2022年5月20日号

中国は経済が明らかに鈍化し始め、また国際的批判を受けるなかゼロコロナ政策を止めようとしていない。共産党指導部は機関紙を通じてコロナ対策を称賛させ、すべてが計画通りに進んでいると宣伝している。メディアは、地方債を増発して公共投資のテコ入れを図る景気対策も考えられるが、それよりもゼロコロナ政策を緩和すべきだと提言し、中国がゼロコロナを止められない理由は、習近平国家主席が力を入れている政策のためだとの見方を示す。しかし習体制がゼロコロナから脱却できないのは、それが一歩間違えれば体制崩壊につながるリスクがあるためだと思われる。

台湾政府は感染者が増加するなか、これまでのゼロコロナ政策を放棄し、「新しい台湾モデル」をスタートさせた。すなわち無症状で軽度の患者は自宅に隔離し、濃厚接触者は以前の10日間から3日間の隔離で済ませ、入国者検疫は10日間から7日間に短縮した。この措置はウイルスの野放図な蔓延を許すのではなく、感染防止を経済の再開や人々の普通な生活とのバランスを取りながら推進することにあり、重症の患者を最小限に抑え、軽度あるいは無症状の患者を「効果的にコントロール」することが目標とされている。また背景として、高いワクチン接種率、迅速な検査と抗ウイルス療法の利用が可能という台湾独自の整備された環境があることが注目される。

韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任した。同氏は米紙とのインタビュー記事で以下のように語る。まずリーダーとして人の意見に耳を傾ける。外交政策として対北朝鮮関係のみの重視から、韓米関係を基盤とする欧州やアジア全域への外交の幅拡大、ウクライナ危機では対ロ国際的圧力キャンペーンへの関与拡大、対中関係では政治的な価値観の違いを尊重しつつ経済での共存、対日関係では金大中大統領・小渕首相宣言を踏まえた未来志向の関係を明確に打ち出す。北朝鮮政策では同国を韓国の「主敵」と呼び、防衛政策の確立、作戦情報などの構築の必要性を強調するが、不可逆的な非核化措置をとれば経済開発支援プログラムを開始し、必要な対話チャンネルは常にオープンにしておくなどと柔軟な姿勢をみせる。

北朝鮮はウイルス排除に成功し、コロナ流行を回避したと主張しているが、その方法は最終的には持続不可能でいずれ運が尽きると専門家は警告する。またメディアは、北朝鮮はこれまでCOVAXを通じたワクチンを拒否してきたが、効果が劣ると感じたワクチンを拒否しているのであり、ファイザーやモデルナのようなmRNAワクチンが提供され、国民に行き渡る量のワクチン接種が可能であれば受け入れるのではないかとの見方を伝える。こうしたなか、北朝鮮の朝鮮中央通信が北朝鮮全域で発熱者が急増していると報じ、まさにメディアが予想した動きとなった。金体制を揺るがしかねない事態であり、ワクチン問題を含め北朝鮮の対応を注視したい。

東南アジア関係では、5月9日に投開票されたフィリピンの大統領選で、かつて長期独裁政権を敷いた故・マルコス元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス元上院議員(64)が当選した。メディアは、フィリピンではFacebook、TikTok、YouTubeなどのソーシャルメディア・サイトを通じて大量の偽情報が流され、それが大統領選挙戦という重要な政治的イベントで悪用されたと述べ、マルコス氏もそのメッセージを広めるために従来のニュースメディアではなく、ストリーマー軍団に頼ったとみられると報じる。

インド準備銀行(中央銀行)は政策金利のレポレートを0.4%引き上げて4.4%とした。利上げは約4年ぶりで、米連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の大幅引き上げに先立って行われた。利上げは高まるインフレを抑えるのを狙いとされているが、同時に株式や債券市場からの資金流出を防ぐ効果も狙っている。他の途上国もこうした引き締め策に動いており、ウクライナ戦争はそれに起因するインフレ圧力の高まりや大量の資金流出の発生で途上国を苦しめている。