説明
★内容★
2008年に日本全国看護師大会が東京の帝国ホテルで開催されたとき、ゲストとして壇上に登場されたのは、本書の著者であるテルマ・ロビンソン女史でした。ロビンソン女史は、第二次世界大戦中に看護教練生として、アメリカ軍傷病兵を看護されました。
第二次世界大戦中に日本人女性は、兵士として戦った夫や息子を失いました。アメリカ空軍の空襲によって、多くの日本国民が住居や家族を失いました。広島に投下された原子爆弾は市街地を破壊しただけではなく、ようやく生き残った人々さえ原爆症で生涯苦しめました。
世界大戦は、日本だけではなく、アメリカをも苦しめました。多くの兵士が傷や病に倒れ、深刻な看護師不足に陥ったのです。その状況に対応するため日系二世の女性たちが登用されました。明治時代に国家の移民奨励によってアメリカへ移住した日系アメリカ人たちは、大戦が始まると強制収容所へ送られ苦しい生活を強いられましたが、その中で看護教練生の募集に応じた若い日系二世の女性たちは「祖国アメリカのために」という気持ちで働いたのです。
本書には、こうした日系二世の女性たちの実話が書かれています。
ロビンソン女史来日後、看護に携わる大勢の方々が本書を購読してくださいました。人種や国籍を超えて、傷病者を誠心誠意看護した先輩たちの手記が、読者の方々の心に届いたことと思います。
2016年5月に、当時のアメリカ大統領バラク・オバマ氏が広島を訪れ、自ら折った折り鶴を捧げて平和を祈りました。
世界のあちこちで争いが続く今、もう一度平和の大切さを思い起こしながら、世界大戦を生きた日系人女性たちの真剣な生き方に目を向けたいと思っています。
(文)監訳者:福井あやこ
★著者★
テルマ・M・ロビンソン
Thelma・M・Robinson
テルマ・M・ロビンソンは、第二次世界大戦中看護教練生となり、看護の仕事を始めた。夫が兵役から戻ると、専業主婦となって4人の子供を育てながら、看護の学位を取得するため学校に通う。修士号を取ってから仕事に復帰し、コロラド州で、小児科の登録生看護婦として特別な治療の必要な子供たちを看護し、その家族の心の支えとなった。23年間にわたり看護の現場で活躍したほか、引退後は、米国看護教練生部隊について初めて書かれた「Cadet Nurse Stories:The Call and Response of Women During World WarⅡ」(共著)を出版。
原書:NISEI CADET NURSE OF WORLD WAR Ⅱ
タイトル:第二次世界大戦を生きた日系人女性たちの物語
著者:テルマ・M・ロビンソン
訳者:安齋奈津子、上田忠、各務美香、高平知代子 、長谷龍一・ヒヤシンス淳子
監訳:福井あやこ
ISBN:978-4-89449-069-7
出版社:バベルプレス
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