中国の人民元が対ドルで大幅に落ち込むなか、中国人民銀行は多様な手段を使って元の防衛に努めている。ただし、目的は元安の阻止よりも抑制に焦点を絞り、秩序なき元安がインフレ圧力を高め、家計と企業を動揺させないようにしているとみられる。元の防衛手段は基準値の操作、外貨預金準備率の引き下げ、口先介入、逆周期因子の再導入、資金移動規制そして巨額の外貨準備を駆使した元買いの市場介入など多岐にわたる。ドルの影響力が低下していることもあり、人民元の対ドルでの下落が無秩序になる可能性は低くなっており、加えて当局は2015年から16年にかけての経験から元安対策で自信をつけている。こうした状況から、中国は元安に余裕をもって対処しているといえよう。
バイデン米大統領は、台湾について過去3回即興的に中国が侵略した場合に軍事的に守ると発言している。メディアは最近の強権的な中国の行動に鑑み、発言は有意義であり、米国内における超党派の多数意見を表していると主張する。ただし、発言は米国の政策を公式に更新したことにはならず、それだけでは中国を抑止できないとして議会による更なるバイデン政権の後押しを促し、具体的には上院外交委員会が賛成多数で可決した「台湾政策法案」の成立に期待を表明する。同法案は、今後5年間での65億ドルの新たな安全保障支援と中国による「武力行使を抑止する」ことを米国の方針とする文言を盛り込んでいる。台湾にとっても重要法案であり、今後の審議動向を注視する必要がある。
韓国のウォンがリーマンショック時の下落水準にまで急落している。このため財政当局は緊急時対応計画を見直し、韓国銀行はウォン下落が経済ファンダメンタルズに比べて速すぎると警告し、8月に政策金利を4分の1ポイント引き上げ、さらなる引き上げを示唆している。またウォン安による輸入コスト上昇のためにインフレ圧力が高まり、インフレ率は8月に5.7%と高水準で推移している。貿易収支も石油やその他のコモディティ価格の上昇によって輸入額が膨らみ赤字基調が続いており、韓国銀行は引き締め姿勢を堅持するとみられる。財政当局は、ウォンが対ドルで1,500を切るのではないかと懸念しており、このため個人と企業に対して海外保有資産の売却を奨励する施策を検討していると報じられている。
北朝鮮が日本列島の上空を通過する中距離弾道ミサイルの発射実験を行った。飛行距離は米領グアムが射程に入る過去最長だった。メディアは、冷静で静かな対応が妥当である、あるいは、現時点での最善の対応策は抑止力であり、それは信頼のおける軍事的展開と北朝鮮が先制攻撃を行えば、金体制の崩壊を引き起こすことを北朝鮮と中国に理解させることだと主張する。また抑止力の強化として米国防予算の大幅引上げが必要だと指摘する。日本も冷静な対処が必要としても抑止力の強化と国防費の増加が避けられないだろう。北朝鮮のミサイル発射実験の資金源を追跡し締め付けを強化することも必要であろう。
東南アジア関係では、フィリピンのマルコス新政権が前政権の中国よりの政策から安全保障面では米国と、経済・貿易関係では中国と良好な関係を維持する、いわば、いいとこ取りの外交に軸足を移そうとしている。対米関係では早速バイデン大統領との首脳会談や米比国防長官による軍事調整協議を実現し、外務・防衛両長官の定期対話を計画し、南シナ海での領有権問題で前政権より強硬な対中姿勢をみせている。しかし、中国もフィリピンに対して積極的な外交攻勢をかけている。新大統領の就任式に王岐山副主席を派遣したり、マルコス大統領自身が掲げた課題と一致する4項目、すなわち農業、インフラ、エネルギー、人と人との関係を2国間関係における「4大優先事項」だと宣言したりしている。マルコス新政権はそうした両国を相手に実益獲得に動いていると言えよう。
インドでは、9月30日に中央銀行であるインド準備銀行がインフレ抑制と景気回復、通貨の防衛という複雑な課題を抱えて4回目となる政策金利の引き上げに踏み切った。こうした決断を同行に迫った要因として先進国による積極的な金融引き締め政策を挙げ、コロナウイルスのパンデミックとウクライナ紛争に続く第3のショックだと述べ、懸念を表明している。事実インドのインフレ率は最近7%にも達し、ルピーは今年に入って対ドルで約9%下落している。同行の言う第3のショックであるFRBによる急激な利上げは、日本の円安にもつながっており、日本としてもインド準備銀行の今後の金融政策動向に注目していく必要がある。