中国の習近平政権によるゼロコロナ政策撤廃の国内及び世界経済に与える影響について、メディアは中国経済の回復は予想以上に早いかもしれないが信頼には傷がつき、中国から脱出する企業が増え、資金流入や対内投資の回復は遅れると予想する。また世界経済への影響は経済成長に寄与するよりはインフレ、金利の上昇に結び付く可能性が高いとし、特にエネルギーを輸入している中国の近隣諸国には打撃となると指摘する。日本としても十分留意しておく必要がある。
台湾は世界の半導体生産センターとなっているが、新型コロナウイルス大流行によって世界が半導体の重要性に目覚めるなか、ロシアのウクライナ侵攻によって中国が「領土の不可侵部分」と主張してきた台湾の脆弱性が浮き彫りになったとメディアは指摘。企業のサプライチェーンの問題が突然冷戦以来の地政学的な緊急性を帯びてきたと述べる。米欧は大量の資金投入で半導体産業の強化を図っているが、加えて米政府が半導体及び製造装置の対中禁輸措置を導入したことに対し、対日石油禁輸措置が真珠湾攻撃につながった史実を挙げて、中国が台湾を標的にするリスクを高めるだけだと批判する。
韓国は米国の「核の傘」で守られてはいるが、それだけでは攻撃的で軍事力を増す北朝鮮を前にして安心できないという意見が強まっている。米国はそうした声を拒否する一方、韓国防衛を再確認しているが、核兵器の再配備を主張する人々は朝鮮半島での戦争防止には通常兵器では不十分で「核の傘」も完全に信頼はできないと主張している。米国は1990年代初めまで韓国に戦術核を配備していたが旧ソ連との軍縮協定で撤収しており、韓国の一部議員は朝鮮半島における米核兵器の再配備を求めている。だが、米国はこのような要請も拒否している。他方、韓国独自の核兵器開発に反対する人々は、核拡散防止条約(NPT)に違反し、核戦争の危険性を高めると主張する。このように核兵器の配備や開発について韓国内で意見が対立しており、議論の行方が注目される。
北朝鮮が核兵器の増強にまい進している。これに対し、日米韓は強さには強さで対抗する姿勢を示しているが紛争可能性を高めると批判されている。特に北朝鮮が開発を進める戦場用の小型核兵器の使用は現場の指揮官に委ねられる可能性が高いため事故やミス、誤算で核使用につながるリスクが高まっているとされる。北朝鮮はまた核政策法を制定して恣意的な条件での先制攻撃など使用の閾値を異常に低くしている。他方、メディアは日米韓の関係にも軋みが生じていると指摘する。韓国は紛争時に米国から見捨てられることを恐れ、米国は紛争に引き込まれるのを懸念しており、日本の安保関係当局の多くにも共有されていると述べる。また東アジア防衛に対するバイデン大統領のコミットメントを共有しないリーダーが将来選ばれる懸念の中で、日韓は独自の防衛力を強化しようとしていると報じ、韓国は日本が朝鮮半島での紛争を誘発する能力を獲得しようとしていると内心懸念していると指摘する。最後に米韓合同軍事演習などの北朝鮮に対する力の誇示を放棄すべきではなく、北朝鮮が核兵器保有は政治的目標の達成には役に立たないとの結論に達することが肝要だと主張する。外交交渉での活路が期待できない現状では、力には力で対応する側面を強調せざるを得ない必要もあると言えよう。
東南アジア関係では、就任間もないフィリピンのマルコス大統領が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。肝心の南シナ海領有権問題については玉虫色の合意に終わり当初の目論見よりも後退したが、経済、貿易関連ではかなり突っ込んだ合意が成立したとメディアが伝える。首脳会談後の共同声明には経済、農業、貿易など14の合意が盛り込まれ、具体的には「一帯一路の協力に関する覚書」や南シナ海での石油とガスの探査に関する協議の再開、「経済技術協定」などの経済分野や電子技術分野、観光分野、農業分野など多岐にわたっている。
インドはパンデミックとウクライナ侵攻によって生まれた世界の架け橋となるのを望んでおり、東西と南北の分断を解消する仲介役になれると考えているようだとメディアが指摘する。背景に世界は西側の力が弱まり、無秩序な時代が来るのは避けられないとしても、経済的な相互依存によって緩和される可能性が高いというインドの考え方があると伝える。そのうえで、インドは2世紀にわたって植民地支配を受けてきたにもかかわらず、「世界に対する反感や怒りはないとてもオープンな社会だ」というジャイシャンカール外相の言葉を紹介する。こうしたインドの対外的な立ち位置は大いに期待されるが、オープンな社会とされる国内では肝心のモディ首相がヒンズー教国粋主義者としてイスラム教徒を弾圧しているのが懸念される。