第3回 トラブルの回避とトラブルが発生した場合
ハクセヴェルひろ子
大学卒業後、商社と金融機関勤務を経て、1992年トルコに移住。
2005年バベル翻訳大学院修了。翻訳修士。
2008年Proz.com Certified PRO認定。現在フリーランスで翻訳業に従事。
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GLOCALISMの潮流にみる翻訳の意義
GLOCALISMの潮流にみる翻訳の意義
Brexit(Britain+Exit), 英国の国民投票によるEU離脱の衝撃は、日本、そして世界の経済、政治に大きな影響を与えつつあることはご承知かと思います。
円高、ドル高、株安、貿易の縮小、難民の無制限な移動の制限と世界はある方向急展開しつつあることを実感させます。
EUは解体に向けて歩む?のかもしれません。実際、オランダ、イタリア、オーストリア、フランス、デンマーク、スウェーデンももしかしたら、という状況のようです。
では、このBrexit以降、世界はどんな方向へ急展開しているのでしょうか。
それは、
GlobalismからNeo-nationalism (Localism)へ
国境を無くし、人の交流を自由化し、市場を開放する方向から、難民の無制限な移動の制限をし、国家を取り戻す方向へ
ElitismからPopulismへ
国際金融資本家に代表されるエリート主導から大衆主導の時代へ
ここに、ヒラリーVSトランプの構図も見え隠れしています。
翻って、翻訳を考えてみましょう。英語至上主義、日本でも喧しく企業内の英語公用語化の話題がマスコミを賑わせていますが、これこそグローバリスト、国際金融資本家の思う壺。
最近では日本の東大がアジア地域での大学ランキングが昨年までの第一位から七位に転落とマスコミでは自虐的論調が聴かれますが、おそらくその理由は、授業が英語で行われている割合が少ない、執筆される英語論文の割合が少ないなどが問題にされているように思います。
しかし、考えてみてください。英語圏以外で先進の学問を日本語、自国言語で学べる国は日本以外ではあるでしょうか。また、世界中の古典が読める稀有な国日本。
今まさに、大きな潮流は、ローカル、それもグローカル、開かれたローカリズムの時代に突入しつつあるように見えます。
ここにこそ翻訳の意義があります。個々の自立した文化をお互いに尊重し、そのうえで翻訳による相互交流を行う、そんな翻訳的価値が見直されています。
皆さんは‘遠読’( Distance reading )ということばをご存知でしょうか。Close Reading、精読に対して言われる用語です。これまで世界文学を語るときは常に原典主義をとってきたわけで、自ずと英語をはじめとする主要言語で世界文学が語られてきたわけです。しかし、世界文学を語るときにマイナー言語の国の文学も視野に入れるべき時代で、その際採用されるのが‘遠読’??なのです。つまり翻訳で読むわけです。
米国では今、多言語の翻訳出版の会社が続々と起業され、イギリスも英連邦の本のみを対象にしていたブッカ―賞をゆくゆくは、翻訳文学も対象にすることを考えていると言います。マイナー言語のプレゼンスが高まってきたと言えそうです。更に面白いのは、自分の作品が英語に訳されることを想定して書く作家も出てきているということです。
ことほど左様に、世界は個々の自立を前提にそのコミュニケーションの方法論として‘翻訳’を求めています。グローバリストの脅し、誘惑に左右されずに、これからの世界における翻訳の意義を堂々と主張しましょう。
お互いの文化を尊重し翻訳を通じてハーモナイゼーションを計る、素晴らしい時代の到来です。
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グローバルに起業するノウハウ 第2回
第2回 グローバル翻訳市場へのアプローチの仕方
読者の方から質問がありましたので、最初にお断りしておきますが、この記事での「起業」とは、翻訳会社(法人)を設立して経営するという意味ではなく、「フリーランスの翻訳者」としてお金を稼いでいくにはどうしたらよいのか、というレベルの話しです。その場合でも、国によっては、労働許可の取得などさまざまな問題をクリアしなければならないかもしれませんが、この記事では取り扱いませんので、滞在国の制度をご自分で調べてください。また、海外で将来翻訳会社を経営してみたいという方も、国によって要件が異なりますので、商工会議所などで情報を調べてください。 英日・日英の案件が多い国 前回の記事でも説明しましたが、インターネット上で取引できる翻訳会社は世界中のほとんどの国に存在します。その中で、英日・日英の翻訳案件を多く扱っている国は、まず英語圏の国かつ日本企業が多く進出している国・地域(米国、カナダ、英国、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、香港、インドなど)、次に非英語圏でも日本企業の活動が活発な地域(西ヨーロッパ、東南アジア、中国など)が挙げられます。最近は、東アジア、EU圏の東欧諸国、南米、ロシア、イスラエルといった国でも英日・日英の翻訳需要が高まっています。 ここで気をつけなければならないのは、仕事をした後確実に翻訳代金が回収できるかということです。たとえば、現在EU圏、南米などの国で金融危機が叫ばれていますが、そのような国の翻訳会社と取引しても、国家レベルで外貨の持ち出しが制限されてしまうと翻訳代金の回収が遅れたり、最悪の場合は払ってもらえないことがありますのでご注意ください。では、経済が急速に発展している新興国や発展途上国ではどうかというと、やはり外貨が不足している国では外貨での取引が制限されることがありますので、最初からあまり大きな案件を引き受けないほうが良いでしょう。 グローバル翻訳市場にアプローチするには それでは、グローバル翻訳市場にアプローチするにはどうしたらよいでしょうか。 1. 前回も説明しましたが、有利に取引を進めるには、翻訳関連の資格、特に翻訳の学位や修士号を取得することです。その理由は、海外の翻訳会社では、プロジェクトマネージャーが納品された翻訳文(たとえば、英日翻訳の場合は日本語の翻訳)を読んで品質を判定できないので、翻訳能力を判定する最も確実な方法は、翻訳を正式に勉強した翻訳者を採用することです。また、前回も申し上げましたが、翻訳業界のISOの認定資格であるISO17100:2015では、翻訳の学位や修士号を取得が翻訳者の資格として認められており、世界全体でみても日本語翻訳の学位や修士号の保有者はそれほど多くないので、優位な立場に立つことができます。 2. 特に、英国(英国翻訳通訳協会: The Institute of Translation & Interpreting(ITI))、米国(米国翻訳者協会:American Translators Association (ATA))、オーストラリア(オーストラリア国家認定資格: National Accreditation Authority For Translators and Interpreters: NAATI)の試験に合格すると、それぞれの国で翻訳者としての評価が高まります。