説明
★内容★
舞台は、1959年カナダのハリファックス。ロザリー・ノーマンは11歳の女の子。大家族の末っ子で、現在は父と母、すぐ上の姉と四人で暮らしています。ある暑い夏の日、“世界で一番”年をとっている気丈な母が、階段から落ちて足の骨を折る大怪我をします。
このときロザリーは、母が怪我をしたのは「自分のせい」という秘密を抱えてしまいます。
そんなとき、両親は、近所に越してきたばかりの少年デーヴィッドに庭仕事の手伝いを頼みます。子どもたちの間で〈墓掘り〉と呼ばれている一風変わった男の子が、自分の家で働くことに戸惑うロザリー。
そこへロザリーの大好きな従兄のジョニーがいなくなってしまったというニュースが
飛び込んできます。ジョニーのことに関して家族は何か隠しているようだと感じるロザリーですが、確信がありません。あるとき、ひょんなことからデーヴィッドの協力を得て、2人でジョニー探しを始めることになるのですが、果たして二人はジョニーを見つけることができるのでしょうか?
なぜジョニーはいなくなったのか? ロザリーの秘密の行方は?
子どもの視点から語られるこの物語は、大人にとってはハッとするほど魅力的な言葉にあふれています。11歳の、ちょっぴり大人びたところがある少女、
ロザリーの語りには説得力があり、思わず引きつけられます。絵を描くこととマンガを読むことが何よりも好きな主人公らしく、時おり自分に起こった状況について絵の表現を使ったり、マンガの場面に例えて説明するところはおもしろみがあります。
登場人物が持つ独特の個性も、その台詞や行動に生き生きと描かれ、全体を通して楽しんで読める作品に仕上がっています。年代に関係なく、共感できるセリフが多いのも、この作品の魅力のひとつでしょう。
自分の不注意が起こした母の怪我。いとこの失踪。風変わりな少年との交流。
ひと夏、それも2週間のあいだに起こった出来事を通して、ロザリーは家族の秘密を発見するだけではなく、家族の大切さ、真の友情、そして自分にとって世界で一番大切な場所を見つけていきます。本書は、ひとりの少女の成長物語でもあり、
また、アットホームなぬくもりにあふれた雰囲気は、人と人との「つながり」の物語でもあります。現在社会ではおろそかになりつつある家族関係や人間関係などのあり方を見直すきっかけを作ってくれる優れた作品です。
★物語の舞台、カナダ ハリファックスについて★
この物語の舞台となったのは、カナダのハリファックス。物語は、1959年の暑い夏休みの出来事です。
大西洋沿岸の港のある古きよき街ですが、1996年に旧ハリファックス市とダートマス、ベッドフォード、ハリファックス郡が合併し、バンクーバーに次ぐ人口となり、カナダ大西洋岸地方最大の文化・経済の中心都市になっています。
また、ハリフォックスは日本の函館と姉妹都市になっています。1912年に沈没したタイタニック号の事故現場に比較的近いことから犠牲者の墓地があることでも有名です。
★著者★
カナダのノバスコシア州、アナポリス・ヴァレーで生まれ育ち、現在はトロントに在住。長く児童文学の批評、広報、編集に携わり、カナディアン・チルドレンズ・ブックセンターで図書コーディネーターとして活躍してきた。
現在はハーパーコリンズ カナダの児童文学編集責任者であり、また児童向・YA(ヤングアダルト)向けの作品を手がける。
『グローバル・アンド・メイルズ』に寄稿する傍ら、ライアーソン大学で出版課程の講師も務める。国際児童図書評議会カナダ支部の会長を務めた経験もある。
本書の原書“Johnny Kellock Died Today”は、
2006年にダイアーのデビュー作として発表された。その他“Batter Up Baseball”(2007年)、“Watch This Space”(2010年)などがある。
読者層:中学生以上、大人が読んでも
楽しめる。
原書:Johnny Kellock Died Today
タイトル:『ロザリーの秘密~夏の日、ジョニーを捜して~』
定価:1,200円+税(1,260円)
著者:ハドリー・ダイアー
訳者:粉川栄、三好玲子
出版社:バベルプレス
判型:四六版
頁 :188ページ
ISBN:978-4-89449-114-4
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