学長メッセージ Part2 『バベル翻訳大学院のミッション ~ 活動の目的について』

湯浅 美代子

Chancellor
湯浅 美代子

皆さん、こんにちは。バベル翻訳大学院の湯浅でございます

前回(Part1)は、なぜバベル翻訳大学院がインターネットの翻訳大学院として開校したのか、なぜ今翻訳大学院を開校したのかということについてお話をしました。今回は、バベル翻訳大学院のミッション、活動の目的についてお話をしたいと思います。

バベル翻訳大学院の目指しているところというのは、翻訳について、翻訳とは何なのかということを考えていく、研究していくということにあるのですけれど、そのほかに、翻訳は何か、ということを考えていく上で、翻訳の技術、どのような技術が必要なのか、また現代社会において、翻訳ビジネスというのは、とても重要な役割を果たしていますので、そのビジネスとしての技術の水準というのは、どのようなことが必要なのか、という、ビジネスに関する内容、その他についても研究していく、ということがあります。

また、もうひとつは、翻訳というものを担当する翻訳者というのは、現代社会において、どのような役割を果たしていくのか、ということについても、研究をしていこう、ということがございます。

翻訳というのは、ただ単に、ビジネスとして行われるというだけではなく、様々な文化の交流や、様々なコミュニケーションの現場で行われています。必ずしも翻訳者として認識していなくても翻訳のサービスといいますか、翻訳の作業をしている、ということは、非常に多くの場面であります。そういう意味でも、翻訳というのをどのように考え、翻訳者というのはどのような考え方で、または、どのような姿勢で進めていけば良いのかということも、同時に考えていく必要がある、というふうに思っています。
また、翻訳者が果たす役割というのは、いったい、どのようなものなのか、ただ外国語を、必要とされる言語、対象の言語に変換して、提供すればよいという、大きな枠組みではそのように表現することができるかもしれませんけれども、そこの中には、様々な情報が省略されています。 いったい読み手は誰なのか、誰に対して提供していくのかというようなことを考えなくてはいけませんし、また、原作者は、誰に対してどんなことを言おうとして考えてきたのか、というようなことも深く考えていく必要があります。

しかし、その都度その都度、考えながら仕事をしていくというわけには参りませんね。 従って、そのような基本的な事柄というものを大学院でしっかり学んでいく、そのことによって、1冊1冊翻訳する時に、この翻訳はどうしたらよいのだろう、というふうに悩んでしまわないように、その前に基本的な技術、翻訳の水準というものをしっかり持つこと、そのように仕事ができるような水準に持っていくことが、バベル翻訳大学院のひとつの目的ということもいえます。それら全体を含めて、技術の水準というふうに考えているわけです。

それからまた、社会は大きな進展をみせていますので、いろいろなコミュニケーションの現場で、それらを必要とするクライアント、翻訳を必要とする人たちから、様々な要求が出ています。ほんの数年前まで、このようにわたしは翻訳すればいいんだ、と思ってきたことも、最近では、随分ニーズが変わってきたために、もっと早くしなくてはいけないとか、もっと必要な情報としてそぎ落としてほしいとか、そういう多様なクライアント側のニーズ、社会的な要請というものも起きてきています。こういうことも、大学院在学中に、しっかり研究することによって、実際にビジネス社会に出た後、本当に活用できる、自在に使いこなして、顧客のニーズに十分に応えられる翻訳者の役割、翻訳人材というものを育てていこうというふうに考えているのが、バベル翻訳大学院の目的、事業目的のひとつということがいえます。

はじめに、翻訳とは何かを研究し、そして翻訳者の養成、翻訳者というのはどのような役割を果たすのか、という2番目の目的がありましたけれども、最後に、これらの翻訳とは何かということを研究し、そしてそれを実現できる翻訳者を育てることによって、バベル翻訳大学院が本当に目指しているものが、3番目にお話しすることです。

それは、わたしたち、今、現代社会は、非常に緊密なコミュニケーションを必要とする地球上に存在しているわけですけれども、ありとあらゆる人々が、様々なビジネス・コミュニケーション、または、人と人とのコミュニケーション、異文化コミュニケーションを必要としています。それらに、多くの人材が、優れた翻訳能力をもつ人材が役割を果たすことによって、コミュニケーションがスムーズに促進される、そしてビジネスも豊かに実りを実現するでしょうし、また、わたしたちの生活も豊かになっていきます。つまり、様々な異文化コミュニケーション、ビジネス・コミュニケーションをスムーズに行う、そういうことを提供する、実現することによって、わたしたちは、人間社会のますますの進化発展、そして豊かな社会の実現を目指したい、そしてそれらは、地球が、やはり平和であること、わたしたちが、常に平和な社会に、そして豊かな希望を持って生きていける、そういう社会を実現する、そのような担い手として翻訳者を養成したい、そして、翻訳とは何かということを研究していこうというふうに考えているわけです。