それぞれの国の翻訳資格については、日本翻訳協会http://www.jta-net.or.jp/index.html のウェブサイトで「世界の翻訳資格」を参照してください。 3. インターネット上では、フリーランスが仕事を得るために登録するサイトが多数ありますが、特に、翻訳・通訳関連では Proz.com http://www.proz.com/ やTranslatorsCafe.com https://www.translatorscafe.com/cafe/default.asp はプロの翻訳者の登竜門として有名です。どちらも無料で登録可能です。両サイトでは仕事の紹介を行っていますが、翻訳者としての資格や能力を詳細に登録しておけば、翻訳会社からスカウトされることがあります。Proz.comでは、有料登録制度やCertifiedProという認定制度があり、有料登録や認定を受けると、無料会員よりスカウトされる確率が高くなります。 4. たとえば、居住国に日本との取引が多い企業や日系企業が進出している場合は、必ず翻訳案件が発生しますので、企業に務めている知り合いに翻訳者であることを売り込んだり、現地企業に直接売り込むという方法が考えられます。ここで注意してほしいのは、ターゲットを絞らずに知り合い、近所の人、親戚など誰にでも口コミで翻訳者であることを宣伝すると、簡単なメールや手紙などプロ向けではない案件を無料、あるいは非常に安い料金で引き受けるはめになってしまいがちです。 グローバル翻訳市場におけるリスク 翻訳者にとっての最大のリスクは、「仕事の報酬が支払われない」ことです。これは、国内外を問わず同じです。万が一翻訳料金が支払われない場合、日本の翻訳会社には少額訴訟を直接起こすことができますが、翻訳会社が海外にある場合は、債権回収のために弁護士や費用回収会社に依頼すると、莫大な手数料がかかります。そこで、未払いリスクを避けるには、原則として政情が不安定な国や金融危機が発生している国にある翻訳会社と取引をしないようにします。こうした国にある翻訳会社は、単価が通常より高い、支払いまでの期間が短いなど、最初に翻訳者にとって非常に都合の良い条件を提示することがありますが、そうした条件に惑わされないようにしてください。 グローバル翻訳市場におけるメリットとデメリット 海外のさまざまな地域(アジア、ヨーロッパ、北米)に取引先を分散させておけば、ある地域で景気が悪くなってその地域にある翻訳会社から仕事が途切れても、他の地域にある翻訳会社からは仕事の依頼が続くので、年間を通して仕事が平均的に発注されるというメリットがあります。 デメリットは、上記の3地域では時差が大きいため、3地域の翻訳会社に完璧に対応するには、それこそ寝る暇もありません。そこで、取引の多い翻訳会社を2地域に絞り、他の1地域の翻訳会社からは暇なときに仕事を受けるようにします。 (WEB雑誌 The Professional Translator 155号より) http://e-trans.d2.r-cms.jp/ また、8月30日(火)18:00~(日本時間)、このテーマに関して、日本翻訳協会主催でセミナーを実施する予定です。ZOOMで世界中から参加できます。 沢山の方の参加をお待ちしています。 [box color=lgrey]
グローバルに起業するノウハウ 第1回
第1回 グローバル翻訳市場と日本の翻訳市場の違い
グローバル翻訳市場で活躍するには、まずグローバル市場の成り立ちや、日本の翻訳市場との違いを把握することが重要です。 翻訳会社の変遷 インターネット上に翻訳市場が出現したのは、商用インターネットが実用化された1990年代半ば以降のことですから、せいぜい20年程の歴史しかありません。それが今では、世界のほとんどの国で、規模の大小を問わずインターネットを駆使して営業する翻訳会社が存在します。 翻訳会社の中には、バベルのように、インターネットが実用化される前から翻訳会社として事業を展開し、インターネットの実用化に合わせてオンライン向けに事業を編成し直した翻訳会社もありますが、残念ながら時代の流れについていけずに消えていった翻訳会社もあります。 代わって台頭してきたのが、インターネット実用化後に設立された翻訳会社です。地元で発生する翻訳案件を扱う小規模な会社から、大企業を中心に、企業や公共事業体の案件を扱う会社などさまざまな形態がありますが、海外の大半の翻訳会社では多言語を取り扱っています。なかでも、マルチランゲージベンダー(MLV) と呼ばれる、全世界に支店を持ち、多言語の翻訳を扱っている大手翻訳会社は、「ワンストップソリューション」を目指して、さまざまな分野に事業を拡大しています。日本に支店を構えている大手MLVも何社かあります。 翻訳業務には、多言語への翻訳だけではなく、デスクトップパブリッシング(DTP)、ソフトウェア、ウェブサイト、Eラーニングモジュール、動画、ゲームや漫画のローカライズや製作など多岐にわたりますが、MLVはこうした業務を自社でまとめて行う「ワンストップソリューション」をクライアントに提供しています。また、最近では、法律、ゲームや漫画、特許などに特化した多言語翻訳会社も出現しています。 海外の翻訳会社と日本の翻訳会社の違い 取り扱い言語 海外の大半の翻訳会社は多言語を扱い、ひとつの案件を複数の言語に翻訳するプロジェクトに対応しています。これは、大部分の案件が文書の作成元から発注されること、英語圏以外の翻訳会社でも、プロジェクトマネージャーがほぼ全員英語でコミュニケーションをとれるため、全世界から翻訳者を募集できることにより可能となります。 一方、日本の翻訳会社が取り扱う案件の大半は、クライアントが第三者の企業や機関から入手した外国語(主に英語)の文書を翻訳します。また、ほとんどの案件は外国(英語)から日本語への単一方向の翻訳です。日本でも多言語を扱っている翻訳会社はありますが、日本の翻訳会社は日本で銀行口座を保有していることを条件に翻訳者を募集するため、日本に居住している、または過去に居住していた人しか翻訳者として応募できないことから、人材が限られてしまいます。また、英語でコミュニケーションを取れないコーディネーターも多いため、海外の翻訳会社のように多言語のプロジェクトを実施するのは困難な状況です。 翻訳に必要な技術 元々はソフトウェアのローカライズから発展してきたMLVをはじめ、グローバル翻訳市場の大手の翻訳会社は、最新技術を採り入れることに抵抗がありません。PDFを利用した紙原稿の添付ファイルへ変換、CATツールの採用などは、かなり初期の段階から実現していました。また、翻訳者の登録システム、案件の原稿の受け渡しシステム(エクストラネット)、Invoice作成システムなど、翻訳会社自身や翻訳者の作業負担を軽減するシステム、Skypeなどソーシャルネットワーキング(SNS)によるコミュニケーションも積極的に採り入れています。 日本の翻訳会社は、私の印象では翻訳に必要な技術面の整備が海外の翻訳会社と較べて非常に遅いと思います。たとえば、上記で紹介したPDFの技術を海外の翻訳会社が採り入れ始めた15年程前に、日本の翻訳会社はまだファックスで翻訳原稿を送信していました。全社的なCATツールの採用や、翻訳者専用のシステムの構築を積極的に行って、翻訳業務の効率化を図っている翻訳会社もあまり多くありません。 