説明
★内容★
最後の将軍・徳川慶喜の警護団として華々しく戦い、散っていった新選組。しかし、小説や映画、YVドラマ、あるいは漫画やアニで紹介されるのは、近藤勇、土方歳三、沖田総司といった人物像や池田屋騒動といった出来事の断片でしかない。
新選組に関する情報の多くは歴史の中に埋没してしまっている。本書は、新選組の歴史の些末な事柄よりも、新選組の精神と、歴史における位置づけに重点をおいて書かれている。例えば、雨の音は暗殺シーンにドラマチックな効果を与えるが芹沢鴨が暗殺された夜に雨が降っていたかどうかは、文献によって見解が異なる。
だが、天候よりもはるかに重要なのは、芹沢暗殺の理由、その血なまぐさい出来事を取り巻く状況、
その歴史的意義ではなかろうか。本書の著者のロミュラス・ヒルズボロウ氏にとって、これは3冊目の幕末維新期日本に材をとった作品です。長く日本に住み、流暢な日本語を操る氏にとっても、膨大な資料を丹念に読み込む作業は並大抵の苦労ではなかったと思います。しかも新選組に関しては、歴史的事実が欠落している部分も多いのですが、彼は歴史家トーマス・カーライルに倣い、大胆な空想力を働かせて潤色することで、見事に新選組の本質を抉り出したのです。
★大胆な歴史ノンフィクションの試み★
2004年に好評を博したNHKの大河ドラマ「新選組!」。この、新選組を従来よりぐんとモダンに、エンタテインメントの要素もたっぷり盛り込んで作られた、時代劇の魅力の虜になったひとりが、本書の訳者の正木恵美さんでした。その後、正木さんがむさぼるように読んだ新選組関係のさまざまな本の中で、運命的に出会ったのが、本書の原書”SHINSENGUMI: The Shogun’s Last Samurai Corps” だったというわけです。
本書の魅力は、一方で流血と死、人斬りという残虐行為に彩られた、人間の魂の暗黒部分を体現していた新選組が、他方で勇気や忠義という、もっとも高貴な精神に裏打ちされた部分も併せもっていた、その集団としての精神構造や出来事の本質を捉え、「最後の武士団」の全体像を著者なりに描き出そうと試みている点にあります。謙虚な著者は、「それが成功したかどうかは、読者の判断に委ねたい」としていますが、もちろん、訳者の正木さんに翻訳を決断させただけの大きな魅力が、本書には溢れています。
★著者★
ロミュラス・ヒルズボロウ(Romulus Hillsborough)
カリフォルニア生まれ。15年以上にわたり日本に住む。流暢な日本語を生かして、東京で日本の雑誌のスタッフライターを務めた他、日本紙の米国通信員としても活動。作家としては、本書の前に、幕末から明治維新期にかけての武士を描いた以下の二作があるRyoma: Life of Renaissance Samurai Samurai Sketches: From the Bloody Final Years of the Shogun
現在は、妻と息子とともにサンフランシスコ在住。
タイトル:新選組
著者:ロミュラス・ヒルズボロウ
訳者:正木恵美
ISBN:978-4-89449-059-8
出版社:バベルプレス
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