2021年5月号

中国が人口危機の真只中にあり、家族計画の抜本的な変革が必要だとメディアが主張し、習政権の対応が注目されている。一人の女性の生涯出産率(合計特殊出生率)は1.3と予想され、高齢化社会が目前に迫っていると警告する。少子高齢化対策に障害となる問題として、中国社会で根強く続く高い男子出生率、教育の高度化に伴い急増する学卒者の雇用問題、地域の経済格差の拡大と東北部などの貧困地域で進む少子化の動きなどを挙げる。人口危機を回避するためにベビーブームを必要としているが、小さな対策では十分ではないと指摘する。

台湾関係では、米政府の長年の政策「戦略的あいまいさ」の転換を求める意見が米国内で浮上している。軍事活動を積極化し防衛能力を増す中国に対して、米政府は強いメッセージを発する必要があるとの主張に対し、中国を好戦的にして米国の利益を損なう行動に向かわせると懸念する見方が対立している。特に台湾再統一を後回しせずに実行する必要性について語る習主席、もしくは軍が自信過剰になるかもしれない脅威を真剣に受け止めるべきだと指摘されている。中国、とりわけ軍を自信過剰にさせないために米政府は「戦略的あいまいさ」から脱却すべき時に来ているのではないか。習と軍の力関係も注視していく必要がある。

韓国経済は民間消費が停滞するなか輸出主導の経済成長を続けており、これには為替操作をめぐる米国との衝突、住宅市場の過熱とそれに伴う家計債務の増加という2つのリスクがあるとメディアが警告する。為替政策をめぐる衝突については、米財務省が最新の半期為替報告書で韓国を中国、日本など他の10カ国とともに通貨政策の「監視対象」に指定しており、韓国としても気の許せない問題となっている。家計債務問題は以前から韓国経済の一つのアキレス腱として問題視され、最近では不動産、特に住宅市場の過熱が政治問題化している。政府として早急な対応に迫られている。

北朝鮮関係では、バイデン政権が北朝鮮に関する新政策を打ち出した。詳細は未だ不明だが、トランプ前大統領の一発勝負のサミット外交とオバマ元大統領の危機に対して一定の距離を置く政策とのバランスを取り、「外交に対する調整された実用的なアプローチ」を目指しているとされる。北朝鮮外務省の当局者は、バイデン大統領の議会での発言から分かるように米現政権の北朝鮮に対する敵対的政策はほとんど変わらないことが明らかだと批判する。これはバイデン大統領が4月に議会合同会議でイランと北朝鮮の核開発を「アメリカの安全保障と世界の安全保障に対する深刻な脅威」と述べたことを指しており、北朝鮮の新政策への反応については、今しばらく時間をかけて見極める必要があると思われる。

東南アジア関係では、インドネシア中央銀行がコロナウイルス流行で落ち込む経済のテコ入れのために政策金利を史上最低に引き下げ、今回もこの水準で据え置いた。輸出入や製造業が伸びるなか、経済の半分を占める消費が低迷しているために今年の成長率見通しは引き下げざるを得ない状況にある。他方、先進国経済が改善するに伴い資金がインドネシアなどの新興国市場から逃げ出し、このため通貨ルピアも下落基調にあり、中央銀行が景気刺激のために金利を引き下げようとしても通貨安を招くために引き下げに動けない。中央銀行はコロナ禍と通貨安への対応という難しい状況に置かれている。

インドでコロナウイルス感染症が大流行し、危機的状態にある。メディアは初期の対応は大胆だったが時期尚早にロックダウンを解除して感染が全国的に広がり、変異株が現れ、連邦政府の対応が小出しで遅く、今日の大流行を招いたと批判する。対策として、中央がコントロールする新たなロックダウンが必要だが、連邦政府は経済と貧困層への悪影響を恐れて十分に動いていないと指摘。代替策として生活資金の給付と移動制限の組み合わせを提案する。