中国関係では、不動産グループの恒大集団が多額の負債を抱えて破綻の危機にある問題が、日本の90年代バブル崩壊時の状況と類似すると指摘するメディアの論調をいくつか取り上げて観察した。いずれも最終的には当局による何らかの解決策が示されるとの見方を示すが、ソフトランディングには、日本に存在するような社会的結束が必要との指摘があり注目された。一党独裁の中国であってみれば、党主導で条件は容易に満たされるだろう。
台湾に対する中国の威嚇的行動がエスカレートし、台湾は過去数十年間で最も深刻な軍事的脅威に直面している。台湾政府も国防費を大幅に増強し、既に2022年の防衛関連予算を4%増の151億ドルで編成しているが、今後5年間で約87億ドル相当の上乗せを計画している。それでも中国が3月に2021年の軍事費を6.8%増の2,080億ドルと台湾の通常軍事予算の13倍以上に増やしており、追いつけていない。しかもパンデミックが経済を圧迫するなか、社会福祉支出とのバランスを取る必要があり、軍事費の増加は蔡政権にとって政治的に難しい問題だとメディアは報じる。とはいえ、台湾として自助努力が必要とされている局面にある。
韓国でカカオ、ネイバー、クーパンなど急成長している大手ハイテク企業が独禁法取締官などの当局から厳しい監視を受け、罰金を科されたりしている。当局はハイテク企業を新たな財閥の登場として捉えており、対象は国内企業に限らず、アップル、グーグルなどの外国企業にも及んでいる。旧財閥の悪弊を抑えられない政府が、韓国経済を支える存在となる可能性を秘めるハイテク企業群を新財閥だとして取り締まるのが政策として正しいのか疑問が残る。
北朝鮮はミサイル発射実験を再開するなかで韓国に頼りつつ、米朝協議再開のタイミングを見計らっているとみられている。朝鮮半島の和平実現を政治的遺産としたい韓国の文大統領は、この期待に応えようと米国に働きかけているが、米政府には北朝鮮が核兵器を放棄せずに制裁緩和のためだけに対話を利用するのではないかという強い警戒心がある。ただし、ここにきて人道支援などを通じて核放棄につながる対話の可能性を探る動きがあり、注視していく必要がある。
東南アジア関係では、シンガポールがライバルの中国、香港、韓国などの市場が仮想通貨の取引を非合法化し、あるいはその取り締まりを強化するなかで、仮想通貨取引所の参入を積極的に認める決定をした。メディアは、シンガポール当局の狙いは急成長する同業界に門戸を開き、シンガポールをアジアの、そして最終的には世界の支配的な金融ハブとすることにあると報じ、仮想通貨取引の合法化で先行した日本が最大の脅威となったと述べる。
インドでは、新型コロナウイルスの感染がひと段落しており、今が投資する好機だとメディアが強調する。根拠として、成長する中産階級と教育された低賃金の若年労働力、そして改革志向の政府の存在を挙げ、ムンバイのような住みやすい都市があり、不動産価格も歴史的な低位にあると指摘する。しかも技術革命が進行して、商取引とデジタルバンキングの出現を大幅に加速させており、中国製造業への過度の依存を警告されている多国籍企業には、インドは格好の代替先だと強調する。