令和元年への誓い:日本語を守る、日本を守る、国体を守る.そして、‘翻訳’で世界へ

米国翻訳専門職大学院(USA)副学長 堀田都茂樹
本誌、4月8日号で金融翻訳ジャーナリストの前田高昭さんが紹介しているように、激動の時代における日本の希望を象徴する新元号「令和」について報じる4月1日付ワシントン・ポストでは、
「New emperor on Japan’s Chrysanthemum Throne heralds new ‘Reiwa’ era and desire for harmony, revival」と題し、激動の時代における日本の希望を象徴する新元号と伝えていたそうです。

記事では、新元号に決まった「令和」は、めでたさ(auspiciousness)と調和を意味するとともに、激動の時代における日本の希望を象徴していると報じ、この名称は、これまでの伝統を破り、7世紀に遡る日本最古の歌集(the oldest anthology of Japanese poetry)である万葉集からの引用、漢書(Chinese classics)からではなかったと解説しているそうです。

また「令」という漢字は法令や命令を意味するが、万葉集では、冒頭で述べたような意味で使われていると補足していたそうです。

さらに記事は、万葉集は貴族だけでなく社会の下層の人たちや農民たちの作品を収めており、新元号が一体感(sense of unity)を醸成することを希望していると、安倍首相が語っていると伝えたそうです。 
       *万葉集研究者よると、「令」は麗しい(整っている)の意味だそうです。

令和を迎えるこの機会に、改めて日本語、日本、そして日本という国体を考えてみたい
と思います。

1. 日本語を守る

西欧人がかつて、キリスト教文明圏、イスラム教文明圏、東洋文明圏と分けていたところを、あの20世紀の偉大な歴史家トインビーの再考を基に、『文明の衝突』の著者、国際政治学者のハンチントンが、7つの文明圏に分け直していることはご承知でしょう。

 西欧キリスト教文明圏、ロシア正教文明圏、イスラム文明圏、ヒンズー文明圏、シナ文明圏、中南米ラテン・アメリカ文明圏、そして日本文明圏。日本は一国だけで独自の文化圏をなす存在であると主張しています。

そのトインビーがどうしても解けなかった謎が、日本が明治維新以来、約30年で一気に近代化できた理由でした。結局、様々な文献を紐解いても、あの天才をしても‘奇跡’としか言いようのなかった日本の近代化。英国をはじめ、当時の西欧列強ですら100年以上の時が必要とされた近代化。

そのトインビーが解けなかった謎の答えの一つは、明治維新前の200年を越える江戸時代の‘参勤交代’にあったことに驚かされます。

では、その参勤交代がなぜ、日本の近代化に大きく貢献したか。それは、日本語という言語の統一であったと言います。

 江戸時代以前は、京弁と地方の様々な方言が混在していたところが、参勤交代によって共通言語としての江戸弁が普及したといいます。

参勤交代では、地方の大名が妻子をいわば人質として江戸に住まわされていたことにより、大名は自領に帰ると自ずと江戸弁を話すようになり、江戸弁が全国に共有されたと言います。加えて、その子、そして孫と2代、3代と重ねていくにつれ子孫は自ずと江戸弁を使うようになったわけです。こうして、明治維新を迎えるころには江戸弁が共通言語として使われるようになっていくわけです。

 明治維新当時、例えばフランスの人口2,500万人の内、フランス語を話せたのがたった300万人、他にも様々な言語が使われていたと言います。また、英国に在っては公用語が6つもあったと言います。

 明治維新以降の日本は、いわば、この言語統一という今にして思うと‘コミュニケーション戦略’によって奇跡を成し遂げたのです。こうして達成された先端の科学技術の共有、軍事技術の共有等がやがて日本を日露戦争の勝利に導き、殖産興業、富国強兵を果たし近代化を進めた要因であったといいます。また、当時の日本人の識字率に至っては日本は9割を超えていたと言います。一方、英国では20~30%、フランスは10%くらいであったと言います。

 翻って、英語至上主義の日本の現状を省みてみましょう。

 企業では英語公用語化が隆盛。大学ではスーパーグローバルOOと授業の英語化に必死、小学生は5年、いや3年生から英語授業を始めると言います。やがて、私立中学の受験に
英語が入ってくることでしょう。

 英語至上主義、日本でも喧しく企業内の英語公用語化の話題がマスコミを賑わせていますが、これこそ所謂グローバリスト、国際金融資本家の思う壺。日本が二流国に転落するのが目に見えています。

すなわち、英語を第二公用語として使う、インド、マレーシア、ケニアなどの旧イギリス植民地諸国、フィリピン、プエルトリコなどの米国占領下にあった諸国。かれらはある意味、英語を公用語として採用して、言語の統一を計らず、結果として二流国を甘んじて受け入れた国と言えるでしょう。

あの理想国家といわれるシンガポールでさえ、常に複数の言語を学ばなければならないことから始まり、エリート主義による経済格差の拡大、国民の連帯意識の欠如。そして、独自の文化、芸術が生まれない文化的貧困を皆さんはご存知でしたでしょうか。これこそ、英語化路線の一方のひずみと言えると思います。

 日本は、翻訳を盾に、日本語が国語である位置を堅持して、決して日本語を現地語の位置に貶めませんでした。6,7世紀ころから中国文明を消化、吸収するに中国文化を和漢折衷で 受け入れ、真名、仮名、文化を作り上げできた融通無碍な翻訳日本文化。

 明治維新以降も、日本語を堅持し、翻訳という方法を通じて、欧米の当時の先進文化を土着化することによって民度を上げて世界のトップに躍り出た日本。

日本は明治の近代化で翻訳を通して知的な観念を土着化し、だれでも世界の先端知識に触れられる環境を創ってきました。ひとつ間違えれば、国の独立さえ危ぶまれた明治の日本は当時の英語公用語化論を退け、翻訳を通じて日本語による近代化を成し遂げました。

その戦略の先進性に改めて驚くとともに、先人の先見の明、また、参勤交代という歴史の必然にただただ感謝するばかりです。

更に、ここで日本語を普及させることの世界的意義を考えましょう。

以前、本誌で日本語教育者であり、言語学者の金谷武洋氏の説として、英語は主語(私)と目的語(相手)を切り離して対立する世界にする、と言う説を披露しました。

例えば、広島の平和公園の中の慰霊碑の碑銘に「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」と書いてありますが、ここには誰の過ちかは明らかにされていません。ここには私とあなたが共存し、あたかも敵と味方の共存する姿を暗示しているかのようです。

さらに身近な「ありがとう」、「おはよう」と言ったことばから、日本語の本質に迫ります。

 日本語の「ありがとう」には話し手も聞き手も、つまり人間が出てきません。
それに対してThank youはI thank you.となります。

 日本語の「ありがとう」は「有難う」、すなわち、あることが難しいという形容詞。
 「めったにない」という状況を表現しています。従って、著者は、英語は「(誰かが何かを)する言葉」、日本語は「(何らかの状況で)ある言葉」、としています。

また、英語の「おはよう」は、英語のI wish you a good morning.で、わたしが登場し、この朝がいいものであるようにと、積極的な行為を表現しています。

対して日本語のおはようございます、は二人が「まだ早い」という状況で心を合わせているのです。ふたりはそう共感しているわけです。

すなわち、日本語は共感の言葉、英語は自己主張と対立の言葉と言えそうです。

カナダのモントリオール大学東アジア研究所で20余年に亘り日本語を教えてきた著者は、日本語の学習を通じて、学習者の世界観が、競争から共同へ、直視から共視へ、抗争から共存へ変わると言います。

日本語という言葉そのものの中に、自己主張にブレーキがかかるような仕組みが潜んでいると言うのです。

一方で、英語話者はListen to me.、Let me tell you something. 、 You won’t believe this.など、上から目線で自己主張してくるわけです。

金谷先生は自著の最後の章を「だから、日本語が世界を平和にする!」と結んでいます。

金谷先生の経験から言うと、日本語を学習すると性格が変わってしまう。攻撃的な性格が温和な性格になると言います。

わたしもバベルの大学院関係者でご主人が日本語が多少ともできる英語話者である場合、
喧嘩をしたときに日本語に切り替えると喧嘩は収まることが多いと聞きます。
これが所謂、フランス語で言うtatamiser効果ということなのでしょう。

 日本語の学習を通じて、学習者の世界観が、競争から共同、直視から共視、抗争から共存に変わっていくと結んでいます。日本語は最も平和志向が強い、ロマンチックで幸せな美しい言葉と自信をもって言えると言います。

今、世界の文化の潮流は西から東へ、男性性から女性性へ向かっていると言われます。

 日本人はもっと自信をもって、しかし、母性的強い意志と日本語で世界を調和していくことが必要と心から確信します。

最近の改正移民法(入国管理法)の実施で思うのは、寛容の精神で移民にそれぞれの国の言語を学ばせることを義務付けなかったことにより、国が分断されつつあるヨーロッパ各国の悲惨な状況です。この轍は踏まないよう移民予備軍には日本語(日本精神)をしつかり学ばせたいと考えます。

米国が星条旗に誓いをさせて、徴兵にも応ずるように移民に義務化させていることを考えれば、日本語、君が代、皇統を尊重することを義務付けても良いように思います。

2. 日本を守る

世界が、特にヨーロッパ各国がグローバル化、移民の大量移入で疲弊している状況は皆様も様々なニュースでご承知でしょう。

ウォール街に代表される金融資本家に踊らされて、人、モノ、金の自由化に踊らされた結果、国体を破壊され今の悲惨な状況となったヨーロッパ各国。

この時点では行方は不透明とは言いながら、 賢明なイギリスは一昨年6月にEU離脱(Brexit)を表明、イギリスを取り戻すという方向へ舵を切りました。思い起こすと、同様に移民人口比率が15%内外のフランスのサルコジ大統領もその在職期間中にフランスとは何か、フランスを取り戻す運動をしていたのは記憶に新しいところです。

 「我が国は古来こういう国なので、こうありたい」、と堂々と自国を主張しにくくなっているのが昨今のヨーロッパ事情のようです。

人、モノ、金、情報の自由な移動、グローバリズムを盲目的に良しとしている人は、そもそもこの願い自体が意味のない事と言うのかもしれませんが。

例えば、今、ドイツはドイツ人がドイツはこういう国だ、と堂々と言えない国になりつつあると言います。年間何十万人もの移民が、特にイスラム系の移民が流入していて、かれらが自国のことを声高に主張すると、レイシスト呼ばわりされる国になりはて、おまけに、流入する移民たちは凶悪犯罪の温床にもなっていると言う惨状です。

 英国の国勢調査によれば、ロンドンの住人のうち「白人の英国人」が占める割合はすでに半数を切っているといいます。ロンドンの33地区のうち23地区で白人は少数派に転落していると言います。

 英国民に占めるキリスト教徒の割合も、過去10年間で72%から59%と大幅に減少し、2050年までには国民の三分の一まで減る見込みです。

 他に、例えばスウェーデンでも今後30年以内に主要都市すべてでスウェーデン人(スウェーデン系スウェーデン人)は少数派に転落するという予測もあります。

このように、グローバリスト主導の外国人労働者の受け入れに端を発する移民国家化によって、ヨーロッパ諸国は、民族構成や宗教や文化のあり方が大きく変容しつつあります。正面から十分に国民の意思を問うたわけでもなく、いつの間にか、「国のかたち」がなし崩し的に大きく変わってきてしまっています。その結果、ヨーロッパ文明は死に、ヨーロッパ人はかけがえのない故郷を失っていくと言うのです。

グローバリストが新自由主義の政策、開放経済、規制緩和、小さな政府、これに基づき世界経済の再編を進めてきたわけですが、これに世界が異議を唱えたのが2018年、ここから新たな潮流が始まったと言えそうです。

 言い換えれば、世界の大きな潮流はまさにIndependent に向かっていると言えるでしょう。Independent な人、社会、国が、Independent な人、社会、国とInter-Independentな関係をもって、融和していく。そこには一定レベルの争いもあるでしょうが、それを覚悟で調和をめざす必要があるのでしょう。

ヨーロッパ各国の状況は、特定技能労働者として外国人労働者の大量受け入れをほぼ決めてしまった日本にとっても他人事ではありません。我々は、ヨーロッパの陥っている苦境から学ぶ必要が大いにあります。

 日本も着々と移民国家への道を歩んでいると言えるでしょう。コンビニの店員がアジア系というのは身近に感じているのでしょうが。我々が知らないところでこの移民化政策が進行しつつあります。

  技術研修生という名のもとに日本に5年間滞在、その後はその技術をもって母国に貢献するというのがその制度の目的だったはずですが、これからは、更に5年更新され、一定の要件を満たせば、専門技能の人材として家族帯同が許され、実質的に移民となっていくと言われます。また、定員割れの大学、各種学校が留学生と称して受け入れる事に関しても移民化につながるグレーな部分が多いと聴きます。更に、介護、農業の分野でも同様の危惧が感じられます。

もちろん、私もこのような移民政策の全てを否定するわけではないのですが、資格要件は明確にしなければ、それに関する様々な利権がもぐり、斡旋ビジネスに利用され、なし崩し的に緩い移民受け入れ制度になる危険性もあります。例えば日本であれば、その要件の一つとしてその専門技能等の基本要件はもちろんですが、少なくとも日本語の能力を明確に資格審査に加えるなどしないと、ヨーロッパの二の舞になるのは明らかです。

ちなみに、世界で最も移民の割合が高いのはUAEで、人口の88%。次いでフランス領ギアナが40%、サウジアラビア37%、スイス30%、オーストラリア29%、イスラエル25%、ニュージーンド23%、カナダ22%、カザフスタン20%などの順で、米国は15%、ドイツも15%、英国は13%、イタリアは10%となっていますが、日本もこれらに次に位置する状況にあるといいます。

では、この移民化政策がなぜ、ひそかに進んでいるのでしょう。一つは経済界の要請、人件費を上げたくない、生産性向上より、安易に、人件費を抑えるために移民化を後押ししているようです。もちろん、その背後には、自らの利益を優先するグローバル資本家、株主の意向があることは明らかです。

加えて、無防備な日本、それに付け込んで入り込んでくる中国をはじめとする移民予備軍。中国はいわば一帯一路に象徴されるように、世界の覇権国家たらんとし、各国に人民を送り込んで洗国(Ethnic Cleansing)を企んでいるというのがその歴史からも想像できます。

中国本土の高額な医療費を逃れるために、日本で起業、ビザを取って3年もすると、日本の国民健康保険に加入でき、中国では膨大な治療費がかかる高額医療を日本で受けられると言います。おまけに、高額医療費を逃れ、日本の国民保険を食いものにする仲介ビジネスが中国本土で活況を呈しているといいます。情けないことに、日本の厚生労働省はその実態すら十分に把握できてないという体たらくだそうです。

こうした実態をみると、少なくとも移民政策の先進国?のヨーロッパの惨状を知っているのかと日本政府に言いたくなるところです。のほほんと移民化政策を進める日本。その無防備な日本にあきれるばかり。アメリカの傘のもとに危機感を忘れ去ってしまった日本は、今こそ、自立と自律をめざす必要があるのでしょう。

3. 国体―皇統を守る

世の中が、御代替わりで一見浮かれモードの中、密かに「令和」という元号を無くそうとする勢力がいることをご存知でしょうか。

新元号の発表を控えた3月27日、 新元号の差し止めを求める訴訟が起こりました。
訴訟を起こしたYY氏は このような主張をしています。

 元号の制定が国民それぞれの『連続した時間』を切断・破壊する。
 世界中で日本にしか残ってない元号制は、 国民を「天皇の時間」に閉じ込め、
 個人の尊厳を侵害している。
天皇の即位のたびに元号を制定するのは違憲だ!というのです。

元号制度は、日本で1400年近く、連綿と続いてきます。
これは日本が、「1400年にもわたり、独自の文化・時間軸をもっていて、世界に誇る
伝統をもつ独立国家である」ということを示しています。

日本国民の多くが知らないことなのですが、”こんなにも長い歴史をもつ国は他にない”と、
伝統を重んじるイギリスからも、 建国200年のアメリカからも、 日本は賞賛されています。

にもかかわらず、反対勢力は誇るべき日本の制度や歴史を自ら否定しているのです。

日本の中心である天皇のことを貶めるために、このような解釈をしているとしか思えません。

日本の皇統は2000年以上の検証に耐えたシステムなのです。
神話の時代から在る男系の皇統です。

世界で現存する王室の中でも、最古の歴史を持ち、エリザベス女王やデンマーク国王より格上、世界唯一の EmperorがThe Emperor of Japan 日本の皇室なのです。
従って、宮内庁のホームぺージにあるように皇室は、Imperial Family、Royal Familyとは
言わないのです。

2000余年、この世界一の長い歴史をもつ万世一系の皇統を脅かす企みが密かに
進行しているのをご存知でしょうか。

それは、皆さんも新聞等でお聞きになったと思いますが、
女性宮家(もともと男性宮家)、女系天皇制です。

神話の時代から在る男系の皇統を崩そうとするのが、女性宮家の復活、女系天皇制です。
国連機関が浅薄に日本の天皇制は女性差別と言っているようですが、これこそ無知そのもの、そもそも差別しているのは日本人の男性なわけです。すなわち、現在の皇室制度の中では、決して一般男性が皇族にはなれないし、女系の天皇(女性の天皇ではありません)はありえないわけです。

ところが、女性宮家が認められ、女性天皇が誕生するとすると、そのお婿さんは天皇になれるとなり、どこの国の男性でも天皇になり得るという怖いことになりかねません。

そんな可能性がこの一連の議論には含まれていることをご存知でしたでしょうか。これを企むとすれば、それは日本の皇統をうらやみ、崩そうとする勢力が暗躍しているとしか思えません。

神武天皇から開化天皇までの存在を否定している、日本の歴史学者。日本の正史、日本書紀、
古事記を信じないで、魏志倭人伝等の大陸の歴史書を信じている本末転倒の歴史学者たち。

GHQによる歴史教育の否定から、ここまでつながる欺瞞。
そろそろ我々も健全なナショナリズムで日本の国体、神話を取り戻す時に来ているのでは
ないでしょうか。

本稿のタイトルを、日本語を守る、日本を守る、国体を守るとしましたが、この3つを守る秘密兵器こそ‘翻訳’であると確信している今日この頃です。