米国教育の新潮流、CBEに学ぶ-型にはまった教育からの脱却
一昨年、オバマ大統領がCBEという新しい教育形態も連邦奨学金の対象にすると議会で発表、下院を通過し、米国ではCBEは教育の新しい潮流になっていると言います。
CBEとはCompetency Based Education(CBE)、教材、教室、単位、修学時間、修学年限、単位当たりの学費といった旧来の教育の枠組みを越えて、目標とするCompetency、すなわち、知識、能力、態度といった統合的目標に基づいて学習効果を評価、達成しようとする試みです。従って、学習者主体の教育の自由化を志向していると言われています。
旧来の言い方であれば読み、書き、そろばん。最近であれば問題解決型学習、アクティブラーニングにも関係が深い、言わば知識教育からの脱却と考えられるでしょう。また、英国、フィンランド、ベルギー等で5歳児から義務教育化されているプログラミング学習もその路線と言えるかもしれません。
しかし、まだ、この定義も必ずしも固まっていない様ですが、米国ではすでに40以上の大学がCBEを看板にこの教育モデルを宣言していると言います。
こうした自由度の高い高等教育の制度が米国で普及しつつある背景には
・MOOCs ( Massive Open Online Course )のような無料、且つ膨大な教材が解放されていること*MOOC: オンラインで公開された無料の講座群
・その背後にInstructional Designerのような教材制作のプロの出現していること
・旧来のキャンパススタイルの不自由な学習形態から、オンライン、そして、複合的なブレンディドラーニングが急激に増加したこと
・また、これらにより人々が様々な学習形式で学ぶようになったこと
等があると言います。
従って、そのCompetency Based Education には、
・教材より評価主体、評価重点
・資格認定試験との連携
・産学連携、キャリア重視の教育
・自由度が高い科目選択
・教えるというよりメンター的指導を重視
・先行学習評価を加味、すなわち実績を考慮
等の特色があると言います。
バベルの翻訳専門職大学院(USA)をこれらの先行指標でざっくり自己総括すれば、こんな感じでしょうか。
1.翻訳者に求められるCompetence(Competency)を明確にしているか=Yes
※別表参照(ITIはThe Institute of Translation & Interpreting 英国の翻訳協会)
2.カリキュラムはCompetenceに沿って組まれているか=Yes
3.評価の方法は単なる知識のAchievementではなくProficiencyを軸に行われているか=(Yes)
一般社団法人日本翻訳協会の各種資格試験(5段階評価)と連動、そして、資格認定を単位として認めている
4.産学連携、キャリアプランと直結しているか=Yes
大学院がバベルグループのビジネス翻訳事業、翻訳出版事業、版権仲介事業とのアライアンスからなっている、いわばCorporate Universityの体裁をもつProfessional Schoolである
5.科目の選択の自由度があるか=Yes
いずれの専攻においても他の専攻の科目を広く受講でき、且つ、翻訳出版ワークショップのようなプロジェクトに参画することも単位として認められている
6.メンター的な機能があるか=Yes
すべての院生に専任のカウンセラーがアサインされ、別にキャリアコンサルティング、ラーニングカウンセリング、ITカウンセリングといった制度を用意している
7.先行学習を評価しているか=Yes
過去の学習実績、過去の資格取得実績、過去の翻訳実績を単位として認定している
以上、Competency Based Educationという米国の先端教育の流れに沿ってBABEL UNIVERSITY Professional School of Translationを自己評価してみました。
もちろん、私自身、CBEを深く学び、総括したわけではないのですが、新しい教育の潮流を私なりに考える絶好に機会となりました。
MOOCsの積極的活用に始まり、様々な課題が浮き彫りにされましたが、これを皮切りに翻訳専門職大学院の教育を次のステージにとの気持ちを新たにした次第です。
以上
[box color=”lgreen”]
– 副学長から聞く - 翻訳専門職大学院で翻訳キャリアを創る方法
海外からも参加できるオンライン説明会
◆ 卒業生のキャリアカウンセリングを担当する副学長が、入学及び学習システムからカリキュラム、各種奨学金制度、修了生の活躍、修了後のフォローアップなどを総合的に説明いたします。
◆ 海外在住の方にも参加いただけるように、インターネットweb会議システムのZoomを使って行います。 奮ってご参加ください。Zoomのやさしい使い方ガイドはこちらからお送りします。
[button size=”large” color=”blue” style=”classic” url=”http://babel.edu/events/”] 説明会の日程や参加方法についてはこちら[/button]
[button size=”small” color=”blue” style=”classic” url=”http://babel.edu/events/”] 説明会の詳細はこちら[/button]
[/box]
[:en]
Last year, president Obama announced at Capital Hill that Competency Based Education (CBE), a new form of education, would be eligible for federal scholarships. Having passed through the House of Representatives, CBE is said to to be the new trend in U.S. education. CBE goes beyond the conventional education framework delineated by learning materials, classrooms, course credits, hours and terms of study, and credit fees. It is an attempt whose objective is based on the competency, an integration of knowledge, ability, and attitude, in evaluating and obtaining learning results.
