学長メッセージ Part4 『 地球翻訳図書館 ー バベル・ライブラリー 2013 』プロジェクトに寄せて

学長メッセージ Part4 『 地球翻訳図書館 ー バベル・ライブラリー 2013 』プロジェクトに寄せて

湯浅 美代子

Chancellor
湯浅 美代子

 バベルグループは、1974年、翻訳者の養成事業により創業したのですが、その後、月刊誌「翻訳の世界」を刊行して出版事業を行い、日本と海外を結ぶ翻訳の普及と新人発掘を目指し、海外各地での「翻訳奨励賞」を実施してきました。

 その後、この奨励賞を中核として「バベル翻訳大賞」へと発展させ、新人翻訳家の登竜門として、多くの翻訳家を発掘してきました。また、大量の翻訳時代の到来を見越して、誰でもが安定した品質の翻訳技法を習得できることを目指し、日本語と海外各国語間の翻訳文法(翻訳技法)の研究開発を行い、翻訳学習講座に加え、翻訳検定事業も行うなど、広く翻訳技法の普及を実現して参りました。この翻訳技法を学んだ学習者は25万人以上に及び、優れた人材を数多く輩出しています。

 この修了者の活躍を中心にした翻訳事業、翻訳者紹介・派遣事業、翻訳出版事業、翻訳権仲介事業へと成長・発展し、修了後は翻訳者として活躍される傍ら、教育を担う翻訳教師の方たちとともに、2000年には、翻訳者養成事業の集大成として、ハワイ州ホノルルに、世界初のインターネットによる翻訳専門職大学院を開校、いまでは、世界34カ国に及ぶ地域で優秀な学生が学び、既に翻訳のプロフェッショナルとして活躍されています。

 爾来40年近く、翻訳学習者、翻訳研究者の方々、多くの出版社を始め企業の顧客の方々のご支援を得て、バベルは、翻訳一筋の道を歩み、日本と諸外国との文化交流・ビジネス交流を担う翻訳関連事業に携わってまいりました。この幸運に深く感謝をささげる次第です。

 そして今、2013年という40周年の節目に当り、感謝をこめて、世界の文化交流に一層の役割を果たしたいと考え、「地球翻訳図書館ー バベル・ライブラリー 2013 」プロジェクトを開催することとなりました。

 この、世界文化交流事業としての『地球翻訳図書館ー バベル・ライブラリー 2013 』プロジェクトは、バベル翻訳大学院(USA)の院生と修了生の方々を中心に、世界中で翻訳者・翻訳家の方々や翻訳者を目指す方々の御協力を得て、スタートさせたいと思います。

 昨今のWEB環境、ITの発展は、世界に影響を与え、その仕組みを大きく変えてきています。出版物のデジタル化、オンディマンド化の技術の進化、スマートフォン・iPad・タブレットや、無線のWi-Fi等のデジタルメディアを受け入れる環境が整い、世界各地に普及したことによって、翻訳出版や、映像メディアの翻訳がより容易になり、古典の新訳から新進作家の作品まで、さらには、英日間のみならず多言語間の出版、映像の翻訳がよりいっそう求められてきています。インターネットの普及により、世界のどこからでも簡単にアクセスできるようになり、世界はまさに一つのマーケット、グローバルマーケットになったのです。

 しかし未だに、言語障壁のために、世界の知識・叡智が十二分に共有、享受できているとは言えません。緊密と思われる日米間でさえ、米国で年間に刊行される15万点ほどの出版物のうち、日本で翻訳出版されるものは、日本の年間出版点数8万点のうちの4,5千点にしかなっていません。ましてや、日本語の出版物の英訳出版はさらに少ないのです。これがその他の言語へとなると、さらに少ないということはご承知の通りです。

 2011年の「3.11」の大きな後遺症を、日本ばかりでなく世界も同時に抱えています。原発から、新たなエネルギーへシフトしていこうとする世界的なうねりの中で、その回答を提供する出版物がありますし、これからも発掘されていくでしょう。それらの本がすぐに多言語へと翻訳され、いち早くインターネットを通じて出版されれば、まさに人類共通の知恵として働くことになるのです。

 私達日本人は、あの3.11の大震災を体験したことによって、多くの人々が何かに目覚め、変わり始めています。まさに今、世界は苦難の時を迎えているのでしょう。しかし、この苦境を耐え、地球が豊かで健やかな星である状態を取り戻して行くために、
あの3.11以降の心の変化を自覚する時、「世界の言葉は一つであった、というバベルの塔の崩壊の前」を思わずにはいられません。

 いまこそ、翻訳に携わる者として、言語の障壁を越えて「世界の人々の心を一つにつなげる」という役割に目覚める時が来た、と言えるのではないでしょうか?翻訳を通じて、世界の‘HAPPINESS’に貢献していけるという、またとないチャンスが来たのです。
私どもも、この40年余り翻訳一筋に携わらせていただいた幸運をかみしめつつ、感謝の気持ちを込めて、今一度、翻訳の意味、翻訳者の役割を宇宙的視野で考え直していきたいと思います。

 既に翻訳者としてご活躍の皆さまや、翻訳者を目指す皆さまにご参加いただき、このプロジェクトが火付け役となり、多言語間の翻訳がより一層活発になることによって、世界中の知識と叡智が人類に共有されるようになることは、これこそ、旧約聖書のバベルの塔の神話にある、散り散りになった人類が、翻訳を通じてひとつになる機会だと言えるのかもしれません。

この『地球図書館 バベル・ライブラリー2013』プロジェクトに、皆様のご支援・ご参加をお願いいたします。

2012年10月吉日

『地球翻訳図書館 バベル・ライブラリー2013』プロジェクト発信人
バベルグループ代表 湯浅美代子

バベル翻訳大学院(USA)湯浅学長メッセージ

>>Part5 『 地球翻訳図書館 ー バベル・ライブラリー 2013 』プロジェクト