中国が他の諸都市に先んじて都市封鎖の解除などコロナ危機からの出口戦略に着手した。ただし政府は、危機再発を恐れて薄氷を踏むように対策を進め、また街の人々も慎重に行動しており、経済や社会生活の回復の足取りは極めて鈍いとメディアは伝える。経済政策も投資プロジェクトなどの大型刺激策は回避し、家計に対する直接の支援金(それも商品券)などが検討されている。失業対策の優先度が高くなり、供給の増強よりも需要の創出が課題になっていると報じられている。
台湾は国際機関から閉め出され、新型コロナウイルスの脅威に対して自身の創意工夫による局面の打開に迫られているが、重症急性呼吸器症候群(SARS)の教訓を生かし多様な施策を次々と打ち出した。例えば、SARS沈静化後に台湾疾病対策センターでの医師の増員や陰圧室の病院内設置、ウイルス検査を担う感染症研究所の新設、トップを閣僚級とした中央感染症指揮センターの創設、感染症流行の際の公民権制限や隔離措置の違反者に罰金を可能とする法的根拠の整備などである。メディアはまた、台湾の世界保健機関への加盟もしくはオブザーバー参加を認めるべきだと主張している。
韓国では中東呼吸器症候群(MERS)流行を教訓に検査ネットワークを整備し、今年1月末の新型コロナウイルス感染拡大時に始動、医師、医療スタッフ、検査機関、政治指導者がこの数年の間に定められた手順に従って動き、効果を上げた。現在1日に最大2万人の検査が可能で、これはバイオテクノロジー企業の活用とドライブスルー型の検査場の導入などイノベーションの成果でもあるとされる。
北朝鮮はコロナウイルス流行に関して、その脆弱な医療体制を考慮して比較的早い時期に思い切った対策を打ち出し、感染者は今のところゼロと発表している。しかしメディアによれば、感染者の検査が進まないなか、実態として既にかなりの数の感染者と死者が出ており、その事実は社会の混乱を避けるため秘匿されている。西側諸国が支援を申し出ると北朝鮮としては珍しくそれに飛びついたのは、そうした事情があるとみられている。
東南アジア諸国でも新型コロナウイルス感染者が増加し、遅ればせながら厳しい対策に乗り出した。患者の急増は3月初旬、クアラルンプール近郊で開かれたイスラム教徒の国際的集会で感染した信者の多くがインドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイなどにウイルスを持ち込んだためとされる。これら諸国の中でシンガポールとベトナムがいち早く適切な対応に乗り出し、その他の諸国も遅ればせながら対処に動き始めている。注目される対策として、大規模検査力を備えた研究所の創設、ルール違反に対する厳しい罰則、感染者の強制隔離と医学生や退職医師、看護師の強制動員、休校や公共施設の閉鎖、集会回避などを含む公民権制限の早期実施などが挙げられている。
インドでもコロナウイルス感染拡大防止のため、政府は外出禁止令などの対策を打ち出し、それに伴い経済への悪影響が懸念されている。このため中央銀行は急遽過去最低となる水準にまで政策金利を引き下げ、金融市場に流動性を注入。さらに借入金の3か月間の返済猶予を認めるなどの金融政策を打ち出し、政府も貧困層向けの救済策などの財政政策を発動している。ただし外出禁止令その他のウイルス拡大防止策が弾圧や検閲を伴い、一方的に過ぎるとの批判もある。