子どものころ、なにがなんでも看護師になりたかった。そして、世界じゅうを飛びまわる自分の姿を想像した。痛みや苦しみのある場所へはどこへなりと出かけていき、救いの手を差しのべる。病弱な赤ん坊は、わたしの腕の中でほほ笑み、すくすくと育つ。ビアフラの死にかけた老人は、わたしの介護を受けると、汚い藁の寝床から起き上がり、歩きだす。列車事故に遭い、包帯を巻かれ、牽引療法のためにワイヤーで引っ張られている人たちは、意識がもうろうとしながらも、純白のナースシューズを履いたわたしの足音が廊下に響いてくると不思議な安らぎを覚える。
大学では四年制の看護学科を選んだ。最初の二年は理論的な科学の講座ばかりで、どれも楽々こなした。〈光合成〉は人の呼吸と同じぐらい自然なことに思えたし、〈減数分裂〉と〈有糸分裂〉は、子供のころからやんちゃぶりを見慣れた、かわいいふたりの弟たちのようなもの。生涯の仕事に向けて、完璧で、心から満足のいく滑りだしだった。
★以下の、続きの英文を翻訳して提出してください。
Then finally, in the third year, my classmates
and I were sent out to a hospital for the first time, proudly wearing
our little caps and white stockings and the gray pinstriped uniform
of the fledgling nurse.
It wasn't like I expected. Instead of that mystical power of healing
that I had imagined would enter me like a great bird, I felt all
my good sense drain away, and the useless weight of the pain and
suffering of all those thousands of souls settled in my belly like
a lead-gray stone.
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<出典>「文芸/演習T@ フィクション・ノンフィクション」 第1回、第2回