40余年前、1974年に「英語教育大論争」が日本のマスコミを騒がせ、米国のNewsweek誌でも取り上げられたことを覚えている方はいらっしゃるでしょうか。
当時、私は熱心?に英語を勉強し、JTBで通訳をしていたこともあり、今でもその議論は鮮明に覚えています。
当時は、日本の経済も伸び盛り、世界第2位のGDPを誇っていました。
そんな時代に、英語教育は一部のもの(国民の5%)に提供すればよいとした元外交官、当時自民党参議院議員の平泉渉氏は、
・英語教育の成果が上がっていないのは、不効率な教え方で受験英語を強制しているから
・高校の外国語課程は志望者のみにして、大学入試に外国語を課さなくてもよい
・志望者には毎日2時間以上、毎年1か月以上の集中訓練を行い、「技能士」の称号を設ける
と主張、
一方、積極的推進派の先鋒の上智大学名誉教授の渡部昇一氏は、これを亡国の英語教育改革試案として、
・平泉案は現状分析から結論に至るまで、すべて誤解と誤謬で成っている
・英語教師は伝統的な方法(英訳、英作文、文法)にゆるぎない自信を持て
・英語学習は知力の極限まで使ってやる母国語との格闘である
・外国語によって知をひらくのは聖徳太子以来の日本の伝統である
と主張しました。
一方、現在に目を転じると、教育再生を掲げる安倍内閣は2020年から小学校5年生を対象に英語を教科化し、大学入試にはTOEFLを導入すると言い、各界で物議を醸し出しています。
ことほど左様に、今の日本においても、未だに平泉氏VS渡部氏のこの40年前のディベートは古びていないと感じるのは私だけでしょうか。
翻って、英語を背景とする日本の経済環境は
・マーケットの縮小
・インターネットビジネスによる英語情報の氾濫
・アジアビジネスの英語化
と当時と状況は大きく変化しています。
また、世界はボーダレス化の反動として、アイルランド問題をはじめとするローカル問題が際立ってきています。
言わば、多様化、Boundary Spanningの時代に突入したわけです。
とすると、これからの英語教育はどうあるべきでしょうか。
楽天を典型に、英語の社内公用語化がマスコミを騒がせ、海外のビジネススクールのケーススタディの素材になっていると聞きます。
しかし、日本人同士が、業務の生産性を落とすリスクを負ってまで英語でコミュニケーションをとることがはたしてモデルと言えるのでしょうか。100年たっても、企業内で日本人同士が英語でコミュニケーションをとる時代は来ないように思います。
とすると、このグローバル化、そして、多様化の時代に英語教育はどうあるべきでしょうか。日本語(国語)教育の必要性はもちろんのこと、英語そのものの教育以前に必要なことがあるのではないでしょうか。そもそも英語力はその母国語としての日本語力を凌ぐことはないわけですから。
この分野の第一人者、渥美育子さんはこれを世界共通教育と称し、自文化をはじめとして、世界各国の歴史に根づく価値観、文化観を共有することが必要と説きます。
ここで敢えて、翻訳的観点から言わせていただくとすれば
価値観が多様化し、異文化対応が要求される状況では
・使う英語も一種、グロービッシュを志向するPlain English(バベルではこの英語教育を20余年にわたって実施しています)を採用すべきでしょうし、また、お互いの文化、言語を尊重したうえでの
・教育的通訳
・教育的翻訳
の導入を主張したいと考えます。
2つの言語を等距離で変換できる通訳的、翻訳的教育が今後求められていくように思います。
そして、その先に見えてくるのが、バベルグループが10年来主張していますBilingual Managementです。
Globally Integrated Stageに在る在日外資系企業は多国籍企業グループの一員として、社内の日本人間のコミュニケーションは日本語でありながらも世界のグループ各社間のコミュニケーションはもちろん、英語話者が会議に一人でもいるときは英語に切り替えるといったバイリンガルマネージメントを当然のように採用しています。
日本企業のうち電機、自動車などの先進型海外進出企業は長く日本国内においては日本語、海外進出先においては英語、といった分離した二言語による経営運営をしていましたが、グローバリゼーションの進行によって一挙に国内海外一体経営体制が進められ、上記のような日本語と英語によるバイリンガルマネージメントが進行しています。
グローバル3.0(自分のルーツを意識したコスモポリタニズム)を引き合いに出さずとも、企業が効率、効果的に、自らの根っこを大事に企業運営していくことが必要な時代ではないでしょうか。
以上
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