5年後を考える前に、一度5年前を振り返ってみることにしました。5年前と言えば、一番下の子が3歳になり、少しばかりの時間の余裕ができ、翻訳データベースで見つけた2,3のクライアントから細々と(かなり細々と・・・)翻訳プロジェクトをいただいていました。当時、私にはこれといった専門分野もなく、いただくお仕事は、旅行関係やファッション関係のカタログ、プレゼン資料、当時流行っていたオンラインカジノなどが主でしたが、金融や法律関係の案件が来たときには、お断りするしかない、全くもってお手上げの状態でした。
出力ワード数は、がんばって1日1000ワードがやっと。「10,000ワードを1週間でお願いしますね」などと言われたときには、寝る時間を削っても、それでもあっぷあっぷの状態でした。翻訳会社に履歴書を送るとき、「翻訳の専門分野は何ですか?」という質問に、自信を持って「これだ!」と答えられるものがないのが、もどかしかったのを覚えています。
翻訳の修士号があることを知ったのは、それからしばらくしてからです。翻訳の専門分野がほしいと考え、3年前にバベル翻訳大学院の存在を知り、現在に至るわけなのですが、自分でもこの5年の間にだいぶ変化があったと思っています。5年前の私は、法律のバックグラウンドのない私が、法律翻訳を専門にしようとは、全く想像もしていませんでした。
では5年後はどうなっているだろう。今回のStep4は、5年後の目標をイメージし、どんなスキルまたは資格を取得したいか、1年ごとに考えていく作業でした。翻訳家としてのスキルを証明する資格。えーっと、どんな資格があるんだっけ?と考え込んでいる自分がありました。調べてみると、翻訳技能認定試験には部門ごとに3級、2級、1級とあり、法律関係で言えば、日本ではパラリーガル検定というものが最近注目されているようです。もっと詳しく調べてみる必要がありそうです。まずは、現在取り組んでいる修士号を取得することが、目下の目標でありますが、この翻訳技能認定試験にチャレンジすることを5年計画の中に入れました。
次は、どんなキャリアを歩んでいたいかを1年ごとに考える作業です。どんな仕事、職場環境にいたいのか。いずれは日本に戻ることを希望していますが、とにかく法律翻訳に特化したプロでありたいと思っています。フリーランスとしてだけでなく、企業内の法律翻訳を手がけ、パラリーガルとしてステップアップすることを5年計画に入れました。5年前には到底考えられなかった自分の姿を想像してみることにしました。
今回は、将来のイメージ・ビジョンがいかに大切であるかを改めて感じるプロセスになりました。最近、小学校を卒業するとき、卒業アルバムの「将来の夢、大人になったらなりたい職業」に、私は何て書いたっけかなぁと思い出してみることがありました。私がそこに記したのは「パン屋さん」。今でもはっきりと覚えています。小学校の近くに、種類はたくさんあるわけではないのですが、すべてが手作りというパン屋さんがありました。お店のおばちゃんが焼きそばをその場で焼いてくれて、コッペパンにはさんだ焼きそばパンが、特に私のお気に入りでした。
小学6年生の私に「こんなパン屋さんになりたい」というビジョンと夢を与えてくれたパン屋さんが存在しました。あれから、なりたい職業は変わりましたが、ビジョンを具体的に持つことが大切であることに変わりはないのではないでしょうか。具体化した5年後のビジョンに向かっていくことが大切であることも実感しています。できるだけ鮮明なビジョンをイメージするために、もう少しリサーチしてみようと思っています。
最後に。私の翻訳との出会いは、14年前にさかのぼります。妊娠をきっかけに、フリーランスでできる仕事を探していて、バベル東京校の通学コースに通い始めたのがきっかけです。翻訳基礎とコンピュータ翻訳の基礎コースを受講し、出産を迎えることになったのですが。このコンピュータ翻訳基礎コースを担当されていたのが、小澤先生で、評価や採点はとても厳しい、それでも温かいお人柄を感じさせる授業が印象的でした。あれから10年以上が経ち、バベル翻訳大学院の受講を決め、再びバベルの門をたたくことになり、小澤先生がコンピュータ翻訳コースを担当されていると知ったとき、とてもワクワクする思いと同時に、私は、ビビッっときました。「講師」。こんな翻訳との携わり方もある、と思いました。あくまでも夢は大きく。未来を決めるのは自分自身。そんな気がしてきました。
クリーバー 海老原 章子(くりーばー えびはら しょうこ)
インターナショナルパラリーガル&法律翻訳専攻。現在アラブ首長国連邦在住。3児の母。