中国の習近平指導部による締め付けが金融分野にも及び始め、中央銀行である中国人民銀行が追求してきた金融政策の独立性、透明性、自律の確保などの努力が崩壊の危機に瀕している。こうした動きは既に預金準備率の決定などの政策面の他に規律検査官による銀行本部への立ち入り検査や幹部職員の調査、さらに同行以外の金融組織への検査官派遣などで具体化されている。独立性が不可欠な中央銀行として中国人民銀行が最大の試練にさらされている。
台湾関係では、中国において広く事業を展開し、かつ台湾独立勢力を支援しているとみられる台湾企業を標的として中国政府が懲罰的措置を取り始めた。その最初の標的となったのが遠東グループとみられる。台湾と中国で幅広い事業を行っている同グループが規則違反で多額の罰金を科せられたとメディアが報じる。さらに11月に中国政府は「頑固な独立派」のブラックリストを発表。大陸での資金調達を禁止すると脅迫し、遠東グループの子会社から選挙資金の提供を受けた蘇貞昌元行政院長などの政治家に制裁を科している。今後、大陸で事業展開する台湾企業が中国政府の政治的武器となる危険があり、注視する必要がある。
韓国を豊かにした重工業が2050年までにカーボンニュートラル実現という文在寅大統領の公約のために成長の原動力から負の資産へと変わりつつあるとメディアが報じる。企業の代表者たちは、目標達成のための時間と支援が与えられなければ生産量の削減や大規模な失業が発生すると訴えている。解決策として、エネルギー集約度の低いサービス業へのシフト、もしくは製造業を中心とする産業の変革が提示されているが、経済における重要性を考えて後者が唯一の選択肢とみられている。メディアは、企業の準備が十分でなく、脱炭素への道のりは険しいと指摘し、工業都市に大きな打撃を与える可能性があると警告する。
北朝鮮は予想以上のウラン製造が可能な状況にあり、核爆弾製造の初期段階を加速させる可能性があるとメディアが報じる。ただし、スタンフォード大学の新しい研究結果によると、実際に生産されているウランの量は、生産可能な量のほんの一部にすぎないという。このギャップは、金正恩体制が現在の核拡散レベルに満足しているか、採掘する鉱石が十分でないか、あるいは兵器用核分裂性物質の開発の後期段階に潜在的なボトルネックがあることを示唆していると述べる。また生産可能なウラン量は、年間20個以上の核爆弾に相当する量だが、実際にはウラン濃縮作業を行っている寧辺施設に制約があるために年間6個程度の製造能力に止まっていると報じる。今後の米朝間非核化交渉においては、ウラン精鉱工場の解体が不可欠な課題となりそうである。
東南アジア関係では、ベトナムで起業家が次々と誕生して国の庇護を受けて発展し、米企業でいえばS&P 500の指数に入れるような規模に成長している。彼らは旧ソ連などの海外で成功し、その後、資金を本国に投資し、政府も彼らの投資を「愛国資本」として歓迎。億万長者と共産党国家との間に共生関係が生じているとメディアは報じる。ただし、こうした政府との関係は新興財閥にとって利点であると同時にリスクも伴うと警告する。
インド経済もようやくコロナウイルス被害から立ち直りつつあり、今年第3四半期の成長率は前年同期比で8.4%増となった。しかし、回復力は脆弱で中間層の消費意欲は低迷し、また莫大な数の若者に雇用を提供するには不十分な状況にある。またインド経済の長期的問題である需要鈍化、製造業の離陸の難しさ、労働参加率の低下、さらには中国から流出した低スキル製造業を誘致できなかったなどの問題点が再び注目され、モディ政権が財政支出に消極的だとの批判も出ている。これを受けて政府は地方のインフラ整備など経済の活性化のための財政出動に動き出している。こうした財政面の刺激策がどこまで効果を発揮するかが注目される。