翻訳者の資格 海外の翻訳会社では、まず書類 (CV) 審査で翻訳者の実力を判定しますので、翻訳経験も重要ですが、翻訳関連の学部や大学院を卒業していると非常に有利になります。実力のある翻訳会社は、昨年4月に発行されたISO17100:2015認証を取得するために、翻訳者の条件として認められている翻訳関連の学位・修士の保有者を必要としています。 日本の翻訳会社は、日本に翻訳学部がある大学が存在しないせいもあり、体系的な翻訳の学習が重んじられていないような印象を受けます。翻訳者の採用条件も、どちらかと言えば翻訳に関連のない専門学部を卒業し専門知識を有していること、長年の翻訳者としての経験に頼っているようなところがあります。 翻訳会社と翻訳者の関係 取引を始める前に翻訳会社と締結する契約書(たいていの場合は、「秘密保持契約」)では、翻訳者をContractor(請負業者)と表現していますが、実際に取引を始めると、プロジェクトマネージャーは翻訳者を対等に扱ってくれます。翻訳者として常識的に振舞っている限り(納期を守る、指示を守る、高品質の翻訳物を提出するなど)、都合が悪くて案件を断わり続けたり、数週間休みを取っても、仕事が途切れるということはありません。また、信頼関係が築かれると、翻訳会社のパートナーとして、トライアルの採点を任されたり、大型案件の進め方について相談を受けたりすることもあります。 日本の翻訳会社では、翻訳者はあくまでも「仕事をいただく立場」のような印象があり、仕事を断り続けたり、長い休みをとると仕事が来なくなったりすることがあるようです。実際、5月に日本に帰国した折に、「そんなに長い間(実際は3週間)休んで、仕事が来なくなるのではないか」と多くの方から心配していただきましたが、トルコに帰国後も通常通り案件を発注しています。日本では翻訳会社にそれほど忠誠を示さないと仕事をもらえないのか、と逆にこちらが驚いた次第です。 [box color=lblue] ******** <質問> グローバル翻訳市場で必要とされるスキルは何ですか。 <回答> グローバル翻訳市場では、英語圏、非英語圏の国を問わず、英語がコミュニケーションの標準語となりますので、英語によるコミュニケーション(電子メールの読み書きは必須、できれば電話、Skype、TV会議でのコミュニケーション能力)が必須です。また、翻訳会社で使用しているCATツールに習熟していること、翻訳会社が開発した案件処理システム(ファイルのダウンロードとアップロード、Invoiceの作成など)を抵抗なく使える能力も必要です。 ******** [/box] ※ 今回ご質問をお寄せいただいた皆様へ ※ 今回の特集に関連して、沢山のご質問をお寄せいただきありがとうございました。記事の中でお答えする予定でおりましたが、 内容が多岐にわたり全部の質問には回答できないかもしれませんので、残りは連載最終回にまとめて回答したいと思います。 また、7月26日(火)18:00~(日本時間)、このテーマに関して、日本翻訳協会主催でセミナーを実施する予定です。ZOOMで世界中から参加できます。 沢山の方の参加をお待ちしています。 [box color=lgrey]
これからの翻訳プロフェショナルとは
『 BABEL GROUPのミッション 翻訳プロフェッショナリズム の構築― 40年目の私の中間総括2014 』と題して、これまで翻訳界に対する課題提起を以下のようにしました。
- 翻訳業のプロフェッショナリズムは確立しているか。
- 翻訳の品質を保証する翻訳者、翻訳会社の生産能力の標準化はできているか。
- 翻訳者の資格は社会に定着しているか。翻訳会社の適格認証制度は構築可能か。
- 翻訳、翻訳専門職養成の大学、大学院は存在しているか。
- 翻訳専門職のための高等教育機関のプロフェッショナル・アクレディテーションは実現しているか。
- 翻訳教育においての翻訳教師養成の必要性を認識しているか。
– 副学長から聞く - 翻訳専門職大学院で翻訳キャリアを創る方法

翻訳のアマチュアリズムを極める
本誌、前々号でバベルグループの使命に関して「翻訳のプロフェショナリズムの確立」 と言ったそばから、なぜアマチュアリズム?とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。 別に、ボランティア翻訳を推進しようと言うわけではありません。 これを別の言い方をすれば、「教育的翻訳を極める」と言っていただいても構いません。 教育的翻訳というと馴染みがないと思いますが。 教育的ディベート(Academic Debate)をご存知でしょうか。バベルでも90年代に約10年間、米国のディベートチャンピオンとコーチ(教授)を日本に招請して、日本全国の教育的興行を全面的に後援しておりました。日本語と英語でディベートを行い、ディベートの効用を謳ってきました。当時は松本茂先生(バベルプレスで「英語ディベート実践マニュアル」刊行、現立教大学経営学部国際経営学科教授、米国ディベートコーチ資格ホールダー)、故中津燎子先生(書籍「なんで英語やるの?」で大宅壮一ノンフィクション賞受賞)にお力添えをいただいておりました。 話が横道に逸れてしまいましたが、教育的ディベートとは、論理構成力を涵養する教育の 一環としてディベートの手法を活用しようという考え方でした。 ここで私が言う、「教育的翻訳とは」大学生以上の成人層を対象とするものと小中学生等を対象にするものとを考えているのですが、プロ翻訳家の養成という意図はありません。 ここでは説明をわかりやすくするために、後者の例をお伝えします。 バベルグループの歴史が40年となることはこれまでにお伝えしました。その間、翻訳に関しても様々な実験的な試みをしてきました。私が前職(JTB外人旅行部)からバベルに転職したときのバベルの面接官が、当時教育部長をされていた故長崎玄弥先生でした。長崎先生は海外に行くこともなく、英語を自由に操る天才的な方でした。当時は奇跡の英語シリーズで100万部を越えるロングセラーを執筆されておりました。 その面談は急に英語での面談に切り替わって慌てた覚えがあります。 その長崎先生と翻訳に関するある実験的な企画をしました。 当時、中学の1,2年生を7,8人募集して、中学生に翻訳(英文解釈、訳読ではない)の授業をするという試みでした。週に2,3回、夕方を利用して、かれらに英米文学(ラダーエディション)の翻訳をさせたのです。詳細は置くとして、それから約1年後は、なんと彼らの英語、国語、社会の成績が1,2ランク上がったのです。英語の成績が上がるのはもっともとしても、社会、国語の成績が上がった時は、翻訳という教育の潜在力を実感したものです。あれから20余年、懸案を実現するに、時が熟して来たと感じています。 現在の英語教育では、文法訳読形式が否定され、コミュ二カティブな英語教育が推進されるなか、実効性が上がらないのを目の当たりにして、明治時代以前の教育にも見られる「教育的翻訳」の必要性をうすうす感じているのは私だけではないのかと思います。 また、余談を言わせて頂ければ、コミュ二カティブな英語を涵養する優れた教育方法は 「教育的通訳」とバベルでの企業人向け教育の経験で実感してきました。 これはのちに上智大学の渡辺昇一先生(現上智大学名誉教授、書籍「知的生活の方法」で一世を風靡)が、その実効性に関する大部のレポートを発表されておりました。 話が横道に逸れてしまいましたが、この「教育的翻訳の普及」が、言語教育、異文化理解、異文化対応、感性の涵養等、小中高等教育のみならず成人教育、更には日本の世界における新たな役割認識に新しい地平を拓くものと信じています。 詳細は、次号以降でお伝えします。