CBE is intended to liberalize education for students going beyond the conventional learning methods of reading, writing, and arithmetic. CBE is also closely related to the recent problem solving and active learning methods, all of which are a form of breaking away from pure knowledge based education. For instance, such countries as England, Finland, and Belgium, require children to learn programming starting at the age of five. This kind of education runs along the same lines as CBE regarding objectives.
Although the definition for CBE is still being determined, 34 U.S. universities have declared that they are using this new education model.
The background behind this liberal system of higher education spreading throughout the U.S. is:
Massive Open Online Courses (MOOCs): Enormous amounts of free learning material which has been made available to the public.
Behind this is the emergence of instructional designers, who are professionals in creating learning materials.
The rapid increase in online and integrated blended learning rather than inconvenient conventional campus style learning.
People have begun learning in various styles due to the advancements listed above.
Competency Based Education includes the following characteristics:
1) Evaluation rather than learning materials; emphasis on evaluation.
2) Coordination with certification tests.
3) Cooperation between industries and the academic world; career-focused education.
4) High degree of freedom in choosing subjects.
5) Emphasis on mentoring approach to instruction rather than just “teaching”.
6) Prior learning assessments included; actual performance taken into consideration.
Since Babel Professional School of Translation (BUPST) is a professional school the basis of consideration differs to some degree, but the following is a brief self- summary based on the following viewpoints:
1) Does BUPST make clear the competencies that are demanded of translators? YES
*See attached table (the Institute of Translation and Interpreting (ITI) is a British translation association)
2) Are learning curriculums structured around these competencies? YES
3) Are evaluation methods centered around proficiency rather than mere intellectual achievement? YES
BUPST is associated with the Japan Translation Association’s various certification exams (five-step evaluation process). Course credits are given for certification.
4) Is learning at BUPST directly linked to cooperation between industry and academics, and to the career plans of students? YES
BUPST is made up of alliances with Babel Group’s business and publication translation businesses, copyright agents, and staffing agencies, making it a truly corporate university.
5) Is there a degree of freedom in selecting subjects? YES
No matter what major students choose, they can take courses in other majors, and can earn course credit by participating in projects such as translation publication workshops.
6) Do programs have a mentor-style approach? YES
All students are assigned to a full-time counselor. Career consulting, learning counseling, and IT counseling are also available.
7) Is prior learning evaluated? YES
Credits are given for prior studies, certifications, and translation work.
The points above summarizes how BUPST is in step with competency based education, the new trend in advanced education in the US.
While I have not studied about CBE in depth and do not provide a full summary here, learning about CBE has been a great opportunity for me to consider new trends in education.
