はじめに、
この度、『The Professional Translator』編集部から、海外に在住する翻訳者向けに海外で企業するノウハウについての記事を書いてほしいという依頼を受けました。これまで何度か本紙でグローバル翻訳市場について書いてきましたが、市場は刻一刻と変化しており、それに従って起業のアプローチも変わってくるのではないかと私は思っています。
今回の連載ではその変化を踏まえながら、これまでとは違った角度で市場を捉え、起業のノウハウについて考察していく予定です。もちろん、海外在住ではなく、日本に在住しており、海外の翻訳会社と取引をしてみたい読者の方にも役立つ内容にするつもりです。
ところで、私は現在トルコに住んでいますが、先月日本に帰国した折に、バベル翻訳大学院 (PST) の主催で行われた「アラムナイミーティング」と「学位授与式」に参加する機会を得ました。そこで何人かの修了生の方が自己紹介をされたのですが、PSTを修了されたのにもかかわらず、「まだ翻訳実務をこなす実力が伴っていない」と謙遜される修了生が何人かいらっしゃり、正直驚きました。PSTのカリキュラムは翻訳実務に沿っており、海外の他の翻訳大学/大学院と比較しても中身が濃い内容となっています。在学中の学生や修了生でしたらお分かりの通り、課題を最後までこなすのは本当に大変ですが、このカリキュラムをやり遂げれば、たとえ実務の経験がなくても、相当の実力がついているはずです。
翻訳業に必要なのは、「私はできる」という良い意味での開き直りです。「私なんかまだまだ」と思っているうちは、いくら起業のノウハウを読んでも仕事に直結しません。
昨年4月に発行された翻訳の国際規格では、翻訳大学/大学院の卒業生/修了生は、翻訳者としての資格要件を満たしています。それに、私も何度か修了生の方々と仕事をしたことがありますが、他の経歴を持つ翻訳者と比較して実力が高いと確信しました。PSTの修了生は名実共に翻訳の実力を認められているのですから、この連載を機に、グローバル翻訳市場でばりばり活躍していただきたいというのが、私がこの連載をお引き受けした理由です。
今回の連載では、
第1回 グローバル翻訳市場と日本の翻訳市場の違い
第2回 グローバル翻訳市場へのアプローチの仕方
第3回 翻訳会社(クライアント)の選び方
第4回 トラブルの回避とトラブルが発生した場合
を予定しています(いずれも仮の題です)。
今回は、読者の皆さんから起業や翻訳実務に関して予め質問を受け付け、連載の中で回答するという形式を採り入れたいと思います。また、個人的に質問がある場合もお受けします。『The Professional Translator』の発行日(毎月10日と25日)の10日前まで、上記のテーマについて質問を受け付けますので、この記事の下にあるフォームに記入し送信してください。
読者の皆さんと共に記事を作っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、7月26日(火)18:00~(日本時間)、このテーマに関して、日本翻訳協会主催でセミナーを実施する予定です。ZOOMで世界中から参加できます。
詳細は追ってお知らせします。
ハクセヴェルひろ子
大学卒業後、商社と金融機関勤務を経て、1992年トルコに移住。
2005年バベル翻訳大学院修了。翻訳修士。
2008年Proz.com Certified PRO認定。現在フリーランスで翻訳業に従事。