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海外からも参加できるオンライン説明会
◆ 卒業生のキャリアカウンセリングを担当する副学長が、入学及び学習システムからカリキュラム、各種奨学金制度、修了生の活躍、修了後のフォローアップなどを総合的に説明いたします。
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「学問のすすめ」、ならぬ、「翻訳のすすめ」
「学問のすすめ」
天は人の上に人を造らず、人の下に人をつくらず
人は生まれながら平等であると言われているが、
現実には大きな差がある。それはなぜであろうか。
その理由は、学んだか学ばなかったかによるものである。
学問を身につけ、自分の役割を果たし独立すべき。
自由とわがままは異なる。学問とはその分限を知ることである。
自分の行いを正し、学問を志し、知識を広め、各自の立場に応じて才能と人格を磨き、
外国と対等に付き合い、日本の独立と平和を守ることが急務である。
福澤諭吉の「学問のすすめ」は、明治維新の5年後、1872~76年に書かれています。人口が3500万人の当時、340万部も売れた驚異のベストセラー、今日で言えば、日本の人口が1億2千万人であるとすると、なんと1200万部ということになります。
当時の日本は明治維新を経て、言わば強制的に鎖国を解かれ、本格的なグローバル社会へ突入した、まさに激動期、社会、国家革命を目前にした時です。
この本は、まさに新しい時代を拓く指南書として多くの日本人が貪り読んだ本でした。
従って、「学問のすすめ」は単なる個人の能力至上主義を唱えたものではなく、個人の社会的あり方、役割を説いたもので、個人が自立するなかで国家自体の繁栄が成し遂げられる事を説いています。
今という時代の課題を考えると、当時、日本が直面していた難題と不思議と符合すると言われます。
- グローバル化の波が押し寄せ、右往左往する主体性を欠く日本
- 近隣諸国が謂れなき侵略意図をほのめかし、
- 国は長期の財政赤字で破綻寸前
- 政府は企業優先、庶民を顧みない
- 社会制度の崩壊、遅々として進まない構造改革
今こそ、次の時代への明確な展望を持つべきときに来ていると思います。
国に依存せずに、個々が自らできることを自覚するときにあると考えます。 そんな時代に福澤諭吉が唱えたのが `実学のすすめ’ 、 ここで私は、時代意識を転換する新しい視点として、優れて実践的な学であるべき翻訳、
日本の世界における新たな役割を示唆するテーマ「翻訳のすすめ」を今こそ皆さんとともに提案、考えていきたいと考えます。 嘗て、バベル翻訳大学院教授の井上健先生(比較文学会会長、日本大学教授)は本誌でこう書かれています。
「このような、日本近代において翻訳文学研究の果たした決定的役割でもってして、すべてを語り尽くせるわけではもちろんないが、翻訳文学研究が翻訳研究を主導してきたこれまでの歴史についての知見を欠いた翻訳論や翻訳理論が、薄っぺらな、実効性に乏しいものにしかならないことは、まず間違いないところである。 以上を踏まえた上で、声を大にして申し上げておきたい。翻訳者は、1950年代から60年代にかけて、ヤコブソンやナイダによって提起された「等価性」(equivalence)の議論に、今一度、立ち戻ってみるべきであると。 70年代以降の翻訳学(translation studies)の発展が開拓してきた領土を軽視するわけではもちろんない。70年代から80年代にかけて、翻訳学がそのシステム論的、文化論的視点から、翻訳作品が一国の文化を書き換える可能性、逆に一国の文化のシステムが、移入された翻訳作品を書き換えて受容する可能性を、社会文化的規模で追求し、指摘してきたことはきわめて重要である。」 さて、ここからはみなさんの出番です。 翻訳を通じて、どう世界を変えるか、様々な視点でお考えください。今は、福澤が生きた時代と違い、西欧との圧倒的文明差がない時代です。そんな時代を変える、日本の世界における役割を変える新しい実践的な翻訳観を皆さんと共有していきたいと思います。 このテーマ『 翻訳のすすめ 』は、特集として、少なくとも3ヶ月間は継続し皆さんと考えていきたいと思います。 考えるにあたって、参考に2つの原稿を再び紹介いたしましょう。 ひとつは石田佳治先生(バベル翻訳大学院ディーン)の本誌に寄せていただきました
原稿「翻訳者の役割を考える」です。 ⇒
「翻訳者の役割を考える」
役割とは割り当てられた役目、期待されあるいは現に遂行している役目あるいは貢献ということです。政治家の役割、経営者の役割、教師の役割というように、それぞれの職業なり地位なりについてそれぞれの役割があります。
翻訳者の役割とは何でしょうか。翻訳者の社会的役割、顧客に対する役割、将来的な役割について考えてみましょう。
1. 翻訳者の社会における役割
我が国の歴史における著名な翻訳者であった人達、経典を翻訳した空海、江戸期に解体新書を翻訳した杉田玄白、幕末期に西洋兵学を翻訳した高島秋帆、大鳥圭介、大村益次郎ら、明治期にフランスやドイツの民法典やその他の法律を翻訳した蓑作麟祥、西周、穂積陳重らの業績を考えれば、翻訳者の社会に対する役割がわかります。 社会は自ら文明を発展させ文化を伝播あるいは受容するものですが、翻訳者はこれら文明の発展、文化の伝播の重要な担い手です。他の国の文化や文明は翻訳者なしでは伝わってきません。翻訳者があってこそ、自国と異なった文明や文化をその社会の人達が理解し、それを取り入れ受容するのです。翻訳者はまた自国の文化や文明を他国の人達に伝える役割をもっています。異質の社会が翻訳者の仲介によって触れ合い相互に影響を与え、或いは影響を受けながら発展していくものなのです。
2. 出版翻訳における翻訳者の役割
明治時代の小説出版業界において翻訳者が果たした役割は、二葉亭四迷、坪内逍遥、黒岩涙香などの翻訳文学者の業績を考えてみれば分かります。明治から大正にかけての時代、日本人の書き言葉、話し言葉は大きく変わりましたが、これは西洋文学を精力的に日本語に訳した翻訳者たちの貢献によるものです。現在でも出版点数の1割を翻訳出版が占めていますが、新しい風潮の紹介はまず翻訳から始まります。読者は身の回りにない海外の風物や外国の人の生き方考え方を翻訳小説というエンターテインメントを通じて知るわけですが、この面における翻訳者の影響力は非常に大きいものがあります。 3. 産業翻訳における翻訳者の役割
