中国政府がデジタル通貨の創出で先行している。デジタル人民元は、中国指導部による国内の統制強化と長期的には米ドルが支配する国際金融システムからの脱却を意図していると報じられている。実用面でも使い勝手の良さ、投機や偽造、減価などへの対策も十分配慮しているとされる。米中のグローバルな覇権争いで中国が極めて戦略的な分野で一歩先行した。
台湾の半導体受託生産(専業ファウンドリー)の大手である台湾積体電路製造(TSMC)は、半導体が世界的に不足するなか最先端の技術で先頭を走り、世界の注目を浴びている。米中欧なども自国での半導体製造を目指しているが巨額の投資が必要となり、また技術面でも後れを取っていることから、資金力と技術力に富むTSMCの優位は当面変わらないだろうとメディアは報じる。TSMCの存在は、台湾自体の経済力と地政学的な地位を高めており、今後の動向を注視する必要がある。
韓国の文在寅政権は任期後半に入り、いわゆるレームダック化するなかで側近に不動産関連の不祥事が発生し、支持率が落ち込むなど低迷している。こうしたなか、次期大統領選の前哨戦といわれているソウル、釜山の両市長選挙が投開票され、保守系最大野党「国民の力」の両候補が圧勝した。メディアは、野党候補の勝利は単に与党への批判票を集めただけに過ぎないと論じ、野党陣営が国民の支持を結集するには、新しい政策や人材の開発や掘り起こしが欠かせないと指摘する。
北朝鮮に駐在する各国外交官の集団脱国が起き、北朝鮮政府は、いわば対面での外交交渉や意思疎通の手段を喪失した状態におかれている。メディアは、理由として医薬品や食料を始めとする日常品の不足を挙げる。昨年、北朝鮮の命綱ともいえる対中貿易が約80%も落ち込み、政府は90年代の飢饉時代と同様レベルで市民の日常生活をコントロールしていると報じる。それでもミサイル発射実験は続けており、異常な状況にある。ただし、最近北朝鮮は対中貿易の一部復活を決断したとも報じられており、追い詰められた政府はコロナ禍を警戒しつつも対中貿易を再開するとみられる。
東南アジア関係では、インドネシア経済の現状について国際通貨基金の報告書から観察した。経済は政府支出と世界経済の改善に伴う輸出増、またワクチン投与の進展に伴う経済活動が活発化によって回復に向かっている。さらに財政赤字上限を一時的に停止するなどの大胆な財政策と中央銀行による国債購入などの積極的な金融政策が回復の維持と打撃を受けた産業の再編を後押しし、しかも企業の大量倒産を回避させたと報告書は述べる。ただし今後の懸念材料として銀行信用の伸びの弱さ、銀行収益の低下や資産の質の劣化リスク、政府歳入の拡充の必要性を指摘する。
インド政府がデジタル分野で極めて厳格な言論統制に乗り出した。行政命令で新ネット規則を発表し、違法と通告されたコンテンツの削除やメッセージの「最初の発信者」の情報開示の義務化、デジタル出版物の監督強化などを打ち出した。農民の抗議活動が契機となったとみられるが、政府は何年間にわたって準備を進めてきたとも報じられており、周到に用意された政策といえる。主たる規制対象は、米大手プラットフォーマーとみられるが地場の弱小メディアも含まれており、極めて広範囲である。こうした状況から米NGOはインドの民主化度を引き下げた。インド民主主義が危機に瀕している。