中国関連では、メディアは「安全保障のジレンマ」理論から米中経済関係が予期せぬ危機への対応がより難しくなる状況に置かれていると指摘し、今は政治家だけでなく大手企業も対中取引を縮小させる「ディリスキング」を推進していると報じる。米財輸入に占める中国製品の割合も2018年の20%超から今年3月に12%を下回ったと伝える。さらに経済的には米国が明らかに優位に立っていることから、政権内のタカ派が対中追加規制を今後も求めていく可能性があると指摘し、イエレン財務長官の訪中に先立って中国が打ち出した希少金属のガリウムとゲルマニウムに対する新たな輸出管理についても「ほとんど象徴的なもの」だとのアナリストの見方を伝える。
台湾はエネルギーの97%を海上輸入しており、台湾封鎖に対する脆弱性があるとメディアが警告する。軍事衝突のリスクがないとしても台湾のエネルギー多消費型半導体工場などからの需要を考えると不安定だと懸念する。天然ガスを含むエネルギーの備蓄量は2週間分にも満たないとされ、新しいガス施設は環境保護への抗議によって遅れている。洋上風力発電も中国本土と接する台湾西海岸沖にあり、タービンや送電ケーブルは紛争時に攻撃を受けやすいとされる。対策として、危機の際は米国とその同盟国からの液化天然ガスや原油の購入増、通常18ヶ月分の燃料を貯蔵している原子力発電所の復活などが考えられている。台湾有事の際、日本としてもエネルギー面での援助が後方支援策の一つとして重要になろう。
韓国政府は現在5行が独占する国内銀行セクターにおける競争原理の強化を検討している。理由として、銀行部門が預金と融資の金利差によって国民の犠牲の上に「安易な」利益を上げていることや、業界が国の経済的地位にふさわしいグローバル金融プレーヤーになるための努力をしていないことを挙げる。具体策として、オンラインバンクの増加、既存金融会社への商業銀行免許許可、外国銀行の地方支店の預貸規制緩和などが考えられている。しかし、専門家は銀行、証券、資産運用に分かれた事業領域に対する規制緩和の必要があると指摘する。特に財閥系企業の銀行参入についての政府判断に注目したい。
北朝鮮から韓国に逃れた脱北者の多くは生活に苦労し、失業率は全国平均の2倍とされる。しかし脱北したエリート外交官の太永浩氏は韓国の厳しい能力主義社会の中で政治家としてキャリアを積み、韓国社会と脱北者仲間内での成功の象徴となった。だが、最近の失策によって党から謹慎処分を受け、その幸せなイメージはあっけなく崩壊した。メディアは、こうした太氏の有為転変は韓国と北朝鮮社会の弱点をさらけ出したと論評する。そして、脱北者はどんなに出世しようとも韓国の党派的で偏った判断をする社会では完全に受け入れられないと指摘する。
東南アジア関係では、ベトナム経済が正念場を迎えたとメディアが報じる。昨年ベトナムはアジアで最高となる8%の経済成長率を達成し、新型コロナウイルス感染症の大流行以来2年連続の成長を遂げた。中国に近く、近年若く安価で教育水準の高い労働人口が多いベトナムは、サプライチェーンを多様化するチャンスとしてとらえる製造業者を惹きつけてきた。政府は2045年までに高所得経済国になるという野心的な目標を掲げているが、経済は岐路に立たされているとメディアは警告し、短期的にはビジネス環境の強化、長期的には経済の多様化を図る必要があると指摘する。とりわけインフラ整備、分権化された政治構造による煩雑な投資承認取得手続きの削減が必要で、2045年の目標達成のためには、現在の経済成長がもたらす配当金を再投資し、より生産的で知識集約的セクターの開発を支援する必要があると提言する。
インドのモディ首相は国賓として米国を訪問し、連邦議会上下両院合同会議での演説の機会を得るなど破格の厚遇を受けた。これには中国の影響力に対抗するという両国首脳の狙いがあったが、1年後に国政選挙を控えたモディ首相にとってイメージアップの場として世界の舞台を利用する機会ともなった。モディ訪米は与党インド人民党(BJP)の選挙戦略の重要な要素で、米印関係の歴史的な岐路というだけでなく、バイデン政権が2024年の選挙に向けてモディを大きく前進させるものでもあったとみられている。モディはまた、国外にいる印僑を利用してパブリックイメージを形成しようとしている。彼らは国内世論の形成で重要な役割を果たしていると言われている。ただし訪米は深刻な労働危機など緊急の問題には何の役にも立たないとの批判も受けている。