グローバリゼーションが一般化していなかった戦前の大正、昭和の初期にも産業翻訳者は居ました。三井物産、日本郵船、横浜正金銀行などの海外貿易従事企業には翻訳者が居て信用状や船荷証券や貿易契約書を訳していました。現在の日本の貿易取引の基本はこの時期に作られたのです。戦前の東京高商(現在の一橋大学)や神戸高商(現在の神戸大学)の授業はこれらの文書を使って教えられていました。戦後のアメリカ軍占領期には大量の日本人翻訳者が雇われ法令その他政治に関する文書を翻訳しました。その後の日本の成長期における技術説明書、取扱説明書、契約書なだの翻訳需要が急成長し、産業翻訳者の数が激増したことはご存知の通りです。今では産業翻訳者は日本の産業界に欠かすことのできない重要な存在になっています。
4. 今後の翻訳者の役割
産業翻訳に関しては、日本の産業は今後も世界経済における重要なプレーヤーの地位を保ち続けるでしょうから、相変わらずの需要が継続するでしょう。産業翻訳者は引き続き重要な役割を果たし続けるでしょう。なかでもIT、バイオ、特許、金融などの分野の産業翻訳者の需要は高いでしょう。 出版翻訳に関しては、今後重要な役割を果たして行くと思われるのは日英翻訳者です。日本文化の発信が重要課題となってきますし、外国の側からも日本のマンガや歴史小説などに対する関心と需要は益々高くなっていくものと思われます。
5. 教育における翻訳者の役割
現在は、翻訳は大学を卒業した社会人が行うものであり読むものとなっていますが、今後は、まずは大学生、そして高校生中学生とバイリンガル(日本語英語併用)になっていくものと思われます。そのような社会になったときに教育の分野で日英両語による教科書やサブテキストの需要が生れてくるでしょう。そうなった時には、翻訳者は教育において重要な役割を果たす存在になるでしょう。複数言語を普通に使っているスイス人やベネルックス3国のような社会に、日本はなるのです。翻訳者は自らの役割について、そのような時期のことも考えておくべきでしょう。
(石田原稿は以上) 次に、前々号で課題提起をした、「翻訳のプロフェショナリズムの確立」、に継いで私が書いた「翻訳のアマチュアリズムを極める」の原稿をお読みください。
すなわち、翻訳の役割は単にプロの翻訳者が担うだけではなく、一般の翻訳学習者が果たすべき役割も見逃せないという点です。 ⇒
「翻訳のアマチュアリズムを極める」
バベルグループの使命に関して「翻訳のプロフェショナリズムの確立」と言ったそばから、なぜアマチュアリズム?とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
別に、ボランティア翻訳を推進しようと言うわけではありません。 これを別の言い方をすれば、「教育的翻訳を極める」と言っていただいても構いません。
教育的翻訳というと馴染みがないと思いますが。 教育的ディベート(Academic Debate)をご存知でしょうか。バベルでも90年代に約10年間、米国のディベートチャンピオンとコーチ(教授)を日本に招請して、日本全国の教育的興行を全面的に後援しておりました。日本語と英語でディベートを行い、ディベートの効用を謳ってきました。当時は松本茂先生(バベルプレスで「英語ディベート実践マニュアル」刊行、現立教大学経営学部国際経営学科教授、米国ディベートコーチ資格ホールダー)、故中津燎子先生(書籍「なんで英語やるの?」で大宅壮一ノンフィクション賞受賞)にお力添えをいただいておりました。 話が横道に逸れてしまいましたが、教育的ディベートとは、論理構成力を涵養する教育の一環としてディベートの手法を活用しようという考え方でした。 ここで私が言う、「教育的翻訳とは」大学生以上の成人層を対象とするものと小中学生等を対象にするものとを考えているのですが、プロ翻訳家の養成という意図はありません。
ここでは説明をわかりやすくするために、後者の例をお伝えします。 バベルグループの歴史が40年となることはこれまでにお伝えしました。その間、翻訳に関しても様々な実験的な試みをしてきました。私が前職(JTB外人旅行部)からバベルに転職したときのバベルの面接官が、当時教育部長をされていた故長崎玄弥先生でした。長崎先生は海外に行くこともなく、英語を自由に操る天才的な方でした。当時は奇跡の英語シリーズで100万部を越えるロングセラーを執筆されておりました。
その面談は急に英語での面談に切り替わって慌てた覚えがあります。 その長崎先生と翻訳に関するある実験的な企画をしました。 当時、中学の1,2年生を7,8人募集して、中学生に翻訳(英文解釈、訳読ではない)の授業をするという試みでした。週に2,3回、夕方を利用して、かれらに英米文学(ラダーエディション)の翻訳をさせたのです。詳細は置くとして、それから約1年後は、なんと彼らの英語、国語、社会の成績が1,2ランク上がったのです。英語の成績が上がるのはもっともとしても、社会、国語の成績が上がった時は、翻訳という教育の潜在力を実感したものです。あれから20余年、懸案を実現するに、時が熟して来たと感じています。 現在の英語教育では、文法訳読形式が否定され、コミュ二カティブは英語教育が推進されるなか、実効性が上がらないのを目の当たりにして、明治時代以前の教育にも見られる「教育的翻訳」の必要性をうすうす感じているのは私だけではないのかと思います。 また、余談を言わせて頂ければ、コミュ二カティブな英語を涵養する優れた教育方法は「教育的通訳」とバベルでの企業人向け教育の経験で実感してきました。
これはのちに上智大学の渡辺昇一先生(現上智大学名誉教授、書籍「知的生活の方法」で一世を風靡)が、その実効性に関する大部のレポートを発表されておりました。 話が横道に逸れてしまいましたが、この「教育的翻訳の普及」が、言語教育、異文化理解、異文化対応、感性の涵養等、小中高等教育のみならず成人教育、更には日本の世界における新たな役割認識に新しい地平を拓くものと信じています。
(堀田原稿は以上)
最後に以下の拙稿、「世界が一つの言葉を取り戻す」も参考にして頂ければと思います。 「翻訳のすすめ」を考えるにあたり、発想をゆるめ、抽象化するひとつの方法として、私が執筆した「世界が一つの言葉を取り戻す」も読んでいただければ幸いです。 ⇒
「世界が一つの言葉を取り戻す」 バベルと長いお付き合いの方はバベルの塔の神話をご存知のかたは多いことでしょう。
しかし、バベルの塔の神話の真のメッセージは必ずしも人間の傲慢を諌めることだけではないというところから出発したいと思います。 それは、20年以上前にオーストラリアの書店で見かけた子供向けの聖書に書かれた解釈でした。 神は、人が、ひとところに止まらず、その智恵と力を世界に広げ繁栄するようにと願い、世界中に人々を散らしたという解釈でした。すると、散らされた民はその土地、風土で独自の言葉と文化を育み、世界中に多様な言語と文化を織りなす、一つの地球文化を生み出したのです。 しかし、もともとは一つだったことば(文化)ゆえに翻訳も可能であるし、弁証法的に発展した文化は、常に一定のサイクルで原点回帰をしているので、ただ視点を変えるだけで、結局、同じことを言っていることが分かるのではないでしょうか。 しかし、人間のエゴの働きと言えるでしょうか、バベルの塔のころからの傲慢さゆえに、自文化が一番と考えることから抜けきれないでいると、もともと一つであるものでさえ見えず、理解できず、伝える(翻訳)ことさえできなくなってしまうのかもしれません。 翻訳の精神とは、自らの文化を相対化し、相手文化を尊重し、翻訳するときは自立した二つの文化を等距離に置き等価変換する試みであるとすると、その過程こそ、もともと一つであったことを思い返す試みなのかもしれません。 「世界が一つの言葉を取り戻す」、それは決してバベルの塔以前のように、同じ言語を話すことではないでしょう。それは、別々の言語を持ち、文化を背負ったとしても、相手の文化の自立性を尊重し、その底辺にある自文化を相対化し理解しようとする‘翻訳者意識’を取り戻すことなのではないでしょうか。 バベルの塔の神話はそんなことまでも示唆しているように思えます。 また、ここに翻訳の本質が見えてきます。 昨日、あるテレビ番組で、日本料理の達人がルソン島に行き、現地の子供の1歳のお祝いの膳を用意するという番組を観ました。おそらく番組主催者の意図は世界遺産となった日本料理が、ガスも、電気コンロもない孤島で通用するかを面白く見せようとしていたのでしょう。 この日本料理の達人は自らの得意技で様々な料理を、現地の限られた食材を使い、事前に現地の人々に味見をしてもらいながら試行錯誤で料理を完成させいくというストーリーでした。そして、最後は大絶賛を得られたという番組でした。
