は合理的だが党が主導権を握るとの考え方から実行は不安定で懲罰的であり、経済をけん引する民間部門のインセンティブが損なわれたと批判する。具体的にはハイテク産業や不動産業界の停滞、金融市場からの大量の資金流出、ベンチャーキャピタルの士気低下、経済の主要部門での自由化改革の消滅を挙げる。そのうえで世界経済への悪影響、海外での国家主導の政治的プレゼンスの強化、中国外交の悪質化などに懸念を表明する。
米政府が台湾との関係深化の柱として経済関係の強化に乗り出した。分野としては、貿易やサプライチェーン、テクノロジー輸出規制、デジタル貿易、クリーンエネルギー、労働者の権利といった領域、さらに市場以外の慣例や政策などで、協定を結んだり、協調したりする予定である。背景として、台湾を新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に招聘しなかったことが挙げられているが、同時に2021年に世界に供給された先端半導体のうち、台湾の半導体ファウンドリーが92%を占たという台湾の戦略的重要性があると言えよう。米中台関係の今後を占う動きとして注視していきたい。
韓国が14年ぶりとなる高インフレ率に襲われている。5月の消費者物価指数は前年同期比で5.4%上昇、韓国銀行は6、7月のインフレ率も5%超と予測し、経済成長よりもインフレとの戦いを優先させると宣言し、政策金利も4分の1ポイント引き上げ1.75%としている。主因は国際石油価格と食品価格の上昇にあり、コロナ後のインフレ圧力の高まりを予想し、今年の成長率見通しを2月の3%から2.7%に引き下げている。政府も補正予算編成による成長の下支えと共に減税や食品の輸入関税の撤廃などの物価安定策を発表している。ただし、さらなるインフレの進行と利上げが予想され、経済の先行きは予断を許さなくなった。
北朝鮮では新型コロナウイルスの感染が急拡大しているが、公式に発表された死者数は、実際はもっと多いとしても今のところ少ない。これは韓国を含む外国からの医療支援や抗ウイルス治療薬、ワクチンの提供を拒否する一方で、中国から密かに医療物資を空輸し、平壌に医療リソースを集めているといった対応と北朝鮮の比較的若い人口構成のためとみられている。ただし、こうした状況によって今回の危機が金総書記のリーダーシップで国が危機を乗り越えられることを証明するチャンスになると報じられている。危機を逆手にとった金体制のしたたかな戦略といえよう。
東南アジアにおいてベトナムがクリーンエネルギーへの移行で先頭を走っている。2021年までの4年間で太陽光発電の割合をゼロから11%近くまで高めて世界10位の太陽光発電生産国となり、2019年以降、風力と太陽光発電の容量を4倍に増やし、2050年までの排出量ゼロを公約するに至った。これは太陽光発電の供給者への固定価格買取制度の導入やベトナム電力の国内発電独占の解消、外国人投資家がベトナムでビジネスをしやすくするための改革の成果と報じられている。その一方で、経済が高成長するなかで電力割合に占める石炭発電の比率の増加や送電網整備の必要性も指摘されており、2050年までの排出量ゼロ達成は容易ではないとみられる。
インドの伝統ある統計インフラが崩壊の危機にさらされているとメディアが報じる。原因として、まず欠陥のある数字が好まれ、都合の悪い正確な数字を忌避する傾向が蔓延していることがあり、そうした分野として教育や衛生、貧困、GDPの計算などを挙げ、またデータ・インフラを整備する国家統計委員会の活動が縄張り争いと内部抗争によって複雑化し、機能していないと指摘する。ただし統計学者の過去の努力もあり、状況は絶望的ではないとし、データ収集などでの市民の協力を挙げる。そして質の高い全国的なデータは政府に透明性や説明責任をもたらし、政治の独裁化を防ぎ、経済や社会の問題を素早く発見して対応できると指摘する。モディ政権の対応が注目される。