2022年8月19日号

中国リスクに西側企業は目覚めるべきだとメディアが警告する。ペロシ米下院議長の訪台による台湾危機の発生で中国ビジネスにおいて安全保障への配慮が経済的なものにとって代わられ、「フレンド・ショアリング」が重要になったと指摘する。ただし、欧米企業を中国から全面的に「デカップリング」することはコストを押し上げ、西側諸国の経済を弱体化させて望ましくないと主張。西側企業に対して対中エクスポージャーのヘッジや緊急時対応計画(コンティンジェンシー・プラン)を策定するよう促し、いわば企業単位で解決策を見出すよう提言する。しかし、こうした方法だけで乗り切れる状況とは思われない。中国を抑止するにはある程度の経済的犠牲を払ってもデカップリングを推進する覚悟が必要ではないだろうか。

台湾へのペロシ米下院議長訪問に関してメディアは賛否両論を展開する。同時にこれを機に台湾防衛の強化や台湾に対する長年の米政策、特に戦略的曖昧さの再確認を求める声が改めて上がっている。また米中間意志疎通の重要性が指摘され、非軍事的解決策として米台間貿易協定の締結が提案されているのが注目される。

韓国の新政権は前政権が凍結していたTHAADの配備を再開するだけでなく、追加配備を検討している。これに対して中国は、前政権の基本的対中政策だった「3不(3つのノー)、すなわちTHAADを追加配備しない、米日ミサイル防衛(MD)に加わらない、韓米日協力を軍事同盟に発展させない政策」の順守を強く求めているが、尹大統領は既にTHAADについては実行に移している。加えて米主導の半導体サプライチェーン協議体への参加も決めている。半導体政策のみならず3不政策を含む尹新政権の対中政策の動向についても注視していく必要がある。

北朝鮮の核開発が急進展しているために米政府が対応に苦慮しているとメディアが報じる。背景に北朝鮮が射程数百マイルの標的に使用する「戦術核兵器」と呼ばれる小型核兵器の開発を進めていることがある。米政策は引き続き北朝鮮の核開発を終わらせることが目標だが、今や核使用の抑止に重点がシフトしていると伝える。また北朝鮮は長距離ミサイルや極超音速ミサイルといった米国の防衛態勢をかいくぐる技術の開発も進めており、これは米本土を射程に収める能力を確保することで韓国に対して戦術核兵器を使用できると考えている可能性があると報じる。米韓側の政策に手詰まり感が強まるなか、北朝鮮が韓国との紛争で戦術核兵器の使用を本気で検討している懸念が高まっている。

東南アジア諸国の経済はこれまで低インフレで推移してきたが、パンデミックによるサプライチェーンの寸断やロシアのウクライナ侵攻などのために昨年の2倍以上のインフレ率に見舞われている。特にフィリピン、シンガポール、タイなど、食料と燃料を輸入に大きく依存しているASEAN諸国の被害が大きい。この結果、世界銀行リポートによると東南アジアの貧困化が進んでいる。各国政府も対応に動き、最低賃金の引上げ、現金給付、燃料補助金、コモディティ輸出の禁止などの施策を打ち出しているが状況を注視していく必要がある。

インドが高成長の中で十分に雇用を創出できていないと批判されている。失業率はこの5年間で約5%から7、8%程度へと上昇し、労働参加率も6年前の46%から40%に低下している。被害を受けているのは女性と若者で、2022年までに女性の労働力参加率は9%に低下し、20?24歳の若者失業率が6月に40%台に達したとみられている。メディアは、豊かになる前に人口の老齢化が進むことへ警告を発し、教育・職業訓練制度の改革や学位を軽視する文化の変革の必要性を指摘。さらに大規模な雇用創出には製造業の強化が欠かせず、そのためにインフラ整備、お役所仕事の排除、投資家心理の回復が必要だと提言する。