しかし、かれはその間、自ら良しとする自信作で味見をしてもらうわけですが、一様にまずいと言われてしまいます。しかし、何度も現地のひとの味覚を確認しながら、日本料理を‘翻訳’していくのでした。そこには自文化の押し付けもなければ、ひとりよがりの自信も見られません。ただ、現地のひとの味覚に合うよう、これが日本料理という既成概念を捨て、日本料理を相対化し、自らのものさしを変えていくのです。 世界には7,000を越える言語、更にそれをはるかに越える文化が有る中、翻訳者が翻訳ができるとはどういうことなのでしょうか。 翻訳ができるということはもともと一つだからであり、
翻訳ができるということは具象と抽象の梯子を上がり下がりできるということであり、
翻訳ができるということは、自己を相対化できるということでしょう。 例えば、世の中には様々な宗教があり、お互いを翻訳しえないと考えている方が多いのではないのではないでしょうか。
しかし、一端、誰しも翻訳者であると考えてみましょう。翻訳者という役割が与えられた時点で、自らの言語、文化を相対化する必要があります。翻訳する相手の文化を尊重し、自国の文化を相対化し、相手の国の人々がわかるよう再表現をする。
「翻訳とは、お互いの違いは表層的なものであり、もともとは一つであることに気づき、お互いを認め、尊重し合う行為である」と考えれば、「優れた翻訳者を世界に送り出すことで世界を一つにする」ということは、あながち、夢物語だとは言えないのではないか、と考えます。
さて、長くなりましたが、「翻訳のすすめ」、みなさんの多様な観点の寄稿をお待ちしております。なお、この3ヶ月に亘るみなさんの寄稿はまとめて本にしたいと考えております。
紙幅により、全ての原稿を掲載できると限りませんが、奮ってご応募ください。 [box color=”lgreen”]
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『翻訳者の視野 ―「翻訳のすすめ」を考えるにあたって』
胎児がたどる38億年の進化
「赤ちゃんは38億年にわたる生物の進化の壮大なドラマを経験しています。最初は魚に
似た形のものが、両生類から、爬虫類のような形になり、哺乳類の特徴が出てきて、だんだん人間に進化していく。
地球の生命誕生の瞬間から今日にいたるまでの生命の歴史をわずか38週で駆け抜けて行くのです。
つまり、妊娠中のお母さんの1週間が一億年、一日が1,000万年以上にあたります。
生まれた赤ちゃんは0歳でも1歳でもなく、38億歳といってもいい。生物の奇跡的な進化の歴史の結晶であり、両生類でも爬虫類でもなく、無事に人間として生まれてくるというのは、考えれば考えるほど不思議なことです。
なぜ、こんなすごいことができるのか。それは受精卵という生命の原初のころから、それを可能にするための情報が体内に存在しているからです。その情報の源が、遺伝子です。」
これは、遺伝子研究の権威、筑波大学名誉教授村上和雄さんの人体という小宇宙の
フラクタル構造を表したことばです。
翻訳者の視野、と題して、急に、なぜそんなことを言い出すのか、と言われる方もいらっしゃるかと思いますが。
宇宙の森羅万象が、フラクタル構造をもっていることはご存じでしたでしょうか。
リアス式海岸線や人間の腸の内壁などに共通する「図形の部分を拡大すると、全体と相似する形を見つけられる」という構造をフラクタルと言います。どんなに微小な部分を取っても全体に相似している自己相似。現在の先端科学、 複雑系の科学において、従来の線形科学ではとらえられなかった分野の科学のキーワードになっている言葉です。
一方で、我々翻訳者が扱う、文化、文明の所産は、こうした遺伝子レベルの目に見えない力が介在してはいないのでしょうか。
それが、今回のテーマです。
歴史とは、偶発的に起こった事象の集合体であると誰しも信じていると思いますが。
歴史もひとつの生命現象であり、文明には大きな波があり、 東洋と西洋、ふたつの大きな文明が描く波は、 生命情報を蓄えるDNAと同じ二重螺旋の構造をしている、と喝破した人物、故村山節(みさお)さんをご存知ですか。
私も、数年前、経済ジャーナリストの浅井隆さんの、この「歴史の800年周期説」を題材にした原稿 「HUMAN DESTINY 」(人類の運命、西宮久雄&Peter Skaer共訳、 KAIENTAI出版) をバベルで翻訳してその全貌を知りました。
それ以前も村山節(みさお)さんについては故船井幸雄さんが講演会で話題にされたりしていましたが、へぇー、ぐらいの関心でした。その後、調べると、あの文明の衝突の著者サミュエル・ハンチントンをはじめ多くの西欧の歴史家が検証し、その事実を認めたと言われています。
あのトインビーも歴史の800年の転換までは信じていたようです。
村山節(みさお)さんは1938年、『歴史は直線の分析より始まる』という天の声を聞き、
家の廊下に紙をつなぎ合わせ10mの年表を作り、そこに10年1㎝の座標をとり、歴史上の出来事を色分けして記述したそうです。
すると文明は大きなかたまりをなしており、西と東の文明が交互に興っていて、800年に1度、文明の大崩壊を起こしている、ということを発見したそうです。
これを文明法則史学と言うそうですが、 東西文明は800年サイクルで盛衰を繰り返しており、 2000年からの800年はちょうど西洋から東洋へ文明が移行する転換期であると言います。
地球上では、北半球が春の時は、南半球は秋、北半球が夏の時は、南半球は冬、
北と南の季節の移ろいは、一年周期で互いに二重らせんを描いています。
一方、文明は東と西で800年周期の二重らせんです。
DNAの二重らせんは三次元空間に、季節や歴史の二重らせんは時空に座標を取って表現されます。
二重らせんは生命の「形」であり、「法則」であると言われています。
そしてその法則性は、時間、空間の概念を越え、 宇宙のあらゆるところにフラクタル構造を持ち存在しているようです。
故村山節(みさお)さんが、膨大なデータを元に壮大な実証科学として提唱した、
DNAの二重螺旋構造にも相似する東西文明800年周期交代説。
歴史は無機的な線形の進化と思っていましたが、歴史に一種生命が宿っていることを知り、翻訳に関わるものとしてもその価値観が大きく変わる衝撃を受けました。