I have brought up various issues beginning with the proactive use of MOOCs and other new advancements in hopes of renewing our thinking in taking professional schools of translation to the next level.
[:]]]>]]>
ISO17100の背景
Translation Services ― Requirements for translation services. これがISO17100の英語タイトルです。これまでの検討の流れの中に、ヨーロッパ規格EN15038としての出発がありました。
10年以上もの一昔もふた昔も以前、筆者がまだアメリカでローカライズ翻訳に携わっていた頃、American Translator’s Associationで話題に上りかけていました。EN15038はヨーロッパ規格であるゆえ、さらに汎用的に適用可能領域を広げる目的で、翻訳プロジェクト規格であるISO/TS 11669 Translation projects ― general guidanceが作られ、その内容を取り込んだ形で今回のISO17100に進化しています。
この発展史を踏まえれば想像がつくように、各テーマで独立した規格を作ろうとしているのではなく、関連された形で内容を発展させ、かつ包括的に翻訳プロセスを記述しようとの努力の跡が見てとれます。この記事でISO17100の全容をお伝えするのは難しいので、要点をまとめた上で、日本の翻訳市場から見た課題をあげていくことにしましょう。
標準化とは
標準化とは一言で述べると、業務実体とプロセスの定義(明文化)です。中でも、業務プロセスの定義は標準化の真骨頂です。翻訳の作業は情報技術とは異なりますが、そのプロセスを定義する上で情報技術で参考にしている考え方がある程度役に立ちます。それは、情報技術の全容をインプット、プロセス、アウトプットの3分類する方法です。では引き続き、インプット、プロセス、アウトプットに従って翻訳作業を分けてみましょう。
インプットとしてあげられるのは、起点言語で記述された原文のほか、参考資料としての辞書などです。アウトプットには、目標言語に移し替えられた作品や、作業の結果できあがったデータベースなどがあげられます。インプット、アウトプットに比べ、プロセスはさらなる区分が必要となり、「誰が、いつ、どこで、何を、どのように」という5W1Hの記述が可能となります。
「誰が」としてISO17100では、個人としての翻訳者、リバイザー、レビューアーなどをあげ、
団体では翻訳会社などがここにあげられます。もちろん、ISO17100では翻訳会社が主なターゲットになっていることは確かです。「誰が」を考察するにあたって、ここでは各役割に求められる資質が定義されています。翻訳者になることができる要件として、日本をはじめとする国の翻訳市場には適さないものがあげられ、適用上の問題点が指摘されていますが、これについては後述します。
「いつ」は、ISO17100の最後部に一連の作業をフロー化して掲載しています。「どこで」に相当するのが、前述した役割をフロー上に載せることです。具体的な場所ではなく、役割の責任を明確化することと解釈することができます。
「何を」はプロセスの主要項目でしょう。翻訳の本来の意味での「何を」に関してまでは記述していないのがISOです。なぜなら、翻訳者の頭の中でどのような作業をおこなっているかに関してまでは関心を払わずとも、翻訳プロセスを記述することができ、むしろ、標準化にあたっては、
翻訳者が最大の関心をはらっている、「どのように翻訳するか」の問題はISO17100の範疇ではないからです。
ここまでくると、標準化の域から、研究の世界でも、認知科学や脳科学の域へ突入せざるを得ません。翻訳者の頭の中を標準化することは、まだまだ時間がかかり、さらに言えば、翻訳者がどのように訳を考えつくかの標準化は、現時点で、バベルユニバーシティの専売特許である
『翻訳英文法』を除いて存在しないでしょう。
http://www.babel-edu.jp/online_lan.html
「どのように」の核となる翻訳者がどのように訳に行き着くかの疑問に対しては、標準化の範疇には入っていないので、それ以外の、どのように、のプロセスについての標準化がなされています。
日本の翻訳市場にとってのISO17100
翻訳作業を標準化しようとする際、筆者の経験から言えば、翻訳生産性、翻訳の質、翻訳者の資格の3つが問題となります。
翻訳生産性については、アジア言語が圧倒的に弱い立場に立たされます。言語的骨格を共有する言語同士(たとえば、ゲルマン語)の翻訳に比べて、日本語を起点、目標言語にしたゲルマン語との翻訳では、圧倒的に翻訳生産性が低下します。ダブルバイト言語と呼ばれるアジア言語は、プロセス全体を見るだけで余計な手間が入るため3分の2程度に生産性が落ち込むと言っても過言ではありません。翻訳作業を生産性の観点から標準化するのはとても困難です。
翻訳の質はどうでしょうか。日本に独特の表現や概念が存在する現実を見てみると、相当する概念がない言語文化への訳ですから、質を論じるまでには至りつかない極端なケースもありえます。反対に、ゲルマン語同士の翻訳ではliteral translation(いわゆる直訳)が可能になり、多少不自然でもいいから、文字通りに訳すことができます。日本語がからんだときにこれをやると、あまりにも不自然すぎて訳文が読めたものではない、とのクレームがついてしまうのです。質の問題は生産性と密接に関連しており、生産性を度外視できずに、しかたなく質を下げてまでも仕事をやり終えなければならないことすらあります。
翻訳者の資質については、検討段階ですでに指摘されている通り、日本の翻訳市場にそぐわない標準化が列挙されています。日本の大学・大学院には翻訳の学位を出すところはありません。(バベルユニバーシティは米国の大学院)たとえ出したとしても関連学位で、残念ながら教育内容も理論に偏る傾向にあります。翻訳作業について国家が資格認定する試験もありません。
ただし、翻訳者の資質については、日本に同様の慣習がなかったという理由だけで、いつまでも日本が世界に甘んじているわけにはいかないでしょう。私が理事を務めている日本翻訳協会
においても、翻訳の様々な分野、コンピテンスの試験を実施してますが、翻訳団体は、TOEICなどの英語検定試験に頼るだけではなく、翻訳業に特化した資格試験を開発・運営していく必要もあるでしょう。
http://www.jta-net.or.jp/index.html
また、翻訳者に将来なりたい方々は翻訳の理論だけではなく、実践にも即した翻訳修士号の取得が強く求められます。後者において、日本の翻訳市場にもっとも近い実践の形で、しかも、
翻訳に関連した理論をも教育に取り込み、さらに、アメリカの認定団体であるDEAC ( The Distance Education Accrediting Commission )にこれまで3度の認定を受けてきた実績を伴い、翻訳修士号を提供しているのはBabel University Professional School of Translationをおいて他にありません。
http://www.deac.org/
[box color=”lgreen”]
– 副学長から聞く - 翻訳専門職大学院で翻訳キャリアを創る方法
海外からも参加できるオンライン説明会
◆ 卒業生のキャリアカウンセリングを担当する副学長が、入学及び学習システムからカリキュラム、各種奨学金制度、修了生の活躍、修了後のフォローアップなどを総合的に説明いたします。
◆ 海外在住の方にも参加いただけるように、インターネットweb会議システムのZoomを使って行います。 奮ってご参加ください。Zoomのやさしい使い方ガイドはこちらからお送りします。
[button size=”large” color=”blue” style=”classic” url=”http://babel.edu/events/”] 説明会の日程や参加方法についてはこちら[/button]
[button size=”small” color=”blue” style=”classic” url=”http://babel.edu/events/”] 説明会の詳細はこちら[/button]
[/box]
[:]]]>