2019年1月25日号

2019年1月25日号

――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――

(毎週金曜日配信    計 4 回総集編)

執筆:前田高昭  (国際金融ジャーナリス)

中国関係で主要な政治出来事が起きた9の数字で終わる過去の年を振り返り、今年がその記念日を迎えるために党指導部が神経を尖らせているとメディアが伝える。そうした政治的事件とは、1989年の天安門事件、1919年5月4日の共産党創建につながった学生運動、その70年後となる1989年5月4日の天安門での学生デモ、1959年3月のチベット暴動、そして1999年7月に始まった法輪功の弾圧である。こうした事件の記念日が相次いで到来する2019年は、米中貿易戦争のただ中にある習政権に内政面から難問を突きつけることになりそうだ。

台湾の蔡英文総統が中国の習主席の台湾政策に関する新年の演説に反発し、初めて「1国2制度」と「92年コンセンサス」の考え方への反対論を明確に表明したとメディアが伝える。習主席は、台湾に対し「袋小路」に入るのを避けるために同氏が提案し、香港が英国から返還されて以来採用している「1国2制度」の枠組みを受け入れるように迫り、かつ中国政府は、台湾が正式な独立を求めるのを防止するために必要であれば軍事力を行使するとの従来の主張を繰り返した。蔡総統は外国メディアに対して台湾に対する支援を呼びかけている。

韓国経済が中国経済の減速によって大きな打撃を受けている。政府発表のデータによれば、12月の中国向け輸出が主要製品である半導体の落ち込みやメモリチップの価格下落によって急減している。このため2018年の輸出は前年の15.8%増から5.5%増へと伸びが鈍化、政府は今年の輸出伸び率はさらに3.1%増に減速すると予想している。

北朝鮮の金委員長が突然中国を訪問し習近平国家主席と会談した。メディアは、習主席にとって米国と火花を散らす貿易紛争のただ中にあって、北朝鮮がきわめて貴重なカードとなっていることを示すと報じ、同時に金委員長にとっては、米朝首脳会談の実績を背景として対中交渉力を高めたことを背景に2回目の米朝首脳会談を控えて中国の支援を取り付けて米国を牽制する狙いがあり、同首脳会談の開催が近づいていると指摘する。

東南アジア関係では、タイで軍政下における最初の総選挙が2月に実施される。しかし選挙が予定どおり実施されるかどうかに疑念が提起され、また実施されたとしても軍が介入し不正操作をするのではないかと懸念されている。さらに選挙後の政局についてもタクシン元首相らの政党が活動を活発化し混乱が起きると危惧されている。

インド当局は、米、砂糖、牛乳などの製品の中国向け販売を推進しており、中国政府が米食品類に対する関税を引き上げたために生じた機会を活用しようと考えているとメディアが報じる。中国向けの魚油と菜種粕の販売契約を締結し、大豆粕への輸入障壁を撤廃するよう働きかけ、果物と野菜の販売を増やす方法を話し合っている。また対中農産物売り上げ増は、農産品の低価格と高い借金水準に怒る農民をなだめる効果があり、2019年の総選挙を控えたナレンドラ・モディ首相を後押しすると伝える。ただし、インド農業が小規模で無秩序な状態にあるためにブラジルなどの大手輸出国と競争するために本格的な改革を必要としていると指摘する。