翻訳プロフェショナルはAIに代替されるのか!?

翻訳プロフェショナルはAIに代替されるのか!?

米国翻訳専門職大学院(USA)副学長 堀田都茂樹

初めに以下の18分のTEDのスピーチを聴いてください。
題して
‘How great leader inspire action’

このWhyからはじまる行動パターンは決して一部のビックな経営者に限らないと思います。

さて、現在の市場に目を転じてみましょう。ビックデータ、統計的手法が進化する中、第3次AIブームが到来しています。ここ10年、20年先には我々の仕事の半分が消えてなくなる、いかにも雑誌が売れそうなテーマで危機感をあおっています。典型がSingularity(技術的特異点)の危機、2045年には人間がAIに使われる時代に突入すると言われています。

これらに踊らせられて右往左往するほどばかげたことはないと思いますが、しかし、常に主役たる人間としては、これらの議論の中に含まれるパラダイム変換には気づく必要があるでしょうし、その上で、先手先手で手を打つ必要はあるでしょう。

翻訳の分野においては、現在、ニューラル型機械翻訳の領域に入り、特定の分野ではかなりの精度の翻訳が期待されてきたとは言え、まだまだ全面的に任せるには程遠いというのが、この業界の常識です。従って、我々のスタンスとしては支援ツールとして使えるなら分野を特定するなどして活用することです。MTを使いこなす翻訳のプロフェショナルは分野によっては市場価値も出てくるはずです。

AI,人工知能には以下の限界があると言われています。
・意思がない
・知覚できない
・事例が少ないと機能しない
・枠組みのデザインができない
・問いを生み出せない
・ひらめきがない
・常識的な判断ができない
・リーダーシップが取れない
(安宅和人 ヤフー チーフストラテジーオフィサー)

ということはこれを読みかえると、
・意思をもって
・自ら問い(WHY)を設定、課題を設け
・枠組みをデザインして
・リーダーシップをもって
課題を解決していくことがAIに代替されず、AIと相互補完関係でハピーな将来像が描けると言ってよいでしょう。

最初にご紹介したTEDのスピーチを聴かれた方は同様の考える枠組みに気づかれたと思います。

一方、こんな言い方もされます。
AIで代替されにくい仕事とは

1. 商品企画、映画を撮るといったクリエイティブ系の仕事
2. プロジェクト管理や会社経営などのマネージメント系の仕事
3. 介護、看護、保育のようなホスピタリティ系の仕事
(井上智洋 大学教授、AI社会論研究会共同発起人)

ではこれらを勘案して、翻訳力をベースにどう起業するか、を改めて考えてみましょう。

翻訳はある原文を他の言語に変換するだけのクリエイティブ性に欠ける行為と考えている方はまさか皆さんの中にはいらっしゃらないと考えますが、今一歩進んで、翻訳にクリエイティブ性という付加価値を求めるとすれば

・翻訳リサーチャー、研究者
・翻訳ジャーナリスト、記者
・レクチャラ―、教授(なまじの専門家より翻訳者の方がより専門家)
・翻訳教師(大学、各種学校を含めると500以上の教育機関で翻訳教育を実施)
・ライター(翻訳の専門分野でライターもめざす)
・日本語教師(日本語教育の中・上級はほぼ翻訳教育)

更に、翻訳にマネージメント性を持たせるには、いち翻訳者としての仕事にとどまらず、特定の目的のために翻訳者等を集合したプロジェクトマネージメントに関わることです。

ここで思考実験として、以下のバベル42年の歴史で積み上げてきた以下の事業のプロジェクト化を考えてみてください。(実はこれがこれからバベルの大学院生、アラムナイに期待する仕事の仕方ですが)

・翻訳教育ビジネス
・翻訳ビジネス
・翻訳出版・編集ビジネス
・版権調査・仲介ビジネス
・資格ビジネス

例を挙げましょう。
例えば、(コストセンターとして)一人のプロとして翻訳を受けるのではなく、プロフィットセンターとしてそのプロジェクトの以下のマネージメントも任されて業務を遂行することです。
1.品質管理(Resources)
2.スケジュール管理 (Time)
3.コスト管理 (Cost)
4.顧客管理 ( Client)
5.コンプライアンス管理( Compliance)
*これらの管理項目は一社法人日本翻訳協会の翻訳プロジェクトマネージャー試験の試験範囲です。
http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm.html
http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm_2.html

さて最後に、最初のTEDのスピーチに戻りますが、バベルグループのビジネスにおけるWhyは?

それは、
1.翻訳者のプロフェッショナリズムの確立
月刊「翻訳の世界」をはじめ翻訳の理論、実践の雑誌を現在のデジタルマガジンに至るまで700号を刊行、また、翻訳学習書、翻訳書の出版を重ね、現在は、これらを統合したプロ翻訳者のためのライブラリーを再構築中。また、翻訳教育を多分野で実践、世に25万人を越える修了生を輩出し、約20年前より米国にて翻訳専門職大学院教育をスタート

2.翻訳会社のプロフェッショナリズムの確立
専門別翻訳ビジネスを展開、翻訳者紹介、翻訳者派遣事業、更には版権仲介事業、翻訳者の資格認定事業、翻訳プロジェクトマネージメント検定の開発

3.翻訳教育のプロフェッショナリズムの確立
一般の高等教育認証から翻訳の高等教育に特化した翻訳高等教育認証機関を設立

その上で、翻訳の世界的意義と日本の世界における翻訳の役割の再認識した‘翻訳者’が主導する翻訳立国をめざすことと考えます。

そして、以下をWhyの核となる、共有の使命としたいと考えたいと考えています。

1.世界中の未訳の素晴らしいコンテンツを翻訳し、人類の共有財産とする。就中、日本の素晴らしいアイデア・コンテンツを多言語に翻訳し世界に広める。
2.翻訳を通じて日本と世界の正しい相互理解を促進し、東西融合を実現する。
3.翻訳を通じて多くの方々に気づきと喜びをもたらし、幸せを実現する。

めざすところは、智の宝庫である地球【 Global Knowledge Garden】 において、翻訳を通じて智を共有し、人々に気づきをもたらし、共に喜びを分かち合うことです。

最後は我田引水の観が否めませんが、是非、バベルに関係される皆様が、今一度、自らにWHYを問いかけて、意思が合致すれば共に使命を共有し、共に事業パートナーとしてビジネスができればこれほどの喜びはありません。

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