中国が米国主導の技術封鎖に対抗し、国内の外国企業に対する「外科手術的」報復を開始したとメディアが報じる。標的は米国の兵器会社やチップメーカー、デューデリジェンス会社、日本のアステラス製薬やイギリスのデロイトなどである。外国企業の職員が拘束されていることから、人質外交のエスカレートも懸念されている。ただし、パンデミック後の中国経済の再出発に役立つ外国企業に対する攻撃は控えられているとされる。また電気自動車産業で使用する材料の採掘と精製における自国の優位性を梃子にして半導体規制の緩和を交渉する可能性もあると指摘されている。こうした中国政府の動きに関連して米国商工会議所は、中国でのビジネス展開の不確実性とリスクが劇的に増大していると警告している。これは当然日本企業にも当てはまる。実際、中国が2014年に反スパイ法を成立させて以来、17人の日本人が逮捕され、現在も5人が拘留されているという。引き続き十分留意する必要がある。
台湾海峡における中国の軍事的挑発行為を無視してはならないとユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマー氏がタイム誌に発表した論文で警告する。その理由の一つに偶発的な軍事衝突発生の可能性を指摘する。同時に中国が台湾に対して軍事行動を起こす実際のリスクは低いと主張する。その理由として、習近平主席が国際舞台で平和構築者として大きなエネルギーを費やしていると述べ、中仏両政府による共同声明や中東におけるイランとサウジアラビアの関係改善の成功を挙げ、台湾との高価な戦争に躓くことによってこれらの外交的勝利を覆すことはないだろうとし、さらに台湾が世界の半導体製造工場となっている現状を指摘している。
韓国の尹錫悦大統領は4月に訪米してバイデン大統領と会談、ワシントン宣言を手土産にして帰国した。同宣言は、米国は核兵器で同盟国を守るという「拡大抑止」の姿勢を示すため核兵器搭載可能な弾道ミサイル原子力潜水艦の韓国寄港を約束し、見返りに韓国は独自に核兵器を開発しないことを再確認した内容だが、これについての国民の評価は2分しているとメディアは伝える。また就職難に悩む多くの若い世代にとって、北の核兵器よりも緊急の課題は経済であり、これについて共同声明は何も触れていないと批判する。なお、ここでは尹政権の対米外交が取り上げられているが、当然その対日政策も論義の的になるはずであり、今後注視してゆく必要がある。
北朝鮮のドローン数機が韓国に飛来したことが米国からの情報漏洩により判明した。これによりミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮がドローンによる韓国への領空侵犯も試みていたことが明るみに出た。同時にこうした北朝鮮の攻撃に対する韓国側の準備不足も暴露された。飛来したドローンのうちの1機は、大統領府周辺の飛行禁止区域を通過したという。軍当局は戦闘機とヘリコプターを出動させたが撃墜には至らなかった。この事件は尹大統領に政治的打撃を与え、今年後半には対ドローン専門部隊を発足させると発表した。
東南アジア関係では、タイの総選挙で野党の民主勢力が圧勝した。王室改革などを掲げたリベラル派の野党「前進党」が第1党、タクシン元首相派の野党「タイ貢献党」が第2党となった。ただし、クーデター後に軍が考案し、権力保持のために作り上げた複雑なシステムの下では野党が新首相を選出するためには事実上、議席数の約75%を獲得する必要があるとされるほか、軍による政権奪取や司法介入による野党候補の失脚の可能性も指摘されている。組閣に至るまでには様々な障害があり、前途は予断を許さない。
インドが「中国プラスワン」と呼ばれる座を獲得し、次の中国になろうと取り組んでいる。ただし、この座をめぐる競争は激しいとメディアは報じる。しかもインドは技術を持たない貧しい労働者、未整備なインフラ、企業寄りとは言い難い規制などの問題を抱えており、経済に占める製造業の比率は現在も小さい。そうしたなか、アップルがインドでのiPhone生産の大幅拡大を決め、インドにとって大金星となったと伝える。2014年にモディ首相は製造業の振興政策「メーク・イン・インディア」を発表し、政府サービスのデジタル化、道路や空港、コンテナ港湾、発電所の建設を加速したが、人手不足や輸入品への関税を引き上げなどの問題が指摘されており、モディ政権の真価が問われている。