この説の存在を知るにつれ、翻訳者が文化、文明の東西交流を担っているとすれば、その果たす役割の重さに襟を正さざるをえないと思うようになりました。
とは言え、翻訳者の日常からはかけ離れた視点なので、身に引き寄せて、想いを馳せるのは決して易しいことではないでしょうが、こうしたことを受け入れる懐の広さと深さも翻訳者の適性のひとつかもしれません。
(参考です)
村山節著「文明の研究―歴史の法則と未来予測」(光村推古書院)は復刊ドットコムで手に入るようです。また、村山節さんの遺志を継いでいる林英臣さんが「超文明論―地球を救う座標軸」(総合法令)を刊行されています。
WEB TPT 2014年5月10日号 ― 通巻102号より
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‘ゆる’んで翻訳
The Power of Body Awareness
The Ultimate Guide to relax and loosen your body and mind
これが間もなくバベルにて刊行される高岡英夫さんの
『身体意識を鍛える ― 閉じ込められた‘‘カラダのちから’’を呼び覚ます法』
の英訳版(佐々木理恵子、Peter Skaer共訳)のタイトルです。
英訳版刊行は8月を予定しています。
この雑誌が配信される前々日の5月24日のバベル翻訳大学院(USA)の学位授与式において、高岡先生より『魚類からはじまるゆる体操』というタイトルでご講演いただきました。
その時に配布した高岡英夫先生とその著書の紹介文が以下の通りです。(一部省略)
――――――――――――――――――
運動科学者。運動科学総合研究所所長。東京大学卒業後、同大学大学院教育学研究科を修了。幼少時より、室町時代(14世紀日本)から伝わる日本の古流武術を伝承した父親より武術指導を受け、サムライ文化を継承して育った。
武術の研鑽に加え、東京大学大学院時代には東洋哲学と人間の身体や高度能力に関する西洋科学の思想を統合する研究に励み「運動科学」を創始。
その過程で人間の能力を根底から支えている本質である「身体意識」を解明した。日本武術の中には「正中線」や「ハラ」等、本書で紹介する「センター」や「下丹田」にあたる概念がすでに存在しており、そのような情報を手がかりにしながら研究を重ねた結果、身体意識が日本武術のみならず、スポーツやその他の身体文化、舞台芸術、音楽、ビジネス、医療、学問、その他あらゆる文化の中に存在することを明らかにし、今日ではその構造と機能の全容を解明することに成功した。
また古今東西の運動法や魚類を中心に動物の運動能力を研究し、日本の古流武術の理論と方法をベースにそれらのエッセンスを凝縮して、体をゆすってゆるめときほぐす方法、擬態語や笑いで体を劇的に改善する方法などを組み合わせて、誰でも身体意識をよりやさしく、効率よく学習、修錬ができるような体系的メソッド「ゆる体操」を開発。
老若男女問わず数多くの人が取り組み、健康や美容、高能力の増進に画期的な効果をもたらしている。現在、著者は日本でトップレベルのスポーツ選手・舞踊家・音楽家・俳優・会社経営者・国会議員・大学教授などを指導しながら、幅広い人々に「ゆる体操」を普及し、一流スポーツ選手から高齢者にいたるまで、多くの人々に支持されている。
東日本大震災後は復興支援のため、ゆる体操プロジェクトを指揮し、自らも被災者の健康維持と疾病予防を目的にゆる体操の指導にあたった。著書は『究極の身体』、『宮本武蔵は、なぜ強かったのか?』(ともに講談社)、など100冊以上に及ぶ。
―――――――――――――――――――
どうでしょう、そそられませんか?
私が高岡先生に出会った、というより本で出会ったのは2003年、高岡先生がこの『身体意識を鍛える―閉じ込められた‘‘ カラダのちから ’’を呼び覚ます法』という書籍を出版された時でした。
当時は、不思議な本、不思議な内容の本だな、という意識でとりあえず購入、読んでも更にその不思議さは変わらず年月が流れて行きました。
その後、2005年、講談社の新書『「ゆる」身体・脳革命―不可能を可能に変える27の実証』をはじめ数冊の著書を読んで、私の決心がかたまり、無謀にもいきなりこの考えを世界に広めたいと、運動科学総合研究所にFAXしたところから今が始まりました。
私自身もゆる体操を体験し、更にビデオで実践し、今は体もこころも随分ゆるむようになりました。私も、高校時代は投手で甲子園を目指し、大学時代は剛柔流空手を経験していることから、高岡先生の理論が理屈ではなく、真実と直感していました。
高岡先生も地方自治体、医学界をはじめ、様々な業界でゆる体操を実践され今はゆるぎない、ラジオ体操に替わりえる体操まで進化させてきました。
翻訳者の方も実際に実践され、驚異的な翻訳量とスピードを獲得しているそうです。
その実例は、前述の講談社の新書『「ゆる」身体・脳革命―不可能を可能に変える27の実証』に載っています。是非、お読みください。
私どもは、人類のために、このゆる運動を、この基本書『The Power of Body Awareness – The Ultimate Guide to relax and loosen your body and mind』の刊行をきっかけに世界に広めたいと考えています。24日の高岡先生のお話しでは、これにより人が病気にかかる率が90%は減るだろうとのこと。これは、12名の現役の医者の証言とのこと。まさに、
‘ 医源病 ’がはびこる中、人類の真の救世主とも言えるかもしれません。
何年か後には、翻訳者はもちろんのこと、老若男女、だれも抵抗なくできる体操としてこのYURUが世界に普及していると確信します。
ゆる体操を実践し、身体意識を鍛えることにより、単に健康を獲得するだけではなく、最高のコンセントレーションとレラクセーション―ピークパフォーマンスを獲得でき、更に極めれば所謂天才と言われる人と同様の心身を開発できると言います。
その究極を高岡先生は、以下のように、Body Awareness, 身体意識と表現されています。その実例、根拠、開発方法としてのゆる体操は高岡先生の著書に開示されていますのでご覧下さい。
ここでは7つの身体意識をご紹介しましょう。詳細は書籍をお読みください。
1. センター(Center )
2. 下丹田 ( Lower Tanden )
3. 中丹田 ( Middle Tanden )
4. リバース ( Arch )
5. ベスト ( Vest )
6. 裏転子 ( Uratenshi- Back Push)
7. レーザー ( Laser )
また、この本にはこの7つの身体意識を診断するテストもついています。
一度、試してみてはどうでしょう。
天才的な心身を獲得できるかどうかはさておき、心と体の関係性、その可能性が、革命的に変わると確信します。
8月の英文書刊行を楽しみにしてください。AMAZONで購入できます。(BABEL PRESS USA刊行)
WEB TPT 2014年5月25日号 ― 通巻103号より
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デジュールスタンダードの時代へ?!
