「言語の役割とその使い方のスキルとは?」 小池 堯子さ

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今回のキャリアコンサルStep2に回答を送った理由の一つは、自分がなぜ、今、翻訳の勉強をしつつ、翻訳の業務に携わっているのかを私なりに明確にして、はたしてこの選択が自分にとってプラスになっているのかどうかを確認したかったからです。

 Step2-1で、自分がこれまで関わってきた仕事を列記すること、それは取りも直さず、自分の生きてきた足跡を見直すことにもなりました。また、これまでの仕事の中で何をしていた時の自分が一番ハッピーだったのか、なぜハッピーだったのかを分析する作業を通して、追い求めてきたもののあり方を考えさせられました。質問では「満足度」という言葉でその評価を表現していますが、考えてみれば、一つ一つの仕事はそれぞれに大変なことや困難なことがあり、その都度ストレスを感じたり不満を感じたりしていました。ただ、そうした過程そのものを通して、結果的に自分が幸せだったのか、或いは過去の想いとして、自分の人生にとってどんな時期だったのかを考えながら評価を下しました。 私はこれまで、ほとんど一貫して「言葉」に関わる仕事に携わってきました。原点は単純に本を読むことが好きだったからなのですが、しかしそれを仕事として選んできたのは、「言葉」が私にとって自己を表現しやすい、最も使いやすいツールだったからだと言えます。今回のアンケートでは、そのツールを使う仕事になぜ満足感があったのか、という問いがあり、そこでさらに一歩踏み込んだ分析をすることになりました。その分析の過程で気づいたことに「言葉」の役割は何かということがありました。言語という道具は自己表現であると同時に、それを他に伝える、という重い役目も担っています。その認識が明らかになってきたのが、step2-2への回答でした。

 Step2-2では、これまでの自分の経験ではなく、これからの自分という視点からの問いかけで、では、本来はどんな仕事をしたいのか、それはなぜなのかという問いかけでした。 そこで私が考えたのが、step2-1で回答した「これまでの仕事への満足度、なぜあなたはその仕事に満足を感じたのか、それはなぜなのか」を基にした方向性でした。最も満足度が高かった「自分の興味のある文章表現」がやはりこれからも関わりたい仕事であり、それによって何ができるのか改めて考えたときに、他の人にまたは社会に何ができるのか、という問いかけになりました。その問いかけがさらに「カウンセリングなどの仕事」という、自分の心のどこかでは考えていたけれどもなかなか表面には出てこなかった選択になって表れました。では、カウンセリングと言う仕事で何にどうやって貢献できるのか。過去の経験、特にアメリカの高校生など若い世代に日本語を教えてきた経験から学んだことは、教えると言うのは単なる知識の伝達ではなく、教える側の人格や人生への視点にも深く関わってくる、ということでした。それが次の選択「仕事をすることによって自分にも学ぶことのできるもの」という答えに発展していきました。なぜなら、自分が学び自分の中の容量を高めないことには他の人に与えることのできる経験の許容量が小さいのではないか、と考えたからです。

Step2-3「興味ある社会的トレンド」では、では自分が関わりたいと思っている他者、社会とは自分にとってどんなものなのかを分析する問いかけでした。いくつか私自身が関心を持っている事柄を列記し、なぜそうした社会事象に興味があるのか答えていくうちに気づいたのが、結局のところ根っこにある想いは一つで、人の想いをどう理解し、他者に何をどう伝えていくのか、ということでした。そこで、グルリと一回りして、戻ってきた原点が言語の役割、その言葉を使いこなせる自分自身のスキルの向上ということです。 Step2のまとめで「自分らしさ、自分の売り」「仕事に求めるもの」「社会的役割」に関して、ほぼ自分の求める方向がまとまってきたのを感じました。自分という人間の特徴と限界、その認識の中でどんな仕事をやりたいか、そしてその仕事を通して社会に何ができるのか、結局、何を求めて社会とかかわり、それが自分の生きがいというか生き方の指針になっていくのか、大きく言えば人生観の再確認ということです。

私たちは2013年という21世紀の始まりの時代を生きています。社会との関わりとは現在の事象との関わりです。その中で自分が何を考えどう生きていくか、そして自分に何ができるのか、何のために何がしたいのか、そうした根本の問いかけがこのまとめの回答でさらに拡大していくのですが、同時にはっきりと彼方に見えてくるものがあるように思いました。その見えてきたものを言葉にすると、すなわちそれが「My Success Career 私のしたい仕事は」という最後の問いかけに対する答えです。言葉を使う翻訳者として何ができるのか、何がしたいのか、或いは翻訳を超えて自分に何ができるのか、何を目指したいのか、それらの問いかけに対する第一歩がここにあるように思います。

小池 堯子(こいけ ぎょうこ)
バベル翻訳大学院在校生。現在修了作品の英訳チェックと編集、英文の作成作業に取り組んでいる。3年前にアメリカから岡山へ移住。現在アメリカ人の夫と田舎暮らし。雑誌編集者、レストラン経営、日本語教師を経て、現在編集、翻訳業に携わっている。

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