中国では、3月5日より開かれた全国人民代表大会で習近平党総書記が正式に国家主席に就任し、合わせ周辺の要職も側近で固めて権力基盤を盤石なものとした。対米外交では、習氏からの明確な指示がない限り重要協議はできないと報じられるほど、政策の設計・実行で支配を高めて権力の一極集中を進めた。経済分野でもこれを統括する新首相に側近の王強氏を送り込み、早期の経済回復を企図し、そのために民間企業の取り込みや金融リスクの管理と技術革新を推進しようとしている。習チームの今後の経済運営に注目する必要がある。
米国は、台湾をめぐる戦いを回避するために中国を安心させ、中国の主張するレッドラインはそのままだとし、台湾侵攻には容認できないリスクがあることを納得させるスタンスを取るべきであり、その目的は台湾問題の解決ではなく先送りだとメディアが提言する。対応策として台湾には防衛力の強化や中国のグレーゾーン戦術に対する備え、米国には中国を刺激するような象徴的な行動の回避などの呼び掛け等、何とか共存の道を探るべきだと主張する。現在の米中関係は衝突進路をまっしぐらに進んでいるようにみえる。メディアが提案するように、大きな紛争にならないよう共存の道を見つけなければならない。それには外交と対話の復活が第一歩となる。
韓国の合計特殊出生率が2022年には0.78と前年の0.81から低下し、世界最低記録を更新した。少子化は経済成長の鈍化、生産年齢人口の減少、高齢者介護の負担増の中での税収減などを引き起こす。政府は人口問題を最優先の政策課題としているが、補助金政策が中心で効果が上がらず、専門家は長時間労働、熾烈な教育環境、限られた居住スペースなどの根本的な問題に取り組むべきだと提言する。人口対策最優先を公約している尹新政権の取り組みが注目される。
北朝鮮の核実験場から地下水を通じて放射能汚染が広がり、北朝鮮と周辺国の人々の健康を脅かす可能性があると人権団体が警告している。事実、北朝鮮から密輸されたキノコから基準値の9倍の放射性物質が検出され、実験場近くに住んでいた脱北者数人に放射線被曝に起因すると思われる症状がみられたという。さらに韓国政府によれば、北朝鮮が強力な核爆弾を爆発させた場合、山の実験場が放射性物質を漏らすほど不安定になる可能性があるという。北朝鮮による核実験は、環境や健康面からも厳重に監視する必要が出てきた。
東南アジア関係では、1998年のアジア通貨危機の震源地となったタイの通貨バーツが、以後、対ドルで際立って安定を維持してきたとメディアが報じる。その安定ぶりは、現在1ドル=33円と危機前の26円からほとんど変わっていない対ドル相場で証明されている。バーツの安定は、財政赤字の低さや中央銀行の慎重な政策運営、活発な貿易や観光業の隆盛などの経済の強さに裏打ちされている。多額の家計負債や高齢化の進展などのタイ経済の欠点も指摘されているが、一人当たりの所得は、危機前の3,000ドルから2倍以上の8,000ドル近くまで増加して他の新興国の模範となっている。
インドが安全保障と貿易分野で非同盟、保護主義の歴史から方向転換しようとしているとメディアが報じる。前者の具体例として「クアッド」、後者について特定パートナーに対する貿易障壁の軽減措置や自由貿易協定交渉の推進を挙げ、背景に中国の存在があると述べて、インドは中国以外の国とは自由な貿易をしたいと考えているが、中国からは一層の保護を望んでいると指摘する。さらにインドの貿易振興への関心復活の背景として、インド企業やインド系移民の世界的な活躍が目立ってきたことを挙げ、マイクロソフトやアルファベット(グーグルの親会社)、IBMの最高経営責任者(CEO)はいずれもインド生まれで、インドで教育を受けた人物だと指摘する。こうしたインドの最近の動きについて自由貿易論支持者は、関税へのアプローチがなお保守的だと批判しているが、インドの非同盟と保護主義という歴史を勘案すれば評価すべきだとメディアは主張する。引き続きモディ政権の動向に注目したい。