翻訳の国際規格が間もなくスタート!
翻訳の国際規格、ISO17100が間もなくスタートします。
ISO(国際標準化機構、本部ジュネーブ)は様々な国際技術規格を世界標準とすべく、規格を策定、世界に普及させようとしています。
以下に翻訳関連する規格を列挙しましょう。
- ISO 9001:2008
文書化プロセスと手順に適用される規格。 - ISO 27001:2005
文書化された情報セキュリティマネジメントシステムの構築、導入、運用、監視、維持、改善のための要件を規定する規格。 - EN 15038:2006
欧州標準化委員会によってヨーロッパの翻訳/ローカリゼーション専用に作られた品質規格。 - ISO 13485:2003
ISO 9001を基にした規格で、医療機器と関連サービスの設計、開発、製造、設置に焦点を置いた規格。 - ISO 14971:2007
医療機器の翻訳サービス全体を通してリスク管理のあらゆる側面が考慮されていることを確認するプロセスを提供する規格。(ISO 13485を補完するもの)
『JTA公認 翻訳プロジェクト・マネージャー資格試験』についても、このISO17100に準拠し、それを越える(翻訳品質のみならず、ビジネスとしての健全性を含む)資格として確立できればと考えています。http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm.html この業界で長い方はご承知かと思いますが、ISO9001という品質マネージメント規格は、ローカリゼーション翻訳の世界では、国際規格として採用され、翻訳会社( Translation Service Provider) によってはこの認証を取得して、クライアントにたいする営業のブランド力としていました。しかし、その後、翻訳の業界にはそぐわないとして欧州規格EN15038が創られ、これが次第に浸透するようになりました。そこでISOはこのEN15038をベースとして、ISO17100の開発に踏み切ったという訳です。 このISO17100は、‘翻訳のプロフェショナリズム’の確立という意味でも大事な視点を含んでいます。 まず注目すべきは、このISO17100は翻訳会社のみならず、クライアント、その他のステークホールダーを巻き込んだ規格であるということです。 また、この規格では翻訳者の資格(Qualification of Translators)、そしてチェッカー、リバイザーの資格を明確にしようとしていることです。すなわち、翻訳者を社会にどう認知させるかという視点をベースにもっているということです。 翻訳者の資格(Qualification of Translators)
(1) 翻訳の学位
(2) 翻訳以外の学位+実務経験2年
(3) 実務経験5年
(4) 政府認定の資格を有する
のいずれかが必要と謳っています。 また、翻訳プロセスについても
Translate
⇒ Check
⇒ Revise
⇒ Review
⇒ Proofread
⇒ Final Verification
とその品質確保の要求プロセスを規定しています。
*Review、Proofreadはオプション これらの要求項目は、まさに業界とそれを取り巻くクライアント、エンドユーザーが一体と ならないと達成できないことです。翻訳の品質を一定に保つためにはこれらの視点、プロセスが必要であることをクライアントが納得していただけなければならないわけで、それがなければ翻訳業界の発展も見込めないわけです。 私は、翻訳者教育の分野では、米国に翻訳大学院( Babel University Professional School of Translation)を設立しAccreditationを取得するために、米国教育省が認定している教育 品質認証団体、DEAC ( The Distance Education Accrediting Commission )のメンバー校になるべく交渉をした経験があります。 このAccreditationを取得するプロセスでは、約3年の年月と、1,000ページに及ぶ、Educational StandardsとBusiness Standards遵守の資料の作成が要求されました。 その後、これらの資料に基づき、監査チーム(5名)を米国事務所に迎え、プレゼンテーションをし、査問、監査を受けるわけですが、こうしたルールにどう準拠するかのやり取りは、嫌というほど経験しています。 自分で選択したとは言え、その経験があるがゆえに、既に作られたルールに意図に反して従わざるを得ない無念さを痛感していました。翻訳の教育はこうなんだ、他の学科を教えるのとはこう違うのだといっても、所詮、ヨーロッパ系言語間のより容易な翻訳を翻訳と考えている彼らには、その意味が通じず、いつも隔靴掻痒の思いがありました。 従って、ルールメーキングの段階からこの種のプロジェクトに関わる必要性を痛切に感じてきました。 というのは、現在、Babel University Professional School of Translationは翻訳のプロフェショナルスクール(専門職大学院)でありながら、DEACという一般の高等教育の認証 団体に加盟しているからです。私としては、ロースクールがそうであるように(ABA-American Bar Associationの認証)、翻訳教育においては翻訳教育の独自性を念頭に翻訳 機関の世界連合が翻訳教育の認証をすべきと年来考えているからです。従って、翻訳者のプロフェショナリズムを極めるためにも、翻訳高等教育の品質認証団体を世界規模で設立、Professional Accreditationを提案していきたいと考えています。 私の持論としては‘ 翻訳者は翻訳専門の修士以上の教育プログラムを修めるべき’ と考えています。翻訳は専門と言語力の統合があってこそ可能、すなわち、大学院レベルの教育であってしかるべきと考えています。 今回のISOのプロジェクトに関わるにあたって、改めて、私も含めて、日本人のルール メーキングに対する頭脳改造、行動改造、そして戦略が必要と痛感しています。 翻って、世界に広がつている日本のサブカルチャー、マンガ、アニメ、コスプレ、カラオケは実は日本が積極的に世界に発信した結果ではなく、海外が着目して普及していったのが実際ということに驚かせられます。浮世絵などの日本の伝統的コンテンツが海外の買い手に二束三文で買いたたかれて、とんでもない高値で売りさばかれているという事実に気付いているでしょうか。従って、世界文化遺産に登録された日本食にしても、もっと戦略的に世界に発信して格付けをする、そんな視点が望まれるのでしょう。 いつもルールメーキングではかやの外に在り、ロービーイング的な動きが苦手、技術があればルールなんか越えられるという根拠なきうぬぼれ、ルール作りは政府に仕事、この辺の体質を一掃する必要がありそうです。アジェンダを作成、規格を提案できる日本をめざすそんな時期に来ているように思います。 ディファクトスタンダードになるのを成算もなく待つより、デジュールスタンダードに自ら当事者として関与する、という姿勢が必要なのかもしれません。また、そのためには、我々日本人に苦手な原理、原則、能書きを書ける人材、グランドデザインが描ける人材を育てる必要があるということなのでしょうか。 [box color=”lgreen”]
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