わたしたちは、そもそも、たった一人では生きていくことはできませんし、様々な外界物、つまり、自分以外のものやひととコミュニケーションをはかっています。バベルは、翻訳と言うのはコミュニケーションである、というふうに考えているわけですが、どのようなコミュニケーションがもっとも望ましいのか。たとえば、ビジネスにおいて、クライアントとの間に取り交わされる契約書、これらも、コミュニケーションになりますし、また、お客様との間に取り交わされるEメール、様々なやりとりもコミュニケーションです。

そして、たとえば、医療の現場を考えますと、外国に行って、病気になって、とても心細いところに、外国で、言葉が十分に通じないところで、医療を受けるということになりますと当然、それらの治療の内容がどういうものなのか、とか、様々な状態、この病気はどんなもので、いったい治療費はいくらかかって、どのくらいの期間入院しなくてはいけないのだろうか、そういうことも含めて、多くのコミュニケーション、ある意味では、契約書にサインをするというようなことも発生するかもしれません。いろいろなところで、わたしたちの生活の様々なところで、翻訳、つまり、コミュニケーションが発生しているわけですが、それらを最適の形、状況に必要な最適の形で提供していく、このようなサービスが、翻訳者、または翻訳ビジネス、または翻訳に従事する人々、ビジネスを提供する人々に求められているということがいえると思います。

バベル翻訳大学院は、国を、日本なら日本、アメリカならアメリカ、と言う風に考えているわけではなく、多くの国や文化を超えて、広く行われるグローバル・ビジネス、グローバル・コミュニケーション、異文化コミュニケーションの様々な方法、その現場に常に密着し研究をし、そして新しく必要とされる翻訳技術を研究開発して、それらを使いこなして実際に提供できる翻訳者を養成していく、そのように考えているわけでございます。

ところで、今日は、最後にひとつ、翻訳とは何なのかについて、少し考えていることについてお話したいと思います。

翻訳というのは、皆様もご存知のように、まず、はじめに原文があります。原文を読み解く、十分に理解するということが翻訳の第一番目の仕事、ということになります。 翻訳者は最初、読者となっていくわけですが、この読み手としての理解、これが十分でないと、十分な翻訳、そして、その表現も、十分ではないということになってきます。ですから、原文を理解するということが、とても大事です。

そして次に、それではそれを、どのような対象者に対して、翻訳表現をしていくのか、再表現をしていくのか、ということになりますけれども、そのときに、専門知識やその文章またはコミュニケーションの目的というものが、きちっと認識されていないと、自分の翻訳技術の方法論だけで済ましてしまうということがあります。そういう意味で、まずは、自分が受け手として読み、そして十分に理解したかどうか、ここが分からなかった、ここが十分に理解できなかった、ということを、読者の代表として、十分に調べて、そして自分がしっかりと理解をしていく、そのプロセスが、ある意味で、翻訳のプロセスなんだ、ということになります。

そして、最後に、それを、読み手としての読者、つまり読者がどのような形で理解するのか、理解し易い形に再表現していく、書き直していく、または、自分で翻訳文を創造していくということになりますけれども、そこで大事なことは原文に忠実だということです。原文に忠実と言うのは、なにも、直接的な訳文というものを意味していません。つまり、読者が十分に理解しうる表現形式として、どれだけ適切に表現するか。原文に忠実である必要がある部分というのは、文の構造、構成ということになります。

たくさんの文章があるものを、順番を変えてしまったり、大きく削除してしまう、ということが、必要な場合、また、クライアントからの要求や、または、現著者からの要求から、あることもありますけれども、それらがない場合は、一般的な考え方としては、文の構造を適切に理解しながら、同時に、いかにわかりやすく非才表現をしていくか、という翻訳表現のプロセスということになります。そういう意味で、翻訳文つまり原文をいかに理解するか、ということが、とても大事だ、翻訳者は、はじめは読み手、読者であるということをあえて強調させていただきたいと思いました。

バベル翻訳大学院(USA)湯浅学長メッセージ

>>Part3 『バベル翻訳大学院(USA)開設の思い』