2018年9月7日号
――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――
(毎週金曜日配信 計 4 回総集編)
執筆:前田高昭 (国際金融ジャーナリス)
中国と米国の貿易紛争が激化の様相を呈するなか、中国の行動を変えさせられるのは関税政策ではなくWTO除名もあり得ると警告することだとメディアが提案する。トランプ米大統領の一方的な関税発動は、米国の国益に寄与してきた世界の貿易ルールを損なう恐れがあると批判する一方、中国経済の在り様がWTOの基本綱領に違反していると指摘。基本綱領となっているGATT第23条を発動して中国にWTO除名の可能性を警告することを提案する。具体的には、西側主要国による集団提訴やWTOの綱領を修正し他国に不利益をもたらす政策を明確に禁止することを主張する。
台湾と中米のエルサルバドルが外交関係を断絶した。今年に入りドミニカ共和国と西アフリカのブルキナファソに続く3カ国目となり、台湾と正式に外交関係を維持する国の数は17カ国に減少した。メディアは、今回のエルサルバドルの決定は米国にも戦略的影響を及ぼすと述べ、中米やカリブ海諸国が台湾の同盟国であった時代には、中国の同地域における影響力は限定的だったが、中国は現在一帯一路計画の下でのインフラプロジェクトを通じて中南米諸国との関係を強化していると指摘する。
韓国経済が中国との競争、人口の急速な高齢化という課題を背負わされているとメディアが指摘する。特に中国との競争によって従来の財閥主導の成長モデルの変革が不可欠になったと警告する。文政権は、所得主導の成長政策と広範囲な規制緩和を通じて「付加価値を生む」ハイテク産業を奨励する革新的政策を用意しているとされる。
北朝鮮関係では、ポンペオ米国務長官がトランプ大統領の指示で今月予定されていた訪朝を突然取りやめた。理由は非核化に進展がみられないためとされ、また訪朝の直前に北朝鮮高官から受け取った書簡の内容が余りにも好戦的だったためと報じられているが詳細は判然としていない。この間、北朝鮮の労働新聞は米国の姿勢に裏表があると非難し、特に米国の軍事的動きについて神経過敏とも言える反応を示している。また米中が非核化をめぐり言葉の応酬を繰り返しているのも今後の非核化交渉の進展に影を落としている。
東南アジア関係では、マレーシア中央銀行の新総裁に就任したユヌス元副総裁が外為政策の自由化に動いている。メディアは新施策として地場輸出業者に対する外貨のリンギット交換義務の解除や外国企業のリンギット建て金利デリバティブ取引の解禁、さらに外国保険会社に対する出資比率規制の遵守への柔軟対応などを挙げ、海外投資家を安堵させたと報じる。他にも規制緩和の要望が外銀から提示されており、新総裁の今後の対応が注目される。
インド経済がルピー安で揺れている。根底にある要因としてエコノミストは、輸入原油への依存体質、輸出の低迷、民間投資の不振と政府支出への過度の依存を挙げる。加えて経常収支と財政収支の赤字が経済に影を落とし、通貨安につながり、それによるインフ圧力が金融引き締めを招き、経済成長を圧迫する恐れがあると指摘する。こうした状況の中で、来年に選挙を控えるモディ政権は政治的リスクを負っており、その対応如何によって経済の先行きは大きな影響を受けるとみられている。