説明
★内容★
子どもにとって、唯一無二のかけがえのない存在、両親。その両親から保護ではなく、虐待を受けて育つということは、想像を絶する苦しみでしょう。
著者のジェニー・トムリンは、もの心つくかつかないかのときから、実の父親から虐待を受け続けてきました。母親は、夫におびえ、子どもたちへの愚行を知りながらも止めさせることができないのです。
一言で虐待といっても、身体的、性的な暴力、世話をしない、無視やいやがらせなど、種類は様々ですが、彼女はそのすべてを経験したといっても過言ではありません。
思わず目をおおいたくなるような、赤裸々な場面が次から次へと描かれているので、読み進めるうちに「子どもを守ってくれる大人がいないなんて!」と、怒りすら覚えるかもしれません。
ですが、このような状況下にあっても、人間のあたたかさが時おり垣間見えるときもあります。それは、唯一の救いである母方の伯母が、著者とその兄妹たちに深い愛情を注ぎ、いつも気にかけてくれ、亡くなるまで「親」以上の存在だったことです。
本書は、英国人の人気女優・歌手として活躍中の、マルティン・マカッチョンの実の母親が書いた本としても、話題になりました。
マルティン(著者の妹キムに瓜ふたつ!)は、英国のドラマ『イーストエンダーズ』をはじめ、そのほか多くの作品に出演中。映画『ラブ・アクチュアリー』では、ヒュー・グラント演ずる首相が恋に落ちる秘書、ナタリー役で特に知られています。
「この本が書けたのは、いつも変わらない愛情を持って娘が応援してくれたから」と、著者のジェニーは語っています。この本の完成は、陰ながらささえる娘マルティンの功績でもあるようです。
ひとりの女性が、悲惨な過去を受け入れて、いまを前向きに生きている姿勢に、人間が持っている目に見えない深くて大きな「何か」を感じとることができる作品です。生きることに懸命な、おさない少女の姿に、私たちは何を思うでしょうか。
★著者★
ジェニー・トムリン
ジェニー・トムリンは、 1956年ロンドン生まれ。幼少時より父親から虐待、母親からネグレクト(育児放棄)を受ける。
15歳で学業を終えて仕事に就き、16歳で実家を出る。20歳のとき、現在イギリスで女優・歌手として活躍中のマルティン・マカッチョンが生まれ、その後結婚して息子L・J(ローレンス・ジョン)にも恵まれた。2005年、虐待に苦しんだ自らの生い立ちを赤裸々に綴った本書を出版して注目を集める。
現在は、夫アランと共にフランスで幸せな家庭生活を送っている。児童虐待撲滅運動を推進する慈善団体の活動に積極的に関わるかたわら、本の執筆にも意欲的に取り組んでいる。他の著書として、本書の続編である『声なき姉妹』、初の小説作品『スウィーティ』(いずれも未邦訳)などがある。
原書:BEHIND CLOSED DOORS
タイトル:『閉ざされた扉の向こうで』
定価:1,500円+税(1,575円)
著者:ジェニー・トムリン
訳者:笹山祐子、西宮久雄、
原由紀子、藤井裕子、藤竹千晴
監訳者:中道暁子
出版社:バベルプレス
判型:四六版
頁 :304ページ
ISBN:978-4-89449-116-8
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