2019年3月22日号
――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――
(毎週金曜日配信 計 4 回総集編)
執筆:前田高昭 (国際金融ジャーナリス)
中国で全国人民代表大会(全人代)が開幕し、冒頭の政府活動報告で李克強首相は対外環境で深甚な変化に直面していると述べ、特に米中貿易摩擦が市場予想や企業の生産とビジネス運営に悪影響を及ぼしたと指摘。中国経済に対する下押し圧力が増え続けているとし、消費の低迷、効率投資の鈍化を挙げた。ただし対策として強力な景気刺激策を大規模に打ち出すつもりはないと語っている。
台湾の海外受注高がハイテク産業のグローバルな減速の影響を受けて減少基調にある。1月の海外受注高は前年同月比6.0%減の404億9,000万ドルと3ヶ月連続で低下した。地域的にみると中国と米国向けの減少幅が大きく、回復は米中両国の需要回復にかかっている。政府は今年の実質成長率を前年比2.27%増と18年11月時点の予想から0.14ポイント引き下げた。
韓国関係では、日韓が過去と決別できない理由を独自の視点で分析したエコノミスト誌の記事を取り上げた。日韓関係が円滑に行かないのは指導者の責任で、一般市民の関係は良好だと指摘し、韓国が植民地化された時代から今日にいたる主要出来事を振り返り、朝鮮半島の分断は米国の指導の下で起きたとし、米国は過去の適切な清算なしで日韓に未来志向の関係を呼びかけ、今日に禍根を残したと批判する。
北朝鮮関係では、国連安保理の北朝鮮制裁委員会専門家パネルが年次報告書を発表した。米朝首脳会談が開催されるなか、北朝鮮内部では核ミサイルの開発、実験施設が完全に維持保存されており、また経済制裁違反行為について中東、アフリカ諸国を中心に活発に調査している状況が報じられている。
シンガポールでは、中央銀行に当たるシンガポール通貨庁(MAS)が金融政策の手段として金利ではなく、為替相場を活用しており、その現状がシンガポール・ドルの動きと経済の現況と共に報じられた。経済は力強い内需によって堅調に推移し、MASはインフレ圧力を考慮して来月の決定会合では通貨切り上げのペースを加速し、3回連続となる切り上げを実施するとの見方が根強いとメディアは伝える。
インドを途上国向けの一般特恵関税制度(GSP)の対象から外すことをトランプ政権が決定した。インド太平洋地域で権益を主張し始めた中国に対抗するうえで、インドは重要な同盟国であるが、それにもかかわらず貿易戦争の戦端を開こうとしているとみられる。背景としてメディアは、米業界に鬱積するインドに対する不満を挙げている。他方、インド政府は米政府決定の意義を打ち消すような発言をしており、米印関係への影響が見極めにくい状況にある。