今、再びPlain Japaneseを考える

米国翻訳専門職大学院(USA)副学長 堀田都茂樹

先々月の翻訳編集に関する特集の際に標準となる日本語の必要性、日本語を外国語に翻訳する際も、日本語自体を標準日本語に日日翻訳してから英語化する必要性がある、といったことをお伝えしました。もちろん、英日翻訳においても、バベルの翻訳文法技法のみならず、スタイルガイドに加えて、標準的な日本語作成の技術は必要な技術となります。 バベルでは約25年前にPlain Englishというコミュニケーションのための機能的、Simple & Effectiveな英語を創るルールを作成したことはその際お伝えしました。標準日本語同様、これは英語を読み、書きするときはもちろんのこと日本語から英語に翻訳する際の、英語の標準として役立つものです。 ここで改めて、Plain Englishについて復習してみたいと思います。 Plain Englishとは1950年代にルドルフ・フレッシュが米国人に向けて提唱、その後、米国レーガン大統領、英国サッチャー首相もこれを支持し各界で反響を呼びました。議会でも対消費者に向けて簡潔明解な文章を書こうと、消費者保護の観点からもPlain Englishが推奨されました。また、Plain Englishは アニュアルレポート等、IR( Investor’s Relation)の分野においても、その必要性が謳われています。 バベルのPlain Englishでは、 4×4=16の基本ガイドラインを設けてあります。 1. COHESIVENESS(結束性)のルール
①コンテクストに合わせる
②論理的な順序に従う
③一貫性を保つ
④読み手、聞き手の気を散らさない 2. DIRECTNESS(直接性)のルール
⑤推測ではなく事実を記す
⑥主語を明確にする
⑦否定語は極力避ける
⑧結論を簡潔に記す 3. ECONOMY(簡潔性)のルール
⑨簡潔を心がける
⑩使用頻度の低い単語よりも使用頻度の高い単語を選ぶ
⑪従属節の使用を避ける
⑫一記述には一要点だけを論じる 4. APPROPRIATENESS(適切性)のルール
⑬誠実に礼儀正しく、他者に敬意を払う
⑭イディオムや俗語は避ける
⑮短縮形、くだけた会話体は避ける
⑯文法的に正しい文を用いる そして、この16のルールを
Word
Phrase
Sentence
Paragraph
それぞれのレベルで細分し、合計80のルールに分け、プロフェショナルにふさわしい英語ガイドラインを設けました。
Plain English購入はこちらから とすると、プレインジャパニーズのガイドラインはPlain English同様に、ノンフィクションライティングの分野において必要な基準と考えます。これにつきましては、約30年前に作家の岳真也先生に日本語の書き方、そして20年ほど前にバベル翻訳専門職大学院の教授の石田佳治先生を中心にプレインジャパニーズルールを考案いただきました。 先日、産業日本語研究会のシンポジウムに参加しましたところ、産業日本語をつくる試みが行われていることを知りました。
以下で産業日本語、日本人のための日本語マニュアルのこころみがご覧になれます。
http://ngc2068.tufs.ac.jp/nihongo/htdocs/ その主張の根拠は、日本経済がこの停滞を脱して世界に伍していくためには、日本語自体を機能化して、産業日本語の基準をつくり、機械翻訳にかけても精度の高い外国語になることをめざし、以って産業競争力をつける、という主張でした。 確かに、日本が世界に伍して世界のリーダーシップをとっていくためには、英語を公用語にするという愚策を考えるのではなく、日本語自体を機能的に整理整頓し、機械翻訳にかけても高い精度の訳文がつくれるような日本語にしていく努力は必要でしょう。また、これは日本語学習をしている日本語を母国語としていない方々にとっては素晴らしい学習素材となるでしょう。いわば、世界で通用する日本語を学ぶ機会となるわけですから。 バベルではこれまでのPlain Japaneseの開発経験を踏まえ、更にPlain Englishの技術を踏み台に、Plain Japaneseを翻訳の立場から再考したいと考えます。ここで言うPlain Japaneseは文学的な表現は含みません。従って、主にビジネスのコミュニケーションで必要とされる標準日本語、そしてその後は、目的別日本語としてTechnical Plain Japanese, Legal Plain Japaneseのルール化を進めていきたいと考えています。 そのねらいは、バベル翻訳専門職大学院(USA)として、外国語から日本語に翻訳する場合のLinguistic Reviewに活かすことと、また翻訳者が日本語から外国語に翻訳する場合、その稚拙なわかりにくい日本語の日日翻訳(リライト)の基準とするためのものです。これすなわち、機械翻訳にかけやすい日本語の表現技術ともなるのでしょう。 本誌でも4月より、このテーマを人工知能の成果等を踏まえて多角的視点で扱っていきたいと考えております。 WEB雑誌 The Professional Translator  3月10日号より

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