2018年12月7日号
――東アジアのビジネスに関心のある方のための情報誌――
(毎週金曜日配信 計 4 回総集編)
執筆:前田高昭 (国際金融ジャーナリス)
中国は、東アジア包括的経済連携(RCEP)首脳会議で交渉の年内妥結の合意に向けて主導権を発揮できず、次いで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でも、ペンス副大統領からの強烈な攻勢を受けて米中の対立が激化し、首脳宣言を発表できない状態に陥った。中国の標榜する自由貿易の本気度が東アジアでの国際会議を通じて大きな試練を受けている。
台湾で全22県・市の首長ポストを争う地方統一選挙が投開票され、野党の国民党がポストを6から15に増やし大勝。与党の民進党は13から6へと数を減らし大敗した。この結果、党主席を務める蔡英文総統は責任を取り辞任を表明した。並行して実施された住民投票で原子力発電の廃止とオリンピックへの台湾名での参加は否決された。メディアは、有権者の現実主義が発揮されたと論評。また中国がシャープパワーを行使して選挙に介入したとの報道もみられた。
朝鮮半島では、韓国と北朝鮮との間の関係改善が際立つなか、米朝関係は一向に進展せず韓国が苛立ちをみせている。メディアは、北朝鮮を交渉のテーブルにつかせた理由について米韓に見解の相違があるのが根本原因だと伝える。米国は最大の圧力をかけてきた結果とみるのに対し、韓国は北朝鮮に友好的姿勢で接近した成果とみていると指摘。こうした認識の違いが北朝鮮との今後の交渉の進め方について米韓の考え方に亀裂を生んでいると分析するが、米朝間に信頼関係が未だ構築できていないことが根底にあるとみられる。
東南アジア関係では、シンガポールで政治と経済の問題が同時に生起し、現政権・与党に課題を突きつけている。問題点として後継者問題、米中貿易戦争の余波、経済のさらなる先進化、所得格差拡大、アジア全域にわたって支配権を主張する中国の動き、経済の競争力維持の必要性などが挙げられている。経済対策として生産性向上、新アイデアを求めて創造的、開放的姿勢を強化する必要性が指摘され、後継者問題については、候補者の閣僚3人がいずれも不人気と報じられている。
インドでは、来年に総選挙を控えるモディ政権が金融政策の変更を求めて中央銀行である準備銀行に対して激しい圧力をかけている。このため中央銀行は、不良債権を抱える国有銀行に対して課していた融資制約や中小企業向け融資の見直し、また銀行に対するリスク・ベース自己資本比率の適用期限の1年間延長などを余儀なくされている。