「アジアでの日本の役割、貢献は‘翻訳’から」
現在、バベルの翻訳専門職大学院では、「世界翻訳史」に次いで、「日本翻訳史」の開講準備をしています。それに先立って、本誌The Professional Translatorでは「日本翻訳史」の連載を開始します。執筆は川村清夫先生、川村先生はインディアナ大学大学院にて博士号(Ph.D)を取得。専門は東欧史。日本語・英語の他、独語、仏語、露語、チェコ語、ポーランド語、ユダヤ(イディッシュ)語及び中国語、韓国語に堪能という異色の講師です。
我々日本人は、他のアジア諸国の大半が母語をあきらめて、英語による高等教育を選択してきたのは承知の通りです。その結果、欧米の亜流国家となり、中途半端な発展に甘んじざるを得なかったわけです。一方、翻訳という方法をもって西欧の文物、思想を新しい日本語を創って近代化を果たしてきた日本。それ以前においても、中国の文化を日本の文語文に読みかえる訓読法で、ある種の‘翻訳’して中国文化を移入してきた日本。
日本人にはこうして外部の異なった文化、相応する概念、日本語がない場合も、新しい日本語環境を創り、吸収してきた輝かしい歴史があります。
一方、これを知ってか知らないのか、先人の知恵をないがしろにして、企業、自治体の英語の公用語化、高等教育を英語で行うスパーグローバルユニバーシティなどと声高に叫ぶ日本政府。
しかし転換期の今こそ、日本の翻訳の歴史を振り返って、日本の編み出した‘翻訳’という方法論、その歴史をしっかり整理し、まとめて行くべき時に来たのではないでしょうか。
多文化共生が言われる今、日本が他のアジア諸国に貢献できるとすれば、まず、この日本の歴史における‘翻訳’という方法論、翻訳立国の方法を世界、就中、アジアの諸国に伝えていくべきでしょう。
バベルは翻訳事業を始めて45年、半世紀近くが過ぎようとしています。これまでような高い翻訳品質を担保するための翻訳技法、言語表現技法の開発は今後も多言語間では必要なことではありますが、それにもまして、これからは翻訳を日本の国策として見直し、日本を翻訳で再立国し、アジア、そして世界に向けて、その‘翻訳’という方法論を伝えていきたいと考えます。
The Professional Translator 第192号 ALUMNI編集